日本口臭学会、第10回、記念大会に参加して学会発表をしてきました。

 

去年は、長野県に位置する松本歯科大学で、におい刑事こと、臭気判定士の松林宏治さんとコラボして、「口臭のセカンドオピニオン」の学会発表をしてきました。

 

そして、今年は、ブログでも何回も登場している、大手日用品メーカの「花王」とコラボして、

 

『薬用ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ』(花王社製)の口臭抑制作用について

 

学会発表してきました。

 

また、学会の会場では、業者の出展ブースもあり、花王様にお声がけしたら、せっかくなので、私達も業者展示を出します。と言う事で、

 

業者のサンプル展示+その商材を使った学会発表

 

と言う流れになってしまいました。

 

実は、今年の学会から、学会の発表者と業者間の癒着や忖度を戒める為の、『発表者のCOI開示』が義務化されました。

 

医学における「利益相反」(conflict of interest:COI)とは、

● 科学的客観性の確保

● 患者または被験者の利益を保護すると言う研究者や研究機関の責任に、不当な影響を与え、重大なリスクを生じるような、利害の対立状況を指します。

 

このように書くと難しいですが、企業などの営利団体から資金提供によって実施された医学研究の結果の判断が、資金提供元に対して、有利または不利になる可能性がある場合に、本来は公正であるべき研究結果の判断に、何らかの影響を与えていないか?

その事を、中立な第三者から見て、懸念される状況を開示する必要性が生じてきました。

 

要するに、業者から一定額の研究費の授受、謝礼の受け取り、飲食の接待などを受けていないかどうかの確認を、学会発表の席上、オープンにする必要がある事を示しなさい…と言う事です。

 

今回、花王様から、学会発表に関して、研究費も謝礼などの金額の受け取ってはいないので、私の学会発表は、COIの概念には接触はしていません。

 

さて、既に学会発表を終えたので、発表の内容を演者が開示しても問題ないと思うので、花王様からの「忖度無し」で、ブログで解説してみましょう。

 

【学会の演題名】

『薬用ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ』(花王社製)の口臭抑制作用について

 

【発表の着眼点】

実は、口臭学会の中でも、「舌磨き」に関しては、実施した方が良いと言う考え方と、出来れば慎んだ方が良いと言う考え方に、二分しています。まだ、共通のガイドラインが統一されていません。

 

何故でしょうか?それは、2つの理由が考えられます。

① 舌苔をダメージを与えずに、選択的に除去する方法が確立されていない事

② 舌苔に存在する、固有の嫌気性菌を、殺菌する方法が確立されていない事

 

この、2点が解決できていないので、舌磨きに関しては、諸説が出ているようです。

それは、「舌苔に特化した」商材が、今まで市場に無かった事に起因しています。

 

所が、去年、舌苔の除去と殺菌を目的とした商品が新発売され、有り難い事に、大手日用品メーカの『花王』様から、お声がけを頂き、実際に臨床で使ってみました。

 

① 本体を押すと、泡状のハミガキ剤が、1回分排出されるので、舌上に乗せてクチュクチュします。もちろん、そのまま、歯磨きをしてもOKです。

 

② 電動舌ブラシ(エイコー社製)を用いて、2~3分間、舌上でバイブレーションさせて、奥から手前に向けて、ブラシを滑らせて舌清掃する。

 

② 電動舌ブラシ(エイコー社製)を用いて、2~3分間、舌上でバイブレーションさせて、奥から手前に向けて、ブラシを滑らせて舌清掃する。

 

注意:メーカ側は、本商品を用いた舌磨きの併用を推奨していません。

あくまでも、歯科医師の指導の下、口臭の改善を目的とした、

限定的な活用法である事を明記しておきます。

③ 舌苔由来の口臭症例の結果(データの開示は、患者さんからの了解を取り付けています)

洗浄剤の「イソデシルガラクトシド液」と、薬用成分の塩化セチルピリジニウムが、舌苔の菌を殺菌した事で、特に舌苔由来の口臭患者には、口臭抑制効果が高かったです。

 

【考察】

● 舌苔が原因の口臭の場合は、硫化水素の臭気が上昇してきます。

● 応用後、すぐに、臭気レベルは引き下がるのですが、次の診療の時には、舌苔に存在する口臭発生菌が増殖する事で、再び、臭いを作り始めます。

● しかしながら、その「戻り幅」が徐々に少なくなり、やがて、安定化して行きました。

● 初診からの減少傾向は、下図に、ビフォーアフターを示しておきます。

 

硫化水素が「579」から「16」にまで、減少しています。

硫化水素が500を超えると、ファミリーレストランで、横並びで肩が触れ合う位の距離感で、臭いが届くレベルです。

 

④ 歯周病由来の口臭症例の結果(データの開示は、患者さんからの了解を取り付けています)

歯周病由来の症例では、薬用成分の塩化セチルピリジニウムだけでは、消炎効果が少ないので、引き下がる効果は限定的です。6診位から、ようやく減少傾向が出てきて、測定値が安定して行きました。

 

【考察】

● 歯周病が原因の口臭の場合は、硫化水素と炎症性のメチルメルカプタンの臭気が上昇してきます。口臭のレベルで言えば、前述した、舌苔由来の口臭より、重症のケースです。

● 応用後、当初の減少傾向は緩徐です。ようやく、6診位の時期から切れ味が出てきました。

● 歯周病を併発したケースでは、本商材に加えて、通法による歯周病の治療も必要だと考えます。

● 初診からの減少傾向は、下図に、ビフォーアフターを示しておきます。

 

硫化水素が「454」から「25」まで、炎症性のメチルメルカプタンが「645」から「21」まで減少しています。

 

臨床的には、特に、舌苔由来の口臭には、効果がありそうです。適材適所、上手く使い分けていくと効果的だと考えています。

 

【おまけ】

いつも、お世話になっている、口臭測定器のオーラルクロマⅡを供給しているメーカの「NISSHAエフアイエス社」も、出展ブースを出していました。

 

営業担当のHさんには、いつも、無理なお願いばかりしているので、本当に有り難いです。こちらの会社からの供給が止まってしまうと、私としては、非常に困ってしまいます。末永いお付き合いをお願いできると有り難いです。