サプリメントから→薬に昇格した薬剤と消えた薬

 

一般的に栄養補助食品・サプリメントは、特別な審査を経た物でないと、効果・効能を謳う事は出来ません。

 

また、広告として表示する際も、薬機法で細かく規制がされており、

●改善効果の誇張した表現

●ビフォア・アフター

●タレントを広告塔にした恣意的な誘導

●お客様の声を掲載する

などは、広告表現できないようになっています。

ここに、薬剤とサプリメントの明確な「線引き」が存在し、両方を上手く活用する事で、健康の維持増進が図られます。

 

ところがです!

 

そんな、少し怪しさを感じさせるサプリメントですが、本当に薬理効果が確認され、めでたく薬剤に昇進したものがあるのです。今回は、有名なものをご紹介してみましょう。

(その他、オマケで、薬効が認められず、薬から除外されたものもご紹介します)

これは、青魚の中に入っているEPAやDHAなどの成分を生成した薬剤です。

①エバテールとロトリガ

 

EPAは、エイコサペンタエン酸

DHAは、ドコサヘキサエン酸の略です。通販番組などで、一度は耳にした事があると思います。

 

エバテールは、EPA製剤の単味で、

 

ロトリガは、EPAに加えて、DHAがプラスされた製剤で、パワーアップ版とも言えます。

 

EPAやDHAは、サプリメント市場では一般的なもので、検索すると各社から栄養補助食品として多く流通しています。この栄養素の効果が認められて、晴れて薬剤に昇格しました。

 

【薬理効果について】

●抗血小板凝集作用

血液は、アラキドン酸の代謝により、サラサラ血効果の作用機序により、血小板凝集作用の物質が産生されます。同様に、EPAやDHAは、アラキドン酸が代謝される酵素と同じように代謝が促される事から、血小板凝集作用のない物質を産生します。

●血管に対する抗炎症作用

EPAは血管や白血球・血小板の細胞膜の中で、炎症性サイトカインの産生を抑制して、血管内の炎症を抑制します。これは、メタボ予防には非常に重要で、血管の内壁がダメージを受ける事で、損傷を受けた部分は、繰り返し修復を受けます。すると、徐々に血管は硬くなり、内壁は肥厚してきます。この事により、動脈硬化を進行させ、血管が詰まりやすくなります。

●コレステロール、TG低下作用

EPAは、コレステロール合成を制御している、コレステロールの分解を促進する転写因子を活性化させるので、コレステロールの健康数値を低下する作用を示します。

 

この事は、体内におけるω-3不飽和脂肪酸の代謝を考える時、α-リノレン→EPA→DHAと言う一連の流れになる事から、本来であれば、EPAだけを摂取していれば充分なような気がします。

 

ところが、実は、身体の中で、EPAからDHAへの変換効率は、僅か0.5%程度と言う報告があります。この事により、EPA単独で摂取だけでは、充分にDHAの働きを補う事が難しい背景があります。

 

【特にDHAの認知機能に関する効果】

DHAをより積極的に摂取した方のグループの方が、認知機能の低下抑制が認められたと言う報告があります。一方で、EPAの単独摂取では、認知機能改善効が認められない事から、恐らく、有効成分が脳内へ移行する割合が、DHAの方が優れているのだと言う事が示唆されます。

 

その一方で、関節痛に効くとされる、軟骨成分の「グルコサミン」なども、サプリメント市場を賑わせていますが、その効果には、疑問の声を主張する考え方もあります。

https://www.min-iren.gr.jp/?p=28469

 

でも、いつ何時、科学的に検証が行われ、治験により有効性が認められ、薬剤に昇進するかもしれません。

 

【薬剤として認められていながら、消えてしまったもの】

これに対し、最初は薬剤として認可されたものの、有効性に疑問の声が出て、薬から除外されたものも有ります。

私の歯科領域にも大いに関係している部分なので、ご紹介しておきましょう。

 

【幻の白内障治療薬…パロチン】

1960年代、ひとつの学説が世に出た事で、歯科業界は、「よろめき立ちました」

 

唾液の分泌には、大きく3大唾液腺が存在し、耳下腺・顎下腺・舌下腺があります。

これらは、外分泌腺です。

 

所が、この唾液腺から、「パロチン」と言う内分泌腺が出ている…と言う学説を唱える日本人の学者が登場し、

「まさか」

「本当かな?」

「凄い発見だ!」と、学会は、一時期、騒然となりました。

 

特に、パロチンには、新陳代謝・組織修復作用・タンパク質不溶化抑制作用が認められる可能性がある事から、「若返りホルモン」として、持てはやされました。

パロチンは、主に耳下腺から出る唾液に含まれている「内分泌ホルモン」で、以下の様な効能があると言われています。主に、白内障や更年期障害などの治療薬です。

●皮膚の代謝を活性化して、シミや小じわを予防する

●新陳代謝が活発になることで、髪や肌のターンオーバーを鼓舞して発育を促す

●唾液と一緒に飲み込むと、胃粘膜の保護を補助する

●骨や歯の表面にカルシウムを沈着して健常にする…などです。

 

製薬会社は、牛の唾液腺をすり潰して、「パロチン」と言う内服薬を発売しました。

 

 

 

しかしながら、1968年に発売された後、充分な治験を経ず製品化された可能性もあり、現在では、その有効性に疑問が指摘され、保険薬剤からは消滅してしまいました。

 

実際に、白内障学会のホームページを見ても「内服薬は効きません」と、ハッキリ解説してあります。

http://www.jscr.net/ippan/page-012.html

 

よくよく考えると、外分泌腺から、内分泌ホルモンが分泌されると言う事自体、非常に眉唾なのですが、当時の風潮から考えると、もしかしたら…と言う「ノリ」で、イケイケで薬になってしまったフシが見受けられます。

 

正当科学とトンデモ科学の境界などは、ほんの僅かな違いなのかもしれません。

 

以前注目を浴びた、常温核融合・常温超電導・○○細胞なども、長い年月が過ぎて、未来の研究者が再検証をして、再びスポットライトを浴びる事だって、充分に考えられます。

 

薬には、プラシボ効果と言う、本来であれば薬理効果はないにもかかわらず、薬として効いてしまう、暗示にも似た作用があるので、これからも、注意が必要でしょう。

 

【そして…漢方薬も…】

実は、厚生労働省では、毎年、漢方薬を保険診療から除外しよう!と言う動きを見せています。

 

パロチンと同じように、有効性が殆ど認められないので、保険の財源の支出を抑えるために、厚労省の官僚の方は、バッサリ切り捨てようと考えているフシがあります。外回りの漢方の営業マンに、業界のウワサを聞いてみるのですが、どうやら、本当のようです。

 

もしかしたら、3~5年後に、保険の処方から、漢方薬が認められなく可能性があります。ただ、漢方薬のメーカーが無くなってしまう訳ではありません。むしろ、自費扱いであれば、堂々と処方できるのです。これからは、良く効く処方のできる先生と、そうでない先生との間で、淘汰が起きていくと思います。

 

動向を見守りたいと考えています。