ワインの酒石酸について

 

9月の連休を利用して、山梨県の甲府から長野の塩尻・松本あたりで、1泊旅行をカミさんとしてきました。

 

私は完全下戸ですが、カミさんは「のんべぇ」です。

若い時は、「私を酔い潰してやろうと近付いてきた男どもを、全員返り討ちしてやった!」と、豪語していました。

 

確かに、飲みっぷりは見事と言うしかありません。

主に、日本酒・ワイン・バーボンがお好みだそうです。

 

今回、カミさんのたっての希望で、山梨・長野のワイナリーを探訪してきました。

 

カミさんからしてみたら、運転手付きで、あっちこっちのワイナリーを訪問し、色々なワインを試飲して、お好みのものを買って帰れるので、こんなに美味しい企画はありません。

私は、苦労をかけているお礼の意味も兼ねて、「髪結いの亭主」になりきりました。

 

そして、普段からワインのウンチクを聞かされている私としては、ワインの豆知識だけはドンドン増えた状態になっています。

ワインを傾けて、色の深みを見たり、ガラスの内壁をワインが滑り落ちる様子を見て、グリセリンの感じを読み取ったり、香りを嗅いで、若いワインか・熟成されたものなのか見定めたり、チョットしたワインオタクです。

 

カッコだけは一人前です。

 

その中で、シャトー・メルシャン桔梗ヶ原ワイナリーに出向いて、工場内を見学してきました。

 

その中で、ガイドさんが、以下の物を見せてくれました。これは一体何でしょうか?

 

これは、『酒石酸』(しゅせきさん)と言う結晶体で、ワインの製造の過程で出来る沈殿物の結晶体です。一般的には、「オリ」と言われている物です。

今回は、この事について掘り下げてみましょう。

 

実は、酒石酸には、あまり知られていない不思議な特性があります。

 

これは、酒石酸の中に含まれる「ロッシェル塩」(Rochelle塩)として広く知られていきました。特に、戦時中は、非常に重要でした。

実は、ロッシェル塩の単結晶は、高い比誘電率を示す強誘電体である事が1921年に発見されました。当時は、特にイヤホンやマイクの「圧電素子」として、重用されました。

 

そればかりではありません。実は、第2次世界大戦中には、通信や潜水艦のソナーに、必要不可欠な軍需物質として、大量に用いる必要性が生じました。

 

その為に、日本の各地でワインの製造が奨励されました。

 

特に、国内有数のワイン産地であった、山梨県に存在する老舗ワイナリーの「サドヤ」は、ワイナリーの中に「今井研究所」が設立され、酒石酸の研究が盛んにおこなわれました。

 

米軍は、その情報を察知し、サドヤのワイナリーを空襲で爆撃した記録も残っています。

現在は、他の発信子・圧電素子にとって代わってしまったので、酒石酸の役割は終えています。

 

そもそも、結晶とは、不純物混ざる事の無く、そのものの分子構造が連続して積層する事で、物質化していきます。フラクタルな構造体で、ピュアなものです。

雪の結晶は、6角形で構成されますが、同じ形の物は二度と出来上がりません。 

 

私は、もしかしたら、この結晶と言う概念が、見えない物とのコンタクトに、一役買うのではないか?と、睨んでいます。

 

 

そして、実は、牛の胆石は、『牛黄』(ごおう)と言う生薬です。牛1000頭の中から、ようやく1頭だけに採取されるので、漢方薬の中でも、非常に高価な代物です。

金色の薬包紙に入った1包が、数万円なんて言う純度の高い高級品もあります。

胆石もまた胆汁が、胆嚢内で濃縮される際にコレステロールやビリルビン(胆汁色素)が混ざり合って、「結晶化」したものです。

 

その薬理作用は、血圧降下作用、解熱作用、鎮痛・鎮静作用、強心作用、鎮痙作用、抗炎症作用、抗血管内凝固作用などです。

一般的な適用症は、動悸による不安感の鎮静、暑気当たりに対する苦味清涼、意識覚醒です。

 

私も、海外旅行の時差ボケで、ポヨーンとした感じの時に、低級品を1包飲んでみましたが、たちどころに意識が覚醒して、意識がシャキーンとした事を経験しています。

 

やはり、「結晶化」する…と言う事は、何かの作用が高純度で濃縮されているのではないか?と、考えずにはいられません。

(今月のブログでは、もう一つ、結晶について論じています)