体質的に正常な舌とは?

普段の日常臨床において、口臭に悩む患者さんを拝見していますが、その中で、多くの問い合わせをいただくものの中に、

 

「一番正常な舌は、どのようなものなのですか?」と言う質問を受けます。

 

本人のイメージでは、舌に全く苔が付いていない状態が、ベストと考えているようです。

しかしながら、無苔の状態は、漢方的な解釈では、あまり好ましい状態ではない事が多いです。

 

 

 

 

実は、舌の上に、殆ど苔が認められない方の体質は、幾つかの種類があります。

●  身体の何処かに、微細な炎症を抱える事で、余分な内熱が溜まった体質の場合

●  水分や体液が消耗して、熱をクールダウンする働きが弱くなる体質の場合、などは、

 

総じて、舌は赤くなります。この赤味は、やがて、鼻や頬など赤ら顔として全体に波及してきます。

この2種類の熱の出方を、もう少し詳しくご説明すると、

 

1.ひとつ目は、熱そのものが強くなる場合です。これは、お風呂のボイラーの火力が、燃え盛っているイメージです。この舌は、赤い色がとても鮮やかで、時々、舌先端に赤い斑点が浮き出る事もあります。主に、胃炎や肝炎などの炎症や、感染症の発熱性疾患の場合もあります。また、アレルギー性皮膚炎でも、舌が紅くなります。

 

2.二つ目の原因は、熱を冷ます機能の低下です。これは、お風呂の湯の量が少なくなって、「空焚き」状態になったイメージです。主に体液による水分の不足に由来します。この舌は、舌苔が少なく、唾液が少なくなるので、舌が渇いてピカピカした突っ張った感じの鏡面舌になり、加えて、乾燥により舌上に裂紋による溝やシワが出てきます。一般的に糖尿病や脂質代謝異常でも、こうした舌になるので、生活習慣病との相関に気をつけた方が良いです。

特に日常生活の中で、赤い舌に加えて、目眩、ふらつき、ふるえ、呂律が回らないなどの症状が出始めたら、脳梗塞や脳出血を疑います。

 

赤い舌は、脳卒中などの危険な状態を知らせる、身体からのメッセージだと考えておくと良いでしょう。

 

以上の事から、体質的に正常な舌は、色は淡紅舌で、形は大きくもなく小さくもなく、口腔の中に程よく収 まった感じで、苔に関しても「薄白苔」が良いと考えられています。苔も白くて薄いものが少し付着しているものが自然なのですね。

 

イメージで言うと、小学校の低学年の舌が、体質的にノーマルに近いです。

 

健康な舌は、苔が付いていたとしても、そこから臭気が出る事はありません。一度、アカンベーをして、自分の健康な時の舌の状態を把握しておくと良いでしょう。