私が東洋医学を学んで、一番好きな考え方の一つに…、
”人は自然の一部であり、その調和の中に存在するもの“と言う考え方があり、全人的医療を基本にしている所です。これを「整体観」と称しています。
例えば、私が専門にしている口臭治療においても、歯肉が赤く腫れて、歯周病を誘発して熱化している方からは、硫化水素(温泉臭)が出てきます。同様に、自然界においても、地熱が集まり温泉が湧き出て、噴火やガスが噴き出している所からは、ヒトの身体と同じように火山性の硫黄化ガスが出てきます。
ヒトの体の中で起きている営みと、自然界の現象には一体感と整合性があるのですね。
冷たい木枯らしが吹き始め、寒さが厳しい季節になると、空気が乾燥し、かぜを引きやすい季節になります。「かぜは万病のもと」と言われ、免疫システムが弱る事で、色々な病気の切っ掛けになるので、軽く見てはいけません。かぜになったら、その病邪が身体の中に深く侵入する前に、とにかく早めに治す事が大事です。
あまり知られてはいませんが、漢方におけるかぜには、タイプ別に4色の色があります。
かぜの原因は、文字通り、風邪(ふうじゃ)が体の中に入る事で、諸症状が出る病です。さらに、外から入り込む「外因」と、体質など体の中に原因がある「内因」の2つ分けられます。
外因には、季節変動により6種類の邪気「風・寒・暑・湿・燥・火」が存在します。その中で、「風」の特性は、すきま風のように、うなじや首筋から体に入り込みやすく、しかも、身体に現れる症状の移り変わりが早く流動的な特徴があります。
以前、葛根湯の所でも解説しましたが、風邪の引き始めから治っていく過程の中で、症状も日ごとに変化していきます。首筋やうなじなどの上半身から風邪は侵入し、やがて、口や鼻などの呼吸器に影響を及ぼし、そこで、寒気、発熱、のどの痛み、鼻水、せき、頭痛といった諸症状を引き起こします。風邪の諸症状にも個人差があり、鼻に強い症状が出る方もいれば、お腹を壊しやすい方もいます。その変化を東洋医学的には、以下のように解釈しています。
それは、風邪の特徴として、他の邪気と容易に結びつく特性があります。それが、風寒・風熱・風湿・風燥などなり、病邪が進行するにつれて、風邪の症状にも変化が出てくる訳です。風熱型は、鼻炎などの炎症が出やすくなりますし、風寒型は、冷えるので下痢傾向になりやすいのです。以前、葛根湯の所では、風邪の引き始めを中心に解説しましたが、今回は、もう少し進行した風邪症状を、「色分け」で解りやすいように解説して
●「寒邪」のかぜ(青いかぜ)
「青いかぜ」は、毛穴や皮毛がぞくっとする悪寒(おかん)や頭痛、節々の痛み、肩凝り、サラサラした粘り気の少ない透明な鼻水などが特徴です。かぜの初期症状で、身熱の自覚症状はまだ少なく、汗も殆どかきません。体が冷えているので、顔色も青白く、血色も悪いので、見た目の感じから、「青いかぜ」と分類しました。
青いかぜは、出来るだけ体を暖めて「寒邪」を身体から追い出す事が重要です。食養生では、白菜、大根、ネギを煮込んだ鍋料理は、体をポカポカに温めてくれます。さらに、発汗を促す生姜、紫蘇葉、ゴボウを加えると効果的です。加えて、体を暖める唐辛子やニンニクを加えても良いです。こうした食材は冬場の定番料理、豚汁、けんちん汁、チゲ鍋などが該当してきます。
●「熱邪」のかぜ(赤いかぜ)
「赤いかぜ」は、病邪が進行し高熱が続き、のどの炎症や嚥下痛、粘り気の強い鼻水や痰、口が渇くといった症状が現れます。見た目も赤ら顔になる事から、「赤いかぜ」と分類しました。
このタイプの風邪は、まず帰宅したら喉の奥の方までうがいをし、手洗いも励行する事を心がけます。また、意外に見過ごされがちですが、室内の空気を換気する事も重要で、風邪を長引かせないで済みます。加えて、身体を冷やした方が良いのですが、オデコに氷嚢を乗せるよりは、首の両脇にある頸動脈を冷やした方が、心地よいです。市販の冷却材型の貼るタイプが便利でしょう。また、食養生では銀杏の皮には、咳を鎮める鎮咳作用があるので、1日5個を目安に摂取すると良いでしょう。その他、消炎作用のある菊花茶、ハトムギ茶なども有効です。
●「湿邪のかぜ」 (黄色いかぜ)
「黄色いかぜ」は、かぜ症状が胃腸に波及した場合です。胃がムカムカしたり、もう少し進行すると嘔吐感、胃痛、下痢、食欲不振など、消化器系に症状が現れるのが鑑別点です。陰陽五行説の「五色」で、胃腸に相当する色は、「黄色」です。加えて、このタイプは、口腔内にも黄色い苔として現れる事が多いので、「黄色いかぜ」と分類しました。
予防法は、何といっても生ものや揚げ物、油っこい食材は、極力避けるように心がけます。主食である米は、おかゆにして食べると、胃に優しいです。また、かぜ菌を駆虫して、胃痛を和らげる山椒の実、解毒作用のあるニンニク、ショウガも摂取すると効果的です。
●「燥邪のかぜ」(白いかぜ)
「白いかぜ」は、どちらかと言うと、風邪が峠を越えて治癒に向かい始めた時です。特に呼吸器に症状が出た風邪です。このタイプは、コンコンする乾いた空咳ではなくて、むしろゼーゼーする強い咳き込みが特徴です。さらに症状が進むと、痰がからんで胸苦しさを感じてきます。普段から呼吸器系の弱い人に出てくる事が多いです。陰陽五行論の五色で、肺に相当する色は、「白色」です。吐き出した咳は、目に見えない事から、「白いかぜ」と分類しました。
外出する際はマスクを携帯し、肺を潤す事を心がけます。自宅では、加湿器などで住環境の保湿も必要になります。その際、タンクの中にアロマ効果のあるミントを入れると、蒸気が鼻粘膜に浸透しスッキリ感も期待できます。食養生では、梨、百合根、杏仁豆腐、大根の煮物など、肺を潤す食材がおススメです。