口臭を言語化してみよう

 

口臭治療を専門にしていると、こんな相談を受ける時があります。

「私は絶対に口臭が出ています」

「相手の反応を見ればわかります」

「先生、治りますでしょうか?」

 

こうした問い合わせを受けた時に、私から、一つの質問を投げかけます。

 

「口臭を感じているのなら、その臭いを、言語化できますか?」

 

 

多くの方が、口ごもってしまい、自分の口臭を言語化出来ないでいます。

「口臭がある」と、主張しているのに、その臭いを言語化出来ないのです。

 

私の嗅覚による官能検査と、ガスクロマトグラフィー法による口臭測定をして、ニオイを同定してあげると、初めて患者さんは安堵し、やる気度マックスになってくれます。

 

そんな訳で、皆様にとって最も知りたいであろう、口臭の言語化の種類に関して、頻度の高い順に紹介しておきましょう。

 

① 温泉臭(硫黄臭)

口臭発生菌が増殖する時の代謝産物として、ニオイを作ります。主に、食品中の必須アミノ酸であるシステインから出てくる臭気です。主に硫化水素として認知されます

 

② 魚の臓物臭

上記と同様に、食品中の必須アミノ酸であるメチオニンから出てくる臭気です。主にメチルメルカプタンの臭気です。歯周病に罹患した時にも認知されます。

 

③ 河川のどぶ臭

腸内で異常発酵した臭気が、腸管壁を透過し血流に乗り、肺でガス交換されて出てくる臭気です。ジメチルサルファイドとして認知されます。

 

④ 便臭

同様に、腸内で発生したインドール・スカトールの臭気が、呼気に戻ってきた時の臭気です。官能検査で認知されます。

 

⑤ 蒸れた靴下臭、チーズ臭

加齢により口腔内で増加する「プレボテラ属の細菌」や、歯周病原因菌「ポルフィロモナス・ジンジバリス菌」によって産出される「イソ吉草酸」に由来する。やはり、官能検査で認知します。

 

⑥ 金魚鉢臭

腎臓疾患により、血流にアミン体が溶け出して、汗や呼気にニオイが戻ってくる臭気です。魚臭症として認知されます。

 

⑦ バナナ臭

糖尿病が進行した事により、血流にケトン体が溶け出して、アセトン臭として認知されます。

 

⑧ てんぷら油臭

無理なダイエットをすると、血流に脂肪酸が溶け出し、汗や呼気中に、油取り紙のような臭気が出てきます。

 

⑨ 鉄臭・鉄棒を触った時の手のひら臭

食品中の油分と鉄分が反応して「1‐オクテン3‐オン」と言う物質が口内で発生し、鉄棒を触った時の、手のひらで発生する臭気が、口腔内でも口臭として認知される

 

⑩ ニンニク臭

文字通り、ニンニクを食べた時に、良い香りのアリシンの臭気が、口内の菌の反応によって変質し、硫化アリルに変化して、不快な臭いになる。食材臭の代表格

 

⑪ 発酵した生ごみ臭

口内の食材を残したまま、歯磨きをしないで就寝すると、夜間、口臭発生菌が食物残差をエサとして増殖し、酸性物質を作り、翌朝、酸っぱいニオイが口臭として出てきます。

 

⑫ 焦げたニオイ

肺がんが進行すると、呼気中に膿のニオイが上がってきます。時として、焦げ臭い臭気になる事があります。

 

⑬ たくあん臭

乳がんが進行した方からも、ガン細胞が死滅した時に、たくあん臭が出てくる時があります。

 

⑭ 海苔の佃煮臭

前述した、メチルメルカプタンの臭気は、濃度が濃くなると、海苔の佃煮臭に変化してきます。歯周病が重度になった時に認知されます。

 

一口に口臭と言っても、発生由来は様々です。

もし口臭に真剣に向き合うのであれば、まずは「言語化」する所から始めていきましょう。

 

それを、口臭治療を標榜しているクリニックに進言して、その場で、発生由来を答えられない先生は、少し注意した方が良さそうです。