「口腔違和感症」口のネバツキによる不快感

前回に続き、口腔違和感症について、ご紹介しておきます。

前回は、「いつも、口の中が苦い」をご紹介しましたが、その次に多くの声が上げられている。「口の中が、粘つく」について、東洋医学と西洋医学の両面から考察してみましょう。

 

前回にならい、口の中が粘ついた事の無い方に、どんな状態なのかイメージして頂くために、口の中が粘ついている方が訴える違和感は、常に口の中に、野菜の「オクラ」を咬んだ時に出てくる、ヌルヌル感が、日中、ずっと続いている状態をイメージしてみて下さい。

 

会話の時や仕事中に、とても気になってしょうがないと言うお悩みが、解ってもらえると思います。

 

このヌルヌルは、唾液中の「ムチン」と言う成分で、ベースとなるタンパクに、アポムチンという無数の糖鎖が連結した糖たんぱく質です。砂糖もベトベトしていますね?あれも、基本的には、糖質の連鎖によるものです。

 

ムチンは、こうした粘性物質の総称で、身体にも存在しています。胃壁を覆う粘液として、強い酸性の胃液から胃壁を守っています。また、目や呼吸器・粘膜を伴う部位には、大なり小なりムチンを含む粘液で保護されている訳です。本来、ムチンを含んだ唾液は、身体にとって有益なのですが、生活習慣や体質によって、「唾液の量が増えてしまう」方が、急増しています。

 

この事によって、常に口の中が粘ついてしまうのです。それでは、唾液量が増加してしまう原因とは何なのでしょうか?

 

①    唾液の分泌は、飲食物の消化吸収を促進する作用があります。逆に考えると、唾液が妙に沢山分泌されると言うことは、体内の消化吸収能力が弱っている事を示唆しています。消化器官の能力不足をカバーするために、大量の唾液が分泌する事で、少しでも食べ物を消化しやすい状態にしている訳です。では、消化吸収能力が弱る要因は、「辛いものや刺激物の過剰摂取」「過度の暴飲暴食」「深夜の食事」などです。

 

①    口腔内に歯周病や口内炎で炎症が多発すると、自然と唾液の分泌量は増えます。唾液には、口の中を清潔に保とうとする抗菌物質や免疫活性物質が含まれているので、炎症を抱えると唾液量は増えてきます。

 

①     唾液は唾液腺から分泌されていますが、唾液の量をコントロールしているのは、交感神経と副交感神経と呼ばれる自律神経です。特に、「疲労」や「ストレス」で、交感神経が優位になれば、唾液量は減り、逆に副交感神経が優位になると、唾液の分泌は増加します。普段から緊張感のない、怠惰な生活をしていると、いつの間にか唾液量が増えて、口の中の粘つきを自覚します。

 

②     唾液過多症の中には、妊娠している場合や、生理不順でホルモンバランスが悪い方にも出てきます。

一方、東洋医学的に、口の粘つきを考えてみると、「痰」とか「湿」と言う病理産物が、身体の中に蓄積した時に、口の中がネバネバしてきます。こうした体質は、漢方では、胃腸に負担をかけた時に、身体の中から生み出されると解釈しています。

 

ちょうど、前述した西洋医学的な解釈の、消化機能の失調の①番に相当している所が興味深いです。

 

そして、こうした「痰」「湿」と言う概念は、蓄積してくる場所があります。それは、本来スベスベ、ツルツルしていなければならない所に取り付いてくるので、関節、内耳、口腔粘膜、生殖器に影響が波及してきます。この事から、おくちの中の粘つきに加えて、関節痛、慢性疲労、めまい、生殖器のムズ痒さなどが随伴して来ると、上記の体質に傾いている事のシグナルサインになります。