とうとう、最新のデバイスを用いて、東洋医学における「脈診」の解明が始まった!

東洋医学において、体質を見定める指標として、重要になる診査法は、「舌診」と「脈診」です。舌診は、見るだけなので、同時に多人数で観察する事で、お師匠さんと弟子が、共通の認識で語り合う事が出来るので、極意の伝授は、比較的容易です。

 

一方、脈診に関しては、非常に繊細な指先の感覚が求められ、主観的な部分も多く、長年の鍛錬が必要になります。どうしても、「私だけが出来る…名人芸」になりがちで、習得には多くの時間を要します。

 

でも、東洋医学の2大診査法の一つである、「舌診」が、口腔領域にあるというのは、歯科医師としては、非常に有り難い贈り物だと思っています。仮に、足裏診断と言うのであれば、我々歯科医師は、なかなか簡単には手出しができないですが、どの診療科目よりも、日々、患者さんの口腔を観察している歯科医師だからこそ、もっと積極的に、舌診の情報発信をして行きたい所です。

 

さて、脈診に話を戻しましょう。私も口臭治療の為に、日々の臨床で、患者さんから発するシグナルサインを汲み取る為に、脈診を行うのですが、やればやる程、奥が深く一筋縄ではいきません。

 

古典から先人の教えを紐解いても、後世の人になかなか上手く伝承する方法が無かったのでしょう。脈のイメージを文章で残す人、人差し指に伝わる脈のバイブレーションを図解して残した人など、様々な方法による記述が残っています。

 

そんな何とも主観的で解りにくい「脈診」ですが、ナント、ウェアラブル端末が、脈と健康(長寿)の相関を解き明かし、徐々にではありますが、最新の健康管理デバイスが、東洋医学における脈診のエビデンスに対して、メスが入ろうとしています。

https://yhoo.it/2MRUCeN

 

これは、画期的な事だと思います。

 

まだ、単純な脈拍数などの検証でしかないですが、デバイスの進歩によって、脈診で言う所の、「滑脈」「弦脈」「洪脈」などの詳細についても解明されていくものと考えます。

 

その中で、健康管理デバイス「Fitbit」は、今までに、数千万人のユーザーから、「1500億時間」にも及ぶ心拍データを集めて、年齢・性別・国籍・体重・運動レベルなどに分けて、分析を加える事で、心拍数と健康との相関が解明されようとしています。

 

 

(以下、画像は、https://yhoo.it/2MRUCeNから引用させて頂きました)

 

まず、右図をご覧ください。安静時の心拍数(以下、RHRと略します)は、女性の方が心拍数は高く、男性の方が少ないです。また、どちらも50歳をピークに、年齢と共に、減少傾向に転じています。ただ全体的に女性の方が、脈拍数が多い傾向に有ります。これは、女性は男性に比べて身体が小さく、心臓の大きさも小さい事から、早く心拍をする必要があるからだと推察されます。

 

『ゾウの時間・ネズミの時間』の著者、本田達雄氏も指摘しているように、生物の個体は、心拍数の上限が、15億回である事から、心拍数の少ないゾウは長く生きられ、短いネズミは短命であると主張しています。

 

また、安静時心拍数(RHR)が80回の人は、RHRが50回以下の人と比べた時、循環器系の心疾患に罹患する確率が2倍になる事。さらに、RHRが90回以上になると、3倍に達する事も解ってきました。一般的に、RHRは「低いほどいい」と考えられています。この辺の部分は、従来からも指摘されており、今回のウェアラブル端末の疫学的な調査とも、ピッタリ符合します。

 

さらに、右図をご覧ください。健康診断などでおなじみのBMI指数(Body Mass Index)とRHRの相関に関しても報告されています。BMIが、男性25、女性20を境に、RHRは、上昇傾向を示しています。やはり、脂肪の蓄積は、心臓にも負担をかけている事が伺えます。

やはり、適度な運動は、健康長寿に相関関係があるのです。還暦間近のオヤジとしては、もう少しダイエットに取り組まなければなりませんね。

 

 

さらに右図をご覧ください。今度は、年齢別とRHRの効果についてもデータが出ています。運動に対する安静時心拍数は、年齢が若ければ若い程、減少傾向が早く現れる様です。

 

ある程度下がってからは、プラトーになってしまい、どこまでも下がる訳ではなさそうです。

 

今回、アップルウォッチ4世代目が発売されました。今度は、新機能として、心電図に関してもモニターできるようです。心拍数だけでなく、心電図のデータも取れる様になれば、さらに多くのデータが集まり、AIのディープラーニングによって、より多くの知見が集まるでしょう。

 

 

ただし、日本では、心電計を販売するには、コンタクトレンズ、人工心肺装置、人工呼吸器、人工骨、人工関節、歯科用インプラント材、X線撮影装置、超音波画像診断装置、等と同じように「高度管理医療機器等販売業」に許認可を受ける必要があります。

 

日本仕様のアップルウォッチ第4世代は、心電計の機能はスリープで市場に出てきました。

 

自家用車の自動運転技術などもそうですが、科学技術の方が先行してしまって、関係法規が追い付いていきません。何とかクリアしてもらって、日本でも心電計がデータとしてモニターできるようになって貰いたいですね。