ホッコリする作品と出会った。

私達夫婦は共働きなので、お互いの仕事が夜遅くまで残った時は、どうしても外食の機会が多くなります。自宅から車で10分程度の所に、私達が贔屓(ひいき)にしている洋風居酒屋があります。駐車場も完備しているので、完全下戸の私は、のんべぇのカミさんの運転手の役回りで、いつも車で出かけます。

 

オープン当初から通い出し、既に5年以上経過しています。お店は、とても繁盛していて活気があります。

 

このお店には、長男・長女・次女の三人のお子さんがいて、お店の屋号も子供さんの名前から引用しています。開店当初は、一番下の次女の子がまだ小さく、店主の奥さんが、オンブ紐を使って、むずかる子供を背中であやしながら、店をやり繰りしていました。非常に誠実なご夫婦なので、子供を育てる苦労を知っている私達夫婦も、自然と応援したくなるようなアットホームなお店です。

 

さて、そのオンブ紐であやしていたお子さんも、小学校低学年に成長しました。

 

お店の中には、チョットしたカウンター席があり、時々、子供達はそこでお絵かきや読書、学校の宿題をやるスペースがあります。最近、お店にお邪魔すると、そのテーブルの上に、何やらオブジェが飾ってある事に気付きました。

 

ふと目をやると、写真の様な作品が置いてありました。

「たこ焼き:200円」の値札が付いています。

何とも微笑ましく、丁寧に作り込んだ作品に目が行き、じっくりと観察してみました。スーパーで買ってきた時のプラスチック製の卵ケースに、紙で丸めた「たこ焼き」が置いてあります。ソースや青のり、紅ショウガの色味を着色して、美味しそうな雰囲気を醸し出しています。

 

この作品で…私が注目したのは、

 

たこ焼きの他に、たこ焼きを作る時に使うであろう、ひっくり返す時に使う「千枚通し」の様な道具や、食べる時に使う爪楊枝、お店の感じを出す為の100円玉硬貨まで作り込んでいる事です。

 

つまり、この作品を作った子供さんは、

 

ただ単に「たこ焼き」を作ったのではなく、「商売」として考えた際の、たこ焼きに付随する全ての「ビジネスモデル」を考えて、パッケージ化して再現しているのです。この着眼点と物を見る視点は、「ただ者では無い」と思わせる、観察眼がある事が解りました。

 

普通の子供さんだったら、メインのたこ焼きが出来上がれば、それに満足して、その他に意識が向かう事は少ないはずです。でも、この作品には、大人が気づかない子供が持つナチュラルな感性が反映されているので、私の目には、何とも微笑ましく映ったのです。

 

それから1週間を経過して、再び、お店を訪れた時には、既に、たこ焼きオブジェは無くなっていました。ちょくちょくお店に顔を出してくれる、マスコット的な存在のその子に、

 

「あの…たこ焼きは、もうやめちゃったの?」と聞いたら、

「次の作品を作ったの…」と言う答えが返ってきました。

 

「見せて、見せて」とお願いしたら、程なくして彼女は持ってきてくれました。ナント、その作品は、最初の作品よりも、さらにバージョンアップしていました。

 

その作品が、この写真です。

今度は、「焼肉の世界感」を作ったみたいです。どれどれと、今一度、良く観察すると、やはり彼女の観察眼は、間違っていなかった事が解りました。

 

今度は、お肉や長ネギに加えて、肉を挟んで焼くために使う、「トング」と、それを収納する為の「トング掛け」まで再現しているのです。肉や野菜を盛り付けるお盆は、ソーメンが入っている木箱の蓋を流用して、「高級感」も演出している所が心憎いです。

 

焼き肉プレートの網は、箱の上にビニールを貼って、線引きを使って丁寧に格子状に黒線を書いて質感を出しています。良く見えないですが、箱の中には、炭火焼肉の為の赤々と燃えた木炭まで作り込んでいます。

 

間違いない。

 

この子は、ビジネスの視点で物事を考えて作品を作っている…と、私はお見受けしました。

その事が良く解る一例として、食事を終えて出口から出ていくお客さんをお見送りするのですが、この次女のお子さんは、身体を九の字にして、深々とお辞儀をしています。時間にして30秒くらいでしょうか?お客さんが帰って、扉が閉まっても、まだお辞儀をしたままです。

 

店主である、親御さんの普段からの教育が、とても素晴らしい事が伺えます。

 

さて、その他のファミリーも紹介すると、長女のお姉さんは、少し恥ずかしがり屋で、お店にはなかなか顔を出しませんが、時々お店に出てくると、ニコッと笑って挨拶をしてくれます。

また、長男君は、今年中学生になりました。小さい時から、お店の片隅で欠かさず本を熟読していたので、スゴイ読書家さんです。

 

立派に、進学校に合格しました。

 

一番下の次女さんは、もう少し大きくなったら、当院の受付スタッフに招き入れたい位の感性を持っていると思います。

 

本人曰く…「図工の時間が大好き」と言っていました。

是非とも、このままの感性で、大人になってもらいたいです。