「芋がら」と言う食材を知っていますか?

前述した銀婚式の旅行の行程で、紅葉を見る為に「袋田の滝」に立ち寄りました。その道中、参道の周辺には、お土産屋さんが軒を並べています。アユの塩焼きやお団子、刺身こんにゃくなどが陳列してあり、賑わいがあります。

その中で、気になる商品を見つけ出しました。

 

袋に入った「芋がら」と言う食品です。以下、お店のオバちゃんとの問答です。

私「アッ、芋がらだ!」

オバちゃん「御主人、芋がらをご存知なの?」

私「子供の頃、大好物でした。田舎から送ってきた「おすそ分け」の中に、芋がらが入っていて、お味噌汁などにして、毎日のように食べていました」

オバちゃん「嬉しいねぇ…是非、買って帰って」と言うやりとりの後、大蔵省であるカミさんに頼んで1袋買ってもらいました。

 

私は昭和34年生まれです。その時代は、ようやく戦後から脱却して、高度経済成長期に入り始めた頃です。食糧難…と言うほど、切実な社会情勢ではありませんでした。ただ、「1年に1回」、クリスマスの日に、ニワトリの足の丸焼きを食べる事が、最高に贅沢な感じがする…そんな時代でした。

 

さて、この芋がらですが、歴史をたどってみると、鎌倉時代からはじまり戦国時代の野戦食として重用されていたようです。見た目のとおり、乾燥した紐状の様相で、繊維質を多く含んでいるので強度も充分な事から、縄のように網んで携帯し、味噌で煮て干したものを、お湯で戻して戦場で飲食していたようです。

現代風に考えれば、インスタント味噌汁のような感じですね。

私の場合は、8~10歳の頃に好んで食べていましたから、実に、50年ぶりの再会です。旅先で、懐かしいあの味と再び巡り合えるとは思っていませんでした。

 

子供の頃に、「こんなに美味しい物はない」と思って食べていた「あの味」を、還暦間近のオヤジが食べてみて、当時と同じ感動が得られるのかどうか?ワクワクしながら、帰路に付きました。

 

この芋がらは、見た目は、「段ボール紙の切れ端」の様な感じですが、水で戻してアク取りをして、少し茹でれば徐々に膨らんできます。食感は、繊維質なのでシャキシャキして歯ごたえがあります。固めが好きな方は、長時間茹でない方が良いです。茹でれば茹でる程、膨らんできてボリュームが出てきます。

 

よく噛むと、ほんのり芋の香りが口の中に広がり、甘みも出てきます。

子供の頃の記憶が、瞬時に蘇ってきました。

「コレ・コレ、この味だよ。久しぶりだね…芋がら君」と言う感じです。

 

ただ、今回買った芋がらは、当時私が毎日のように食べていた芋がらと微妙に違う所もありました。私の記憶では、芋がらの色が写真の様な赤茶っぽい感じではなくて、もっと白っぽい感じだった気がします。

 

調べてみたら、芋がらにも種類がある事が解りました。

● 赤芋がら…八つ頭の赤芋がらは、加賀野菜の一つとして認定されています。

● 白芋がら…軟白芋がらは、アクによるえぐみの少ない赤茎の唐芋系の芋がらを、草丈の低いうちに新聞紙等で包んで太陽光を遮り、軟化栽培した純白の芋がらで、奈良の伝統野菜「大和野菜」として認定されています。何となく、白アスパラガスの栽培に近いイメージです。

● 緑芋がら…こちらは、左図の様な乾燥させる前の生の里芋の茎の事を指します。右図のように、とても細長いので、乾燥するまで天日干しをして完成させます。

総じて、生のズイキを乾燥した芋がらを製品化するには、意外に手間がかかるので、年々作り手が少なくなっています。最近は市場からも消えつつあるのが本当に残念です。

 

所で、この芋がら(ズイキ)には、

 

実は、アクが入っているので、下ごしらえの段階でアク抜きをしないと美味しく頂けません。何となく、食べた後に、口の中がチクチクしたり、喉がイガイガ・ピリピリした感じが出る時があります。

 

これは、シュウ酸カルシウムという「針状結晶」が含まれているので、口内に刺さるとピリピリ・イガイガした違和感の原因になるのです。

 

よく、里芋の皮をむく時も、何となく手が痒くなりますね。あの現象も、手に針状結晶が刺さり、痒みを感じてしまうのです。

 

食品中に、シュウ酸カルシウムが、約1500μg/g含まれると、口や喉に違和感が出てくるようです。過剰摂取で、胃痛や下痢症状が出ますし、長期間にわたり食べてしまうと、尿路結石の原因にもなるので注意が必要でしょう。

 

このシュウ酸カルシウムは、シュウ酸を多く含むホウレンソウ、タケノコ、紅茶、チョコレート、マスクメロン、パイナップル、キウイなどに多く含まれています。メロンを食べた時に、何となく喉の奥がヒリヒリするのも、シュウ酸の影響なのですね。

 

こうした食材のアク抜きですが、一晩、酢を入れた水にさらしておくと、シュウ酸が除去され、美味しく頂けるようになります。

 

一方、この芋がら君、東洋医学的に考えると、以下の様な効能が見込めます。

古来より芋がらは、「古血を洗う」と言われ、産後の女性に食べさせると、体力の回復が早いと伝承されていました。

芋がらには、カリウムやカルシウム、食物繊維が豊富で、お味噌汁や煮物にして食べれば、産後の弱った身体に必要とされる、カルシウムの摂取に役立ちます。また、女性に必須とされる鉄分も豊富に含まれています。

● カルシウム…骨や歯を形成する、神経の興奮を抑える、骨粗しょう症の予防

● カリウム…血圧の上昇を抑える、むくみを予防する、筋肉の働きを滋養する

● 鉄分…めまい、息切れ、貧血、髪の毛のパサ付き、慢性疲労、冷え性の予防

 

その他、東洋医学的には、ドロドロ血をサラサラ血にする、「駆お血」作用もあるので、目の下にクマが出やすい、生理に赤黒い血塊が混ざる、不妊症など、血の道症になりやすい女性の方は、普段から摂取するのが良い食材です。

 

後で、大手通販サイトで「芋がら」でキーワード検索をすると、まだ通販してくれるサイトが残っているので、ポイントが溜まったら、もう一度、取り寄せてみたいと考えています。