疲れをいやす気持ちの良い入浴ですが、ある体質の人にとっては、逆効果な事もあります。今回は、10月10日が「せんとお」などで、東洋医学から見た風呂を考察してみましょう。
一般的に、入浴をするとヒトの身体の反応は、「呼吸」、「脈拍」、「体温」に変動が起きます。この変化が、過剰に働くと、「風呂疲れ」が出る方がいます。
平静時にヒトの生命活動は、おおよそこんな感じです。
体温は、約36℃
呼吸数は、1分間に18回→体温の半分ですね
脈拍数は、1分間に72回→体温の2倍に相当します
有酸素運動やスポーツをした後は、自律神経の働きによって、体温、呼吸、脈拍の全てが上昇します。この事は何となくイメージできますね。
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それでは、お風呂の場合は、どうでしょうか?
お風呂に入ると、体温と脈拍数は上昇します。ところが、呼吸数は減少して、緩徐になります。この体温、呼吸、脈拍バランスが崩れると、身体にとっては、
「アレっ?運動して高負荷した訳でないのに、どうして呼吸と脈だけ上昇しているの?」と、認識する事になります。
このアンバランス状態が、漢方の中では、「虚証」の体質の方にとっては、逆に体にこたえてしまう場合があります。特に、30分以上の長時間の入浴で、このバランスの狂いが、「風呂疲れ」として出てしまうのです。
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古来より、「頭寒足熱」と言われており、頭は冷やして、足は温めておいて方が、賢い養生法なのですよ。と言う教えがあります。ロウソクの火もお風呂の湯の温度分布も、熱は、上へ上へ行きたがる特性があります。その性質を逆方向に収めるのが、頭寒足熱です。
実は、脳は頭蓋骨の中で、「脳脊髄液」という液体のなかに浮かんでいます。
そして、その液体は、脳室という部屋の中にある脈絡叢という構造物で作られます。脳脊髄液は、一日に500ccも作られています。最終的に、この液体は、脳の表面を循環し頭頂部の静脈に吸収されます。
「頭」は、「水っぽい」器官なのですね。パソコンやスマホも、負荷をかけると熱を持ちます。中央演算処理をする集積回路は、必要以上に熱を抱えると、機械部品の寿命が短くなるのと同じで、水っぽい器官である脳も、必要以上に温めてはいけません。
清水の様に、冷えて静かな清流の様な感じが良いとされています。
また、心臓から一番離れた足先は、血流が行き渡る事が阻害され、どうしても冷えてしまいがちなので、足を外から温める事で、血流の循環を良くするのは理にかなっているのです。下肢静脈は、第二の心臓と言われるくらいですから、ここの環流が滞ると、足のむくみに出てきます。
この事から、寒い冬の季節に、足湯をする事は、体にとても良い養生法だと思います
ここで重要なのは、農作業や建築現場の様な、肉体労働の方は、筋肉に乳酸などの老廃物が溜まって…疲れているので、お風呂に長時間入って血流を良くすることで、疲れている部位に、酸素と栄養が運ばれる事で、疲労を洗い流してくれるので、入浴は疲労を軽減します。
所が、デスクワークの様な過緊張を求められる精神労働は、筋肉よりも脳の働きの方が疲れているので、血流を必要以上に良くしても疲労回復には、それ程、効果がある訳ではないのです。
お風呂で疲れを取る人は、どちらかと言うと、基礎体力が充実している「筋肉疲れ」の方で、ストレスを感じている「気疲れ」の方は、のぼせてしまう程入浴すると、かえって逆効果な時もあります。
日本漢方の解釈では、前者が「実」と称し、後者が「虚」と考えています。
虚証体質の方は、むしろ、足湯を中心に半身浴にとどめ、サッと入浴する方が、身体の負担が少ないです。
血流が良くなる利点 > 体力を損失する欠点
と言う関係性が保たれていれば、精神的にも落ち着く入浴は、とても心地良い物です。
最初の方で、『呼吸、体温、脈拍』の関係性が重要であるとお伝えしましたが、この中で、必要以上に血流だけが良くなりすぎると、ボイラーの燃焼がフル回転をして、湯船の中の湯の環流が、非常にせわしなくめぐる事になってしまいます。
体力がみなぎっている「実」の人は、問題なく受け止めますが、「虚」の人がガシャガシャとシェイクされると、非常に疲れてしまう訳です。
普段から、入浴後にひどく疲れてしまう方は、あまり長時間のお風呂は控えておいた方が良いでしょう。