当院の治療スタイルのうち、大きなメインになる部分が、歯科的なお悩みを、漢方薬処方による体質改善で治していく点があります。
全体を見て…局所治療にあたる訳です。
さて、その漢方薬処方なのですが、「どうしても、味が独特で飲みにくい」と、訴える方がおります。今回は、上手く服用できない方へ、チョットしたコツと注意点をご紹介しておきましょう。
【漢方薬とオブラート・服用ゼリーについて】
① 真っ先に思い浮かぶのが、オブラートです。オブラートには、従来の丸型タイプに加え、最初から袋状になっているタイプもあります。このオブラートの起源は、キリスト教の礼拝やミサで用いる聖餅(せいへい)が起源です。オランダ語の「oblaat」又は、ドイツ語の「oblate」が、その語源になったと言われています。この聖餅は、丸くて薄いウェハースのようなもので、神父さんや司祭さんが手に取って、礼拝に来た方の舌の上に乗せてくれます。もしかしたら、この時に、神父さんは、さりげなーく「舌診」をしているのかもしれません。古来より、紫舌~黒舌の体質の方は、「身体に悪魔が宿っている」と判断していたようです。実は、こうした舌の持ち主は、ドロドロ血体質なので、短命である事が多く、その事が悪魔の仕業であると考えられていたのかもしれません。
オブラートは、でんぷん質でできていますので、本来は漢方薬に影響を与えません。
通常のオブラートの使い方は、漢方薬の顆粒をオブラートで包み、口の中の唾液で湿らせていると、徐々にふやけてきます。程よくヌメヌメしてきたら、破れない内にサッと飲み込めばツルンと服用できます。
子供の場合は、小児用ゼリー状オブラートとして「おくすり飲めたね」(龍角散)が商品化されており、特にピーチ味、いちご味、ぶどう味など、ラインナップも多彩です。もちろん、大人が用いてもOKです。
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ただし、一点だけ注意する所が有ります。実は、オブラートと相性の悪い生薬があります。
苦味健胃薬として、黄柏(オウバク)、黄連(オウレン)、当薬(トウヤク)、竜胆(リュウタン)や、
芳香健胃薬として、桂皮(ケイヒ)、生姜(ショウキョウ)、茴香(ウイキョウ)などです。
これらの生薬は、その生薬が本来持つ「苦味」や「香り」が、胃液の分泌や胃の蠕動運動を亢進し、胃の活動を高める効果があるので、オブラートに包んでしまうと薬効が遮断され、効果が減少してしまう可能性があります。
② 天然由来の蜂蜜やメープルシロップの甘味料や、ココアなどの飲料と混ぜるアイディアも良いと思います。
それからもう一歩進んで、少量のアイスクリーム、チョコクリーム、ピーナツクリームに合わせると、なお飲み易くなります。特に、アイスクリームはその冷感で、苦い味覚を鈍らせる効果もあります。特に、コーヒーやチョコ味のアイスとは相性が良く、かえって、漢方薬の苦みがプラスされ、濃厚な味になったりします。
また、小児に与える時には、さらに一工夫必要になります。
漢方薬と飲食物に混ぜて調合する際、当たり前の事ですが、薬を混ぜている場面を、絶対に子供に見られてはいけません。さらに、飲料に混ぜる場合は、エキス顆粒漢方薬を、一度お湯に溶かして混和する必要があります。おおよそ、30~50mlの量の熱めのお湯に溶かすのが良いでしょう。
ただ、国内最大手の漢方薬メーカーのエキス顆粒製剤は、何故か水に溶けにくい性質があるようです。ゆっくり慎重に溶かしてみて下さいませ。
さらに、アイスクリームのような半固形物のものは、直接混ぜても大丈夫です。その際、エキス顆粒の「ザラザラ感」を嫌う子供には、未開封の袋の上から、麺棒などですり潰して用いると良いでしょう。加えて、アイスクリームの中にも、クッキークリームやチョコミント味のように、元からざらつき感のあるものも販売されています。子供の好む味であれば、そちらを応用してもOKです。
その中で、私から特におススメなのが、やはり、ココア味に混ぜて飲用するのがベストの様な気がします。ココアが、何故漢方薬の苦味をマスキングするかと言うと、実は、ココアに含まれる「カカオバター」が、舌の上にある、味覚を感受する「味雷」の部分に存在する「親油性苦味受容体」と先に結合して、その他の苦味成分の結合をブロックする作用があります。
ただ、『良薬、口に苦し』の格言が有る様に、出来るだけオリジナルに近い味で、服用にチャレンジして頂けると有り難いです。以前のブログにも記載しましたが、『気味が合う』と言うように、体質にマッチしている漢方は、元から飲み易いはずです。殆どの方が、服用を始めて1週間程度で、味に慣れて飲めるようになります。