沢田研二さんの歌唱から見る…声と老化

 

1月某日、名古屋まで自家用車で出向き、沢田研二さんの初詣コンサートを見てきました。カミさんが「コンサート付き合って」の鶴の一声で、同伴した次第です。

 

沢田研二さんは、ソロ活動50年目になるそうで、何と、コンサートの前に、神社の神主さんが登場し、コロナ安全祈願のお祓いをしてから、演奏が始まる演出でした。「○○の儀」と言う段取りを、5回くらい行いましたから、正味20分くらい時間を割きました。

 

沢田研二さんのコンサートは、これで3回目です。

私がいつも感心させられるのは、若かった時の同じ音程で歌唱する事です。変なタメや独自にアレンジを加えること無く、

 

「当時のレコード音源」に近い感じで歌い上げる所です。

 

同年代の歌手の方(特に実力派と言われる大御所)の中には、もう何万回と歌ったであろうヒット曲を歌うのが面倒くさいのか、当時の声が出ないのかわかりませんが、全く違った感じで歌う方が多いのですが、沢田研二さんは、できるだけ当時のイメージを崩さない様に、丁寧に歌う所は、好感度アップです。

 

それでは、何故、歌手の方は昔のキーで歌う事が、だんだん難しくなっていくのでしょうか?

 

【声の老化】

声はその方の骨格、共鳴箱の役目をする口腔内の空間、声帯の動きなどで形成され、見た目の容姿と同じように、その人の印象に影響を与えます。加齢とともに、声質は落ち着いた感じになってきますが、老け顔と同じように、「老け声」の若さを保つうえで、重要な要素になってきます。

 

【声の変化】

発生をする時には、主に喉頭(こうとう)にある「声帯」の振動を使って音を出しています。この声帯は、ギターの「弦」のような役目をします。この弦が加齢によって、以下のような変化が出てきます。

 

 

① 声帯周囲の潤い感の低下

② 声帯筋の萎縮

③ 声帯粘膜層の弾性の低下

 

【解説】

加齢とともに、皮膚の潤い度は失われ、乾燥状態に傾きます。特に津液(体液)が損耗する陰虚体質の方は、その傾向が助長してきます。陰虚体質の方は、乾燥シイタケのようにひび割れたシワが増える、「裂紋舌」を呈します。

 

 

実は、この渇きは、舌だけでなく、のど・声帯にも影響を与えています。

シットリとした声帯が、カラカラに乾燥してきたら、潤い感は失われ、ハリが無くなりギターの弦の動きにも支障が出てくる事は、容易に想像できます。

加えて、加齢により、筋肉も痩せていきます。顔面の筋肉は、その変化に容易に気づきますが、喉の筋の萎縮は、目に見えないので、その変化に気付きにくいのです。声帯は、乾燥によるハリが失われる共に、弾力も失う事になるのです。

最終的に委縮した筋肉は、たるんできてゆるみが生じます。ギターの弦を巻き上げるツマミもほどけてくると、もはや、音を奏でる事も難しくなってきます。

 

こうした変化により、声質は低音寄りになり、進行すると抑揚のない、しわがれ声になってしまうのです。

 

特に、女性は更年期が始まり、女性ホルモンの分泌が減少すると、声帯の筋肉も浮腫んで肥厚し、厚みが増して音域が低下します。同様に、男性の場合は、声帯が廃用性萎縮をして硬くなり、力感の無い声の通りが悪くなっていきます。

 

【声の老化の始まり】

加齢による変化の一つですから、筋肉の衰えと密接な関係があります。特に、

●排便する時に、力む力が衰えた。

●同世代の方よりも、歩く速度が遅くなった

●日常動作で、無意識に「どっこらしょ」「いてて」などの言葉が、無意識に出てくる等を感じたら、声の老化も始まっていると思って間違いないでしょう。

 

【随伴症状】

最も注意すべきは、やはり「誤嚥性肺炎」でしょう。声帯は気管の入り口に存在しています。そして、物を飲み込む嚥下の動作は、「ウング」と飲み込む時に、口蓋が持ち上がり、鼻との連絡を閉鎖し、口内を陰圧にして、胃に流れる弁が反射的に開き、飲み込みが完了します。この一連の動作の時に、声帯に隙間があると胃への便が開く前に、気管の方に飲食物が流れてしまうのです。

肺に飲食物が入ってしまうと、何とか吐き出すために、むせたりします。ただ運悪く、肺の中で細菌類が繁殖してしまうと、炎症を引き起こす事になってしまいます。高齢者で、声質が変化してきた方は、特に注意が必要になってきます。

加えて、声の通りが悪くなると、自然と他人との会話も少なくなり、認知機能が衰えてきて、認知症のリスクも高める事につながります。

 

【声の老化のリスクを上げる誘因】

●コミュニケーション不足の人

加齢が進行すると、社会とのつながりが希薄になっていきます。声は、使わなければ、声帯筋はドンドン劣化していきます。出来るだけ会話を楽しむ社会生活が求められます。す。

 

●スマホの長時間使用で、猫背など姿勢が悪い人

通りの良い声を出すためには、声帯の通り道は、ストレートな方が出しやすいです。スマホの仕様などで、うつむき姿勢が保持されると、肺から出てくる空気の量が抑制され、声の響きに影響を与えます。澄んだ声を出すためには、腹筋を鍛えて、横隔膜が上下をするような、腹式呼吸を心がける必要があります。

 

●胃酸が込み上げてくる人

健康診断などで、胃の噴門部が緩んでいる…と、指摘された方は、「呑酸」が込み上げてきて、逆流性食道炎を誘発します。また、飲食の不摂生により、メタボ体質の人も要注意です。また、アルコールの飲み過ぎは、いわゆる「飲酒焼け」の喉になってしまい、シワがれ声を助長します。同様に、喫煙習慣も、声帯の筋肉の動きを悪化させます。

漢方では、身体の中に、ネバネバした物質をため込む、「痰湿」になると、胃内停水、痰濁、胃気上逆体質に傾き、胃酸が上がってくるようになります。

去痰・去湿の食養生、漢方の服用で、老け声も予防できるようになります。

 

いつまでも、イキイキした声を保ち、若々しく暮らしていきたいです。