アルパカに会ってきた……その医療への可能性について

手前味噌になりますが、カミさんと所帯を持ち、苦労の末に長女と長男の子供も授かり、今年で結婚25周年になりました。

その事を記念して、夫婦で「銀婚式」の一泊旅行をしてきました。秋の紅葉が見たい…と言うカミさんの要望に応えて、水戸~那須までを車で散策してきました。

 

途中、旅行計画を立てるのですが、エリアおすすめ情報の中で、私としては、どうしても訪れておきたい場所がありました。

 

那須には、「アルパカ牧場」があるのをご存知でしょうか?

http://www.nasubigfarm.com/

 

あるメーカーさんが、イメージキャラクターにアルパカを使い、「ミラバケッソ」のCMで、一躍人気者になりました。草食動物なので、性格もとても穏やかで、「モフモフの毛」があるのが特徴です。

 

このアルパカさんは、愛嬌のある姿形をしていますが、

● ペットで飼うには大きすぎて

● 背骨が脆弱なので、馬やロバの様にヒトや荷物を乗せて運搬の役に立つこともできません。

● お乳が潤沢に出る訳でもないので、畜産として活用する事も難しいのです。

● 唯一、モフモフの毛が特徴なので、羊と同じように服飾の素材として活用されて、私達の生活の役に立っています。しかも、その希少性から、羊毛よりも高級品扱いされており、紳士用のセーターで、3~10万円以上の値札が付いています。

 

ところが…です。

 

実は、このアルパカさんは、近年、大注目されていて、医療への応用が始まっているのです。

(株)アーク・リソース 事業推進室(室長):宮﨑誠生先生のレポートから引用させてもらいました。

http://bit.ly/2ySQqHH

 

生き物は、身体の中に異物が侵入してくると、「抗原・抗体反応」と言う現象が起きて、免疫機構が働いて健康を保っています。その中で、ラクダ科の動物には、通常の「IgG抗体」とは異なる特殊な構造の抗体が存在しています。

 

IgG抗体とは、血液中に最も多く存在する抗体です。この抗体は、胎盤を通過できる性質があり、母親から受け継いだIgGは、生後1週間程度、生まれたばかりの新生児を外敵から守ってくれています。血中や組織中に広く分布し、感染症に対し最前線で生体防御を担っています。

 

その他に、生体防御の仲間として

IgM…細菌やウイルスに感染した時に、最初に作られる抗体。IgMが作られて、その後に、本格的にIgGが作られます。この事により、血中のIgMを調べれば、どんな感染症にかかっているかが、おおよそ見当が付きます。

IgA…人の腸管、気道などの粘膜や初乳に多く存在し、細菌やウイルス感染の予防に役立っている。

IgD…量的にも少なく、その役割は未だによくわかっていません。

IgE…最も少なく存在し、花粉症などのアレルギーに関与するなどが存在します。

 

今まで、研究室レベルでは、マウス抗体、ウサギ抗体などが作る、重鎖と軽鎖で構成される一般的な抗体の研究はなされてきましたが、今まで研究対象とならなかった新しい動物が作る抗体も、近年、研究の対象になってきています。

 

特に、アルパカが作る特殊な抗体は、『重鎖抗体』と呼ばれ、通常のIgG抗体の軽鎖とCH1ドメインが存在せず、重鎖のみで構成されている所が特徴です。

 

【アルパカ抗体は、以下の様な利点があります】

① 通常のIgG抗体と比べて、鎖の長さが長いという点です。

アルパカ抗体は、酵素に結合しやすく、中和抗体として機能する割合が、通常のIgG抗体に比べ高いと推測されます。つまり、反応がより早く始まる事を意味しています。

② 生産性の効率が良い。

分子量が低分子の抗体の為、大腸菌や酵母で容易に発現させる事が可能です。

③ 安定性が高い。

アルパカ抗体は、塩酸塩、尿素などの変性剤溶液中、高温、高圧の環境下で、変性状態下から天然の構造へ戻りやすい性質があります。特に、熱安定性の高さです。アルパカ抗体は、90℃の高温で熱処理した場合でも、室温に戻した時に熱処理前と同程度の抗原結合活性を示します。

④ タンパク質の抗体改変の容易さ。

アルパカ抗体は、シングルドメイン抗体であるため、他のタンパク質やペプチドと容易に融合する事で、様々な用途に適した抗体へ改良する事が可能です。

 

以上の様に、アルパカ抗体は、IgG抗体と比較して優れた特徴を有しており、魅力的なタンパク質(抗体)を作り出します。将来の応用としては、電気設備が行き届いていない発展途上国において、試薬の安定性を気にせずに使用可能な抗体試薬への応用なども考えられています。

また会いに来るからね。それまで、みんな元気でね!