私が日常の臨床を行う中で、口臭予防や民間健康療法の取り組みとして、「1日2リットルは、水を飲むようにしています」と言う問い合わせを良く聞きます。これは本当に正しいのでしょうか?東洋医学的に考察してみましょう。
最近、医療系健康番組や雑誌の情報で、血液がサラサラになるから、沢山水を飲みましょうと言う話を聞きます。その答えは、身体にとって相対的な現象なので、「正しい」部分もあるが、同時に「正しくない」所もあります。
どういうことかと言うと、ヒトの生命活動において、一番必要なものは身体の70%を構成する水分である事は、疑いようのない事実です。
しかしながら「のども渇いてもいないのに、無理に水を飲むこと」は、身体は特に水を欲していないのに、無理して余分なものとして、「摂取」している状態に傾いていきます。本来は、普通に日常生活を送る中で、自然に失われる水分だけ取り込めば良いのですが、普通に朝昼晩の三食の食事をすれば、おおよそ、約1リットルは色々な食材に水分が含まれています。
実は、野菜の90%、肉類の70%は水分でできています。そうなると、残りは1リットルです。
毎食後の一服のお茶や果実類の摂取で、残りの約1リットル分の水分は補充されています。これに加えて、さらに無理して余分に水を2リットル飲んでしまえば、それは、身体にとって余剰なものとなり、身体が、「水浸し」状態になってしまいます。こうなると、水分を代謝する腎臓にも負担がかかり、「むくみ」や「冷え」の症状が出てきます。
水分の飲みすぎは西洋医学では、あまり詳しく検証されていませんが、漢方医学では、余剰な病理産物として、「水毒」と言う概念で捉えられています。代謝の低い方は、水毒をデトックスできないので「むくみ」が起こり、身体を湯船だとイメージした時に、湯面の量が多くなるので、血流のボイラーの機能だけでは、お風呂のお湯(身体)を温める事が出来ないので、やがて「冷え」を伴うようになります。
この事から、ジャブジャブ体質の、水毒・水滞証の方には、この健康法は適していないですが、逆にカラカラ体質の、陰虚証の方には、適合している事になります。
一つ注意しなければならない事として、小さなお子様やお年を召した方は、脱水による死亡事故なども多いので、水分摂取には、常に気をつけなければいけません。高齢者は特に保水力が衰えているので、脱水状態になりやすく、水分不足は意識不明につながってしまいます。こまめの水分補給は必須だと思います。
日常臨床において、「私はどれ位、水を飲めばいいのですか?」と問い合わせがあった時には、特に健康に問題のない方には、「身体が欲するままで大丈夫ですよ。」と、アドバイスをするようにしています。