ひな祭りと東洋医学

3月3日は、『ひな祭り』です。ひな祭りは、一般的には、「桃の節句」と言われています。実はこの節句には、1年間の節目を表し5つ存在しています。一月の人日(じんじつ)、三月の上巳(じょうし)、五月の端午(たんご)、七月の七夕(たなばた)、九月の重陽(ちょうよう)です。

 

また、節句は別名「節供」とも表現し、節句の日に合わせて、お供え物をする意味合いもあります。季節ごとの食材などをお供えして、植物から正気を得て邪気を祓い、年間を通じて健康を願う行事です。この事から、季節ごとの食材として、1月は七草、3月は桃、5月は菖蒲(しょうぶ)、7月は笹、9月は菊と、生薬的にも意味のある植物が用いられています。

 

ひな祭りは、中国から伝来した風習で、3月の巳の日に、水で身体を清める禊(みそぎ)をして、厄災を祓う行事だったようです。今年の巳の月は、3月は2日(金)、14日(水)、26日(月)になります。その後、日本の風土・風習により解釈が変わり、草木や藁で作った形代(かたしろ)と言う人形(ひとがた)を作り、自分の体に撫でて川に流し、厄災を祓う行事へ変わっていきました。最終的には、この人形を家の中で飾るようになり、今日のような、ひな祭りになって行きました。

 

ひな祭りで、お供え物としてひな人形にお供えするのが「菱餅」です。以前のブログで、陰陽五行には「五色」も存在しているとお伝えしました。

 

今一度、漢方的な解釈をしてみましょう。菱餅は、緑、白、桃色の3段あります。本来の菱餅は、解毒作用のあるヨモギ餅と、ひしの実が持つと言われる、子孫繁栄と長寿の力を宿した、白い餅を食べる習慣がりました。それが明治になって、山梔子(さんしし)が入った赤い餅を加えて三色になりました。それぞれの薬効は、

 

 

●赤色:山梔子(クチナシの実)に該当し、効能は、清熱瀉火・涼血解毒があり、解熱、止血、解毒、鎮静、降圧作用があります。

●白:菱の実に該当し、効能は滋養強壮、胃腸を健常にする働きがあり、解熱作用があります。

(右図の実の皮をむくと中からユリの根のような、白い実が出てきます)

 

●緑:艾葉(ヨモギの葉)に該当し、効能は、止血、止痛、美肌作用があり、妊娠中の安定した成長を促す安胎作用もあります。

 

それに加え、桃のイメージを表す「桃仁」は、ドロドロ血を改善する事から、全身の血行を良くして、女性においては、シミや目の下の赤黒いクマの改善に加え、美肌効果もある生薬です。桃は、その形も含めて、ふくよかな女性をイメージする事から、女性に対する効能が多く、生理痛や月経困難、生理不順、便秘の改善にも用います。童話の桃太郎も、桃の中から玉の様な赤ちゃんが生まれた事から、女性、妊娠、子宝と言う事を連想させますね。

 

さらに、この菱餅の色の順番ですが、一般的には上から、桃、白、緑の順番です。これには幾つかの説がありますが、あまり深く考えずに、以下のような感じでどうでしょうか?

 

草木や樹木(緑)の上に寒い冬で降り積もった雪(白)があり、春になって新芽が芽吹いた時に、雪の上に出てみたら、桃の花(桃色)が咲き乱れていたと言うイメージで良いのではないか?と、解釈しています。