虫がヒトの身体に、ハリを刺すと言う事…を東洋医学的に考察する

毎年この季節に人間様の血を吸いにやってくる、憎たらしい「蚊」。実は、東洋医学的に解釈すると、生き物が、他の動物の皮膚にハリを刺入する…と言う事が、どういう事なのか?

 

実はそこには、本質的で不思議な意味が隠れています。

その辺を考察してみましょう。

 

実は、蚊が好む血液のタイプは、血が酸性に傾いて、老廃物をため込んだ血液を抱えている体質なんだそうです。赤血球が酸化されている事から、漢方体質では、「お血」が一番近いイメージです。「お血」の「お」は、やまいだれに「於」と書きます。

 

蚊は本当に悪者?なのでしょうか?

 

蚊は、人間様の美味しい血を吸って、お腹が血で真っ赤になるくらい満腹ですが、ヒトの体には、何かプラスの事はないでしょうか?

 

●蚊が教えてくれていること

マクロビオティック的なの東洋医学における「陰陽」の概念について考察してみましょう。

 

この世界は、神羅万象「陰」と「陽」の、ふたつのエネルギーで構成されています。その真ん中で、最もバランスのとれた状態を「中庸」(ちゅうよう)と言います。

 

「陰」は、弛緩し、膨張的でふくらむ方向、上昇傾向、分散化、遠心力のエネルギー

「陽」は、緊張し、収縮的で縮む方向、下降傾向、集中的、求心力のエネルギー

 

食べ物ひとつとっても、中心部が陽で、外側の皮の部分は陰の性格があります。

 

その他、自然界を見た場合、温度、味覚、重量、行動、力点方向、姿、音、感情、電波なども、この陰陽の概念で分類することが可能です。

 

この2つのエネルギーは、片方だけで存在する事が難しく、陰は陽をひきつけ、またその逆もある様に、まったく相反するものでありながら、増減をしながら、バランスをとっています。そして、「陰、極まりて陽と成す」と言うように、常に消長を繰り返し、バランスを取っています。

 

その中で、蚊に刺されやすい傾向にある方は、血液が酸化して老廃物がたまった状態になっている事が多いです。もしかしたら、蚊の吸血と言う行いの本質は、生物学的に汚れた血を吸い取る事で、血を浄化してくれているのではないでしょうか?

 

蚊に食われると、かゆくなって盛り上がり腫れてきます。先程の概念でいえば、膨張的に膨れてくるので「陰」の状態と言えます。しかしながら、刺されてすぐに治る人と、ずっと痒いまま残る方がいます。なぜ、ヒトの体は、このような反応の違いが出るのでしょう?

 

蚊に刺されるという反応は、蚊のだ液の中に含まれる毒素の成分により、痒い場所でアレルギー反応が起きています。そして、実は、この反応には、2種類のタイプがある事が解っています。

 

一つ目は蚊に刺されてすぐの「即時型アレルギー」といわれるタイプです。もう一つは、1~2日位、少し時間が経ってから引き起こされる「遅延型アレルギー」です。それぞれ、異なる機序で引き起こされています。

 

① 即時型アレルギーとは?

蚊の唾液には、血液を固まりにくくする成分が入っています。蚊も吸い出す時に、スルスル吸い込めた方が、素早く立ち去る事が出来るので、こうした成分を先に流し込んでおくのです。人体にとっては、こうした血液を凝固しにくい成分が侵入してくると、それを排除しようとする反応が起こります。

特に、皮膚の表面に存在するマスト細胞(肥満細胞)から、多くのヒスタミンを放出してきます。これが、かゆみの神経を刺激するので、あの特有な痒みが生じる訳です。

この事から、蚊に食われた初期症状を抑えるには、「抗ヒスタミン剤」を含んだ薬が効果的です。抗ヒスタミン剤は、マスト細胞から分泌されるヒスタミンをブロックしてくれる事で、腫れ発赤を抑制するのです。

 

② 遅延型アレルギーについて

遅発型アレルギーの痒みには、実は、白血球が関与しています。この白血球は、体内に入り込んだ異物を、何とか排除する作用を担っています。

蚊に食われて数時間経過すると、毛細血管に白血球が集まり、蚊の唾液を排除しようと働きます。そして、この時に周辺の毛細血管は拡張し、細胞の間に血液の成分が浸出して、腫れが出てきます。この時点の痒みは、神経が刺激された状態で感じる痒みです。

そして、この遅延型アレルギーの痒みは長引く事が多いです。おおよそ、1週間から2週間も残ることもあります。この為に、遅発性アレルギーは、むしろ、白血球の活動を抑制する「ステロイド成分」の薬の方が効果的です。

それでは、どの様に予防したらよいのでしょうか?ここで、重要になるのが、刺される側のヒトの体質が重要になってきます。

アレルギー体質のように、外部刺激に対して、必要以上に過敏に、強く反応してしまう子供がいます。その体質の変化を左右するのは、普段からの飲食物の食事の質に関係してきます。

 

食養生におけるマクロビオティックの概念で考えると、特に白砂糖を多く用いた菓子類、スナック菓子、甘みの強い清涼飲料水を多く摂取すると、身体は酸性(陰性)に傾き、免疫力や抵抗力が弱くなります。こうなると、刺されてからも長い間、腫れが残る事になってしまいます。特に夏場は、甘い物を控えるだけで、蚊に刺されにくくなると思います。賢い食養生で、暑い夏を乗り切りましょう。