虫のハリを使った東洋医学的な治療法

虫が身体に針を刺す事…と称して、蚊について論じてみましたが、

 

実は、東洋医学では、その事をより積極的に治療に役立てている鍼灸師の流派が存在しています。

この事を掘り下げて紹介してみましょう。

 

ミツバチの針が持つ毒を応用した、「蜂針療法」です。

 

「蜂針療法」とは、ミツバチがお尻の針に持っている、「毒嚢」に含まれる、0.02mg程の毒液を、人体のツボに刺入する施術の事です。この微量の毒液を、ツボを通じて身体の中に送り届ける事で、免疫力を活性化させ、痛みによる苦痛や化膿による炎症性病変を軽減する事を目的としています。

その歴史は古く、紀元前2000年前の古代エジプトやバビロニア時代に行われていたと言われています。

 

蜂針療法には、羽化してから20日以降の経過した「セイヨウミツバチ」を用います。

 

日本における蜂針療法の始まりは、大正9年頃です。私が鍼灸師の学校に通っていた時も、実際に蜂針療法を行っている先生が登壇して授業で紹介されました。この蜂針療法は、日本だけでなく、中国、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、エジプト、ロシア、イギリス、ドイツ、アメリカなど、多くの世界で施術が行われています。代替医療として意外と長い歴史を持っています。

 

ミツバチの針には、以下の成分が含有されています。

● アミン類:ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン

● ペプチド類:アパミン、MCD-ペプチド、アドラピン、メリチン

● 酵素類:フォスフォリパーゼA2、ヒアルロニダーゼ

● 糖類:グルコース、フルクトース

 

さらに、作用物質名と効果、効能としては、以下のものが考えられます。

● 痛み・かゆみ:アミン類、アセチルコリン

● 血管拡張:ヒスタミン、セロトニン

● 白血球遊離作用:ペプチド類

● 溶血作用:フォスフォリパーゼA2酵素

● 局所破壊:ヒアルロニダーゼ酵素

● 神経毒:アパミンペプチド

 

これは、「毒も持って…毒を制する」と言う格言が有る様に、微量な毒素を身体に刺入し、毒素そのものの薬理効果と、それに対する生体の免疫活性により、病気が自然治癒して行く事を目的としています。

 

特に、疼痛病変、化膿性病変、ポリープなどに効果があります。

 

ただし、ハチ毒にアレルギー反応を持つ方がおり、重篤なアナフィラキシーショックを起こす体質の方がいます。施術を受診する際は、担当する治療家の先生に充分な確認が必要となります。

 

そして、ここから先は、やや都市伝説のトンデモ科学系に話は移行しますが、実は、このミツバチが、現在、世界中から極端な減少傾向を示し、一部の地域では、絶滅の危機にあるそうなのです。

 

真偽のほどは定かではないですが、アインシュタイン博士は、

「ミツバチが地球上から姿を消した場合、人類はわずか4年間しか生存できなくなる。蜂蜜はなくなり、受粉はなく、植物も動物も人類もいなくなる――」と説いています。

(諸説では、ベルギーの詩人・随筆家のモーリス・メーテルリンクと言う説もあります)

 

このミツバチの失踪は、本当の事で、2006年頃から、欧米ではセイヨウミツバチが一夜にして大量に失踪する現象が起きています。これを「蜂群崩壊症候群(CCD)」と定義しています。また、2007年までに、北半球に生息するミツバチの4分の1が消えうせたという報告もある程です。

原因としては、農薬のネオニコチノイドが原因とのレポートもあり、ミツバチは微量でも方向感覚に影響を与えたり、精子の量が減少したりする事が解ってきました。

 

トンデモ科学好きの私ですが、この事によって、いきなり人類が絶滅と言う話には懐疑的です。その理由として、

① 例えば、トウモロコシは、種の保存のための受粉を、昆虫に頼らずに、風が花粉を運ぶ風媒で受粉をしています。また、ジャガイモや人参などは、地中に生育する塊茎(かいけい)を収穫する野菜です。こうした食材からも栄養の補給は出来るので、いきなり飢餓状態になる事は無いでしょう。

② その他、受粉をしてくれる昆虫は、ミツバチだけではなく、ハエ・蝶・ハチドリなども同じ役割を担っているので、ミツバチだけが減少しても、収穫量には影響を与えない事が予想されます。

③ そもそも、人類の多くが栄養源として摂取する米や麦は、受粉の必要がなく、炭水化物の補給に関しては、ミツバチの力を借りなくても、食料維持が可能な事などが上げられます。

 

一方で、衣服を作る綿花などは、ミツバチの受粉が重要な役割をしているので、衣料業界などは打撃を受けるかもしれませんが、人類は何とか持ちこたえると思います。