「啓蟄」(けいちつ)と東洋医学

一年の暦で二十四節気とは、太陽の運行をベースにして1年間を24等分して、約15日毎に分けた季節の移り変わりの事です。諸説がありますが、中国の華北地方の気候が基本となっているようです。

 

その中で、毎年3月に「啓蟄」と言う節気が巡ってきます。

 

啓(けい)の意味は「開く」、「導く」です。また、蟄(ちつ)は「隠れる」や「冬眠する虫」を意味します。春になり土中や木から、ゾロゾロと虫が湧き出てくる様に、生命の勢いが感じられる季節です。実は、虫たち共に、人間の生命活動も、冬に溜め込んだ邪を含んだ病理産物や疲労物質、身体の冷えが、生命の息吹と共に身体の外に排出される事から、この時期は、色々な身体の変調が出てきやすい季節でもあります。

 

ちょうど、花粉症が出始めるのもこの時期で、草木に勢いが出てくると同時に、その影響を身体が受けてしまうのです。

また、この時期は、喘息やアトピー性皮膚炎も悪化するなど、アレルギー体質の人には、辛い季節になります。

これは、例えば、積雪した後、雪解けした道路をイメージしてみて下さい。シャーベット状の雪が完全に溶けて、雪が無くなった後の道路の表面は、意外に砂粒や砂利が散乱し、普段の道路よりも、むしろ汚れている感じがしますね。

 

 

或いは、春先の雪解け水が流れる河川は、画像でも解るように、透き通った綺麗な水ではなく、思いのほか泥水っぽい感じで、汚い感じです。

 

実は、身体の中も啓蟄の時期には、同じ現象が起きていて、普段、沈んで隠れていた「邪気」が、身体の表面に湧き出てきて、それが、様々な症状として、ジワジワ浮き出てきます。

 

冬場にどの様な生活習慣を送ってきたか?その回答が、春先に一気に表面化してくる事から、冬にどの様な食養生をしてきたかが、非常に重要になって来る訳です。

 

冬は身体を暖める温性食材を積極的に取り入れ、滋養強壮をはかり、充分な睡眠で体力を温存します。こうする事で、春先の急激な体調の変化に負けない免疫力がアップしてきます。そして、ここからが重要なのですが、春になったら、酸味の食べ物、苦みのある食材、肝臓強化のシジミや椎茸を積極的に摂取して、とにかく、便秘しないように心がけます。

そう言えば、春の七草の中にも、苦みのある山菜が含まれているのも、道理にかなっているのです。

 

春先は、子供たちもテンションが上がり、興奮状態に傾く事から、夜泣きや疳の虫になりやすいです。同様に、大人も、何となくせわしなく、普段穏やかな人でもキリキリしてせっかちになりやすいです。時として、目の奥がズキズキしたり、こめかみがキリキリ痛かったりします。その症状が進行すると、頭痛、咳、微熱、鼻血、目の痒み、鼻炎、瞼の痙攣、筋肉のひきつり、日中の眠気、夜の不眠が、症状として出てきます。

 

また、普段から、自律神経が上手く働かない方は、情緒不安定やうつ病になりやすいので、注意が必要です。特に、うつ病対策には、以前ブログで紹介した「自律訓練法」の呼吸法が有効です。加えて、朝の太陽を浴びながら、特にオデコ(眉間)にポカポカした太陽光が当たるようにすると、気持ちが落ち着き、自律神経が整ってきます。

 

もし、この時期に、道端に出てきた虫を見た時には、自分の身体の中にも体調を崩す予兆が隠れているかも?と、自身の健康状態の変化に、少し意識を払っておきたいものですね。