チョコレートと東・西洋医学の関係性

2月は、貰う側の男性にとっても、送る側の女性にとっても、重要な季節の「バレンタインデー」がやってきます。また、歯科医師の立場から見ると、2月のチョコレートの消費量と虫歯の発生について…、疫学的な調査の明確な報告が無く、あまり気にしないでも良さそうです。もちろん、3月以降、虫歯が原因で患者さんの来院数が増加した…などと言う感じも、臨床経験35年になりますが、実感はないですね。

 

しかしながら、有り難く貰っても、チョコレートのイメージとして、「甘すぎ」「太る」「ニキビが出る」「虫歯になる」などを気にして、多くを食さない方もいるのではないでしょうか?

 

今月は、西洋医学と東洋医学の両面から見た「チョコレート」の効能について考察してみましょう

 

チョコレートの主原料であるカカオ豆は、古代より不老長寿の万能薬として重用されてきました。この事は近年、多くの調査機関によってエビデンスが確立され始めています。 

 

 

 

 

 

その中で、特に注目なのは「カカオポリフェノール」です。これは、がんや動脈硬化を引き起こす「活性酸素」を抑制する物質で、ポリフェノール自体は、生薬や赤ワインにも多く含まれています。特にチョコレートには、このカカオポリフェノールが多く含まれています。一般的に、漢方薬も含めて、渋い味や苦い味の食材に多く含まれています。

 

特に、カカオポリフェノールには、血圧降下作用があり、ネット検索で調べると、150以上の論文が出ています。ここで、注意しなければいけないのが、カカオポリフェノールが含有されているのは、茶色いチョコだけで、ホワイトチョコには、カカオポリフェノールは含まれていません。

 

 

その中で、有用性を報告した事例として、ドイツの大学が行った研究で、高血圧の男女44名を2群に分け、一つに1日6gのブラックチョコレート(カカオ含有分70~90%)、残りは同量のホワイトチョコレートを、それぞれ、18週間食べてもらった結果、ホワイトチョコレート摂取群は、血圧が変化しなかったが、ブラックチョコレート摂取群は、血圧の有意な低下が認められました。血圧低下の幅は平均で最大血圧が約3㎜Hg、最小血圧が約2㎜Hgになった。その他、体重やコレステロール、血糖値には変化が認められませんでした。

 

減少傾向はそんなに顕著ではないと思うかもしれませんが、一般的に、平均値として上の血圧が2㎜Hg下がれば、脳卒中のリスクを約6%、虚血性心疾患を約5%程度下がると言われるので、軽視は出来ない重要な知見であると思います。1回摂取量の6gは、カロリー換算で20~30kcal程度なので、ダイエットを心配している方にも特に問題ないレベルです。

 

この血圧降下作用は、カカオの「エピカテキン」という物質に由来し、チョコレートを食べると、まず小腸でエピカテキンが吸収され、血液中に流れ込み、血管の内皮細胞に取り付いて、血管の働きを活性化します。これは、血管内壁の弾力性が増すことにつながり、結果的に血圧の上昇が抑えられると解釈されます。

 

この辺の所は、口臭が気になっている人の場合も同様で、暴飲暴食を切り返すと、腸管内でインドール・スカトールや硫化水素と言う臭気物質が発生し、腸管壁を透過して血流に乗って、口臭や体臭から出てしまうのですが、カカオポリフェノールの場合は、エピカテキンと言う身体にとって良い方に働く成分が、腸管から吸収されて全身の中をめぐる、「良い方の作用」が、身体で起きている事を示唆します。

以前のブログでもご案内したように、硫化水素性のガスは、人体にとって猛毒に作用し、濃度が濃ければ死に至ります。こうした人体にとって有害な物質が身体の中をめぐる訳ですから、口臭が強く発生している方は、もしかしたら短命の可能性があるので、注意が必要でしょう。やはり、医食同源…食べた物の成分によって、健康になったり、病気になったり、ニオイに変化したりする訳ですね。

 

気になる臭いの発生は、健康メッセージとなる身体からの危険シグナルサインかもしれません。

 

その他にも、チョコレートには、以下のような健康作用が報告されています。

 

● がん予防効果の可能性。試験管内に発がん性物質にカカオポリフェノールを加える実験では、細胞DNAの突然変異が抑制されること認められた。

● チョコレートの香り成分が、アロマ効果として、集中力や注意力、記憶力を上げることが、脳波や学習実験から認められている。

● 過緊張でストレス状態にあるラットに、カカオポリフェノールを与えると、抗ストレスホルモンにより、ストレスに対する適応力が上昇した。

 

以上、ここまでが、西洋医学的な解釈になりますが、今度は、チョコレートを東洋医学で解釈するとどうでしょうか?もう一つの側面から考察してみましょう。

チョコレートは、西洋で発祥した菓子類ですから、中国の古典には記載がありません。しかし、その甘味から察すると、身体中に「湿」と言う病理産物を生む出す性質があると考えられます。

この「湿」と言う概念は、むくみやすい方、下痢しやすい方などの体質を抱えた方は、症状を悪化させますので、過剰摂取は控えた方が良いと思います。

さらに、この「湿」は血流を阻害する作用もあるので、いわゆるドロドロ血状態の「お血」と呼ばれる血行不良体質の場合も、あまり多くを摂取しない方が良いでしょう。 

 

一般にチョコレートを食べ過ぎると、ニキビが生じやすい、という学説は、科学的には根拠がないと言われています。しかしながら、東洋医学的には甘い物の食べ過ぎで「湿」が蓄積すれば、皮膚に症状が出てくる事は、古来より指摘されています。身体は、何とか余剰な成分である「湿邪」を排出しようとして、皮膚に湿が浮き出てくるのです。特に食べ過ぎや胃もたれのある方が、甘い味のチョコレートを食べ過ぎると、ニキビとなって出やすいので注意が必要でしょう。

 

 

 

また、カカオ豆自体は「熱」の偏りがない中性食材ですが、前述した「湿」は、やがて「熱」に変化して「湿熱」に移行します。このカッカッした熱成分が、口腔内に集中して現れた時に、口臭の原因になったりする訳です。加えて、チョコレートには、カフェインも含有している事から、普段から暑がりで赤ら顔、お酒をよく飲むアンコ腹のような体質の方も、過剰摂取は控えた方が無難です。

 

【まとめ】

以上の事から、私がおススメするチョコ健康法は、砂糖成分が少なく、苦みが強いチョコレートと言う事になります。近年では、カカオ成分の有用性に着目し、パッケージに「カカオ分○○%」と明記してある商品も増えてきています。なるべく含有率が高いものが良いでしょう。

 

ただ、私もカカオ成分90%のチョコレートを食べた事があるのですが、チョコレートのイメージとは程遠い、甘みが殆ど無く、苦みの強い感じがしました。私は野菜の中でも、香草類などクセの強い味は大丈夫なので、90%チョコは普通に頂けましたが、最初の内は慣れが必要かもしれません。口臭治療の中でも、苦み渋みの強い顆粒状の漢方薬を、舌の上に乗せて、白湯を口に含んで、少しなじんでから服用すると、口臭抑制効果があります。もしかしたら、苦みの強いチョコにも、口臭に有効なのではないか?と、考えています。