東洋医学で考える「衣替え」

6月になると、季節も「衣替え」です。陽気の良い日は、じっとしていても、ジワッと汗をかいてしまいます。これは、自律神経が正常に働いているので、自然な身体の変化なのですが、

実は、衣替えの季節には、それ程熱くないのに、何故か「寝汗」をかいてしまう方が出てきます。これを東洋医学では「盗汗」と表現し、特に「気虚」という体質で出てきます。寒暖の変化が激しい季節の変わり目によく出てくる身体の変調です。

 

「気」は、全身の生命活動の営みを、統合管理してくれる「監視所」みたいな所です。

 

気が正常に働いている時は、肛門、胃の噴門部、尿道、唇の締まり、毛穴などの入口や出口が、「キュッ」と引き締まっているので、漏れ出す事はありません。

 

しかしながら、この気の働きが衰えてくると、穴の締まりが悪くなり、尿漏れ、よだれ、寝汗が出てくるのです。

 

寝汗の症状を訴える人は、随伴症状として、「慢性疲労」・「食欲不振」も伴う事が多く、元気が足りていない状態にあります。

 

心配になり、医療機関で受診しても、特に異常はなく、「夏バテ」などと診断され、ビタミン剤が処方されたりします。現代医学的によれば、自律神経失調症の範疇に入り、季節の変わり目なので、身体がなじんでくれば、いつの間にか元に戻る事も多いです。

特に、寒暖の差が激しい5~6月は、特に、寝汗を訴える方が増えてきます。

 

東洋医学では、こうした「気虚体質」には、「補気」の施術をします。

 

拙書「病気の9割を寄せつけない たった一つの習慣」にも記述しましたが、この気虚体質は、東洋医学や漢方を解説した専門書の中で、一番最初に出てくる項目なので、最も基本的な、誰でもが陥りやすい体質です。

 

「自分が気虚体質かどうか?」簡単に出来るセルフチェック法が有ります。その鑑別点をご紹介しておきましょう。

 

1. 胃に飲食物が長く残り、消化が進んでいないと感じる。

2. 日中から眠気が有る。

3. 家に帰ると、すぐに横になりたがる。疲れが残りやすい。

4. 気分が落ち込んで、ため息が出たり、イライラしやすい。

5~6月ごろに起きる、これらの変調は、何を意味しているのでしょうか?

 

 

実は、体質も…季節の変わり目で「衣替え」をしているのです

 

この、寒暖の差が激しくなる季節に、その変化に適応すべく、身体の恒常性を維持する為に自律神経がフル稼働をしているのです。この時期に身体の衣替えが、上手く行かない時の体調を、世間一般では、『五月病』と呼んでいるのです。

 

●未消化になる理由は、

気のエネルギーが足りていないので、消化活動にまで栄養が行き渡らずに、胃腸の働きが停滞します。「気虚」→「脾虚」に傾きます。

 

●眠いのは

同様に、気虚になると、気から「血」も生み出す働きがありますから、「気虚」→「脾虚」→「血虚」に傾き、日中でも何となく、ボーッとしてしまうのです。

 

●疲れやすいのは

前述した一連の流れは、ドンドン進行すると、「気虚」→「脾虚」→「血虚」→「陽虚」にまで傾きます。こうなると、全身に栄養が及ばなくなり、しかも冷えも伴うので、疲れやすくなってしまうのです。

 

●イライラするのは

これらの段階を経て、慢性的に「気虚」の状態が継続すると、最終的には「肝」の気の流れが滞り、前述した「肝気鬱血」に体質が傾き、過緊張・不安感・不眠・イライラ・クヨクヨ思考・溜息をつくようになってしまいます。

 

拙書「病気の9割を寄せつけない たった一つの習慣」にも記述しましたが、これら全てを統合して、西洋医学では「自律神経失調症」と呼んでいるのだと思います。

 

それでは、こうした辛い症状を治すには、どの様にしたらよいのでしょうか?

それは、「気虚」→「脾虚」→「血虚」→「陽虚」この流れの逆を取り組めば良いのです。

「虚」の反対が、「補」です。

 

つまり、

「補陽」→「補血」→「補脾」→「補気」を考えれば良いのです。

 

補陽の食養生は、山椒、ニラ、海老、ネギ、生姜

補血の食養生は、キノコ類、黒砂糖、プルーン、クコの実、もち米、鮭、うなぎ

補脾・補気の食養生は、ヨモギ、玄米、そば、らっきょう、イワシ、さんま

などになります。バランスの良い食生活を心がけると、五月病も気になりません。