台風による気圧の変化と東洋医学について

日頃、口臭治療を通じて患者さんを拝見していると、台風のこの時期になって、

「決まって、頭痛がする」と、おっしゃる方がいます。

 

詳しく問診をすると、低気圧が近づくと、頭痛に加えて、頭重感、倦怠感、オデコのあたりが重い感じ、耳の中の圧が張った感じがする…とおっしゃいます。

 

毎年、付き合い方がわかってくると、台風が、伊豆半島を超えた位になると、「頭痛注意報」が発令されて、もうすぐ上陸して来る、台風の位置が解ると言う猛者がいます。

 

 

最終的に、台風の通過中は、頭の中がキンキンして、激しい頭痛が出てしまいます。

これは、もう、セクハラ、パワハラに続く、台風ハラスメントの「台ハラ」と言っても良いくらいです。ただし、相手が自然現象なので、どこにも訴える事が出来ません。

 

なぜ、こうした現象が起きるのでしょう?

 

実は、東洋医学的には、低気圧によってもたらされる、水分代謝と密接な関係があります。

本題に触れる前に、そもそも低気圧とは…どの様な状態なのでしょうか?

 

天候が悪い時、ゲリラ雷雨の時、そして、台風の時に気圧が下がります。

それでは、気圧とは何なのでしょう?

日常生活をしていると感知できませんが、私達の身体は、常に大気圧に押されています。プールに入った時の水圧は、何となく感じる事が出来ます。素潜りをした方は、何となくイメージできますが、鼻をつまんで、「ウンッ」と、耳抜きをしておかないと、深い所まで潜った時に、耳がキンキンしてきます。

 

或いは、飛行機を乗った時にも同様の現象を体験できます。離着陸の時に、加圧と減圧を機内に施すのですが、上手く対応できないと、耳がツンツン、ゴロゴロしてきます。

 

台風接近による低気圧頭痛とは…この、「大気圧バージョン」の事なのです。

 

普段、あまり意識する事は無いですが、実は、空気にも重さが存在しています。

常に、外圧によって、身体は押された状態にあるのです。しかしながら、どこか一カ所だけが押されていれば、ヒトの身体は、「アッ、ここが押されている!」と、認識できますが、全体が均一に押されていると、なかなかハッキリとは感知する事が出来ません。

 

高気圧の時は 外圧により強く押され、低気圧の時は、押される力が緩いのです。

 

何となく、イメージできましたか?

 

つまり、高気圧の環境下では、筋肉・骨格・血管・体液などが、圧迫されています。

その逆に低気圧の環境下では、身体全体が緩んで、圧が弱まることになります。

 

そして、身体の中で、気圧の影響を最も受けやすいのが、実は、「水回り」の器官なのです。

その理由は、骨や筋肉のように 固かったり密度の高いものは、圧によるたわみ量が少ないですが、逆に、水のような形がなく流動的な物のほうが、その周りの管も含めて、縮んだり、膨らんだりしやすいからです。

膨張するということは、体積が増えてしまうということを意味しています。

 

さて、それでは、何故、頭痛が出てくるのでしょう?低気圧が近づいてくると、圧が緩むので水分は膨張傾向に傾きます。ここからが重要ですが、人体を構成する成分は、70%は水分でできています。ところが、それを溜めておく身体の諸器官(血管、骨、筋肉、脳)は、それ程膨張できません。

こうなると、炭酸飲料のふたを開けずに、ガチャガチャと振った状態と同じになります。

 

カラダの中の「内圧」が、上昇してしまうのですね。

その事により、血管、骨、筋肉、脳内の水分が、中から外側に圧が働いて、神経組織などを圧迫する訳です。

 

これが、頭痛、倦怠感、モヤモヤ感の正体です。

 

でも、低気圧になっても、頭痛が起きない方もいます。殆どの方は、気圧が下がった…と、身体が認識すると、自律神経が働いて、膨張傾向に有る部分の水抜きが上手く働くので、大事には至りません。飛行機の中でも、全然、へっちゃらな方がいるのと同じです。

 

しかし、台風型頭痛を抱えている方は、水分代謝が上手く働かず、恐らく普段から、ジャブジャブ体質で、しかも、その水質がドロッとしている為、身体の中の水分量の上手く微調整ができないのです。

 

それでは、何か対処法は無いのでしょうか?

 

まずは、自律神経を上手く働かせてあげればよい事になります。自律神経は、体温調節やリラックスや過緊張とも関係しているので、これらを整えると、徐々に症状は緩和されていきます。

 

一般的には、夜寝る前に「足湯」をしたり、加えて、お風呂にリラックス効果のある、ラベンダー、ジャスミン、ローズのアロマオイルを用いても良いですし、柚湯も効果的です。

仕事中の過緊張時には、「合谷」「百会」のマッサージを取り入れたり、以前のブログで紹介した、「自律訓練法」に取り組んでも良いでしょう。

でも、もっとお手軽な方法として、ジャブジャブした水をさばく効能のある漢方薬の服用もおススメです。

「苓桂朮甘湯」「茵蔯五苓散」や、やや高血圧気味の方は、「釣藤散」などが良いでしょう。

 

その他、賢い養生法として、

余分な水分を過剰に摂取しない事、冷たい清涼飲料水は控える事、お刺身やお寿司などの生モノ、生野菜は控える事などを心がけると良いでしょう。

 

そして、これは私だけかもしれませんが、現在、2冊目の執筆活動をしていますが、私の場合は、台風が接近してくると、何故か意識がハッキリしてきて、良い文章が書けたり、新しい視点のアイディアが出てきたりします。

 

もしかしたら、私の場合は、むしろ、低気圧の接近に伴い、脳の血流が活性化されて、普段眠っている意識が覚醒しているのかもしれません。「台風一過」とはよく言ったもので、この脳内フィーバー状態は、台風通過後、1日程度は継続しています。台風が多い今の季節を利用して、一気に新しい本の概要を完成させたいと考えています。