春は、前述した啓蟄と共に、「春一番」が吹きます。立春を過ぎると暦の上では、春を迎えています。前述したように、動植物の活動と共に、春先に溜め込んだ毒素をリセットして、新しい季節の始まりの前に、身体の外に追い出すための、デトックスの季節です。この排出が上手く行かないと、思わぬ体調の変化をする事になるので、啓蟄に続き、もう少し養生法について考察してみましょう。
春一番は、嵐の様な強い風が吹き荒れます。これは、冬の間に溜め込んだ、邪気を自然界が強によって流す事で、自然界や身体の中の不純物を洗い流してくれて、一旦リセットしてくれる、有り難い自然の摂理です。
ただ、この吹き荒れる風は、文字通り「風(ふう)」と言う概念に当てはまる事から、気持ちや精神活動を揺さぶられて、不安定な状態に陥ります。
春先に、変質者が町中に溢れてくるのも、この風によって、気持ちがシェイクされるからです。
この季節を、陰陽論(いんようろん)で考えると、冬場の「陰」の状態が弱まり、逆に、徐々に「陽」の部分が、強くなる時期と解釈できます。
漢方では、春は成長、発散の季節。植物には新芽が育ち、前述した啓蟄の時期を境として、春一番と共に、動物や虫は冬眠から目覚めます。そして、人体も活動も代謝が活発になる時期で、チョットした事で、変化が大きく出てくる季節なのです。
●陰陽五行説から春一番を考える
過去ブログで度々登場している、「陰陽五行説」から、春一番に起きる、身体の変化と養生法を解説してみましょう。
五行のベースとなる5つのエレメント、「木・火・土・金・水」のち、春先は、「木」に該当します。「木」の特性は、根から養分を吸い取り、常に上へ上へと伸びやかに成長する事から、誕生、成長、伸長する働きなどをイメージさせます。その逆に、ストレスや栄養障害などで、上から押さえつけられ、その勢いを阻害される動きに、とても弱く、伸びやかさを失うと、身体に症状が出てきます。この木の持つ特性を、春一番の強い風が、揺さぶるのです。
また、5つのエレメントに相当する、五行色体表に照らし合わせると、「木」に関係する五臓は「肝」である事が解ります。
実は、肝はストレスや過緊張の精神状態の影響をうけやすく、生活習慣や職場環境などで、気持ちが伸びやかに保てないと、肝の機能が低下して、情緒が不安定、イライラ、ため息、大事な事が決断できないようになります。この段階では、正式な病名が付く程では無いので、「あれ?最近、夫婦げんかが多いな?」くらいしか感じません。
やがて、この状態が長引くと、目、爪、筋、睡眠、口腔内違和感に影響が出てきます。ドライアイやドライマウス、口の苦み、目のかすみ、首筋や肩のこり、女性の場合は、生理不順や血塊などの、目で解る症状が多くなるようです。
●春一番の時期は「肝」をいたわって、過重に負担をかけない
五臓の中で「肝」を養生するケア法は、気の流れがスムーズに伸びやかさを保つ食養生が求められます。具体的には、
ストレスをためないようにしながら、気持ちの高揚に合わせて適度に活動しましょう。
また、寒い冬に隠し、ためたものを上手に発散させることも意識するのも◎ そのためには、早寝早起きを心がけて、朝陽をあびる、散歩などの軽い運動をする、ストレスをためずに発散することなどを意識してみましょう!
【春の養生】
春は、環境においてもさまざまな変化が起こる季節ですよね。それに伴い、心も体も揺れ動く季節なのではないでしょうか? この時期の漢方的養生法を五行色体表から見てみると、五味(臓器が要求する味)は、「酸」となります。
簡単にいえば、酸っぱいものを食べるとよいということ。お酢を使った料理や、酸味のある果物などを摂るように心がけてみましょう。ただし、食べ過ぎはもちろんのこと、食材選びは体質によって変わるため、適量を摂るよう心がけてくださいね。
また、漢方の治療の指針ともなる五行色体表には、五悪という病気を起こす原因も書かれています。春の場合は、「風」。
“春の風”はそよ風だけではなく、春一番のように強風がふくことも多いもの。気温が上がり、だんだんと服装も軽やかになる時期ではありますが、風にあたり過ぎないような服装を心がけましょう。春らしいストールや薄手のカーディガンなどを活用して、風から守るおしゃれを楽しんでくださいね。
春に無理はしないこと
春は、新生活など新しいスタートもあり動き出したくなる季節ですが、無理は禁物。寒暖差のあるこの時期は、慣らし運転のように、少しずつ活動量を高めてゆくのがよさそうです。肝を養う生活習慣も意識しながら、心も体ものびやかに過ごしていきましょう!