口臭治療で、何が一番重要か?…と問われたら、「ニオイの成分を見つけ出す」という点に尽きると思います。
臭い物質が分かれば→原因が特定され→治療方針が立案できるからです。
一般的な臭気計は、半導体センサーを使い「臭いの総和」を数値化します。本物の口臭でも、ミント系のガムのニオイも、まるごと測定してしまいます。これでは、その臭いが心地よいものなのか?不快感を伴うものか?を、判定する事はできません。
一方、ガスクロマトグラフィー法(以下、ガスクロ)と言う測定法もあります。これは、ガスの成分を一つ一つひも解いて、臭いを分別できる特性があり、「ニオイの正体」を見つけ出すことができます。
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一般的に、呼気中には数百種類のガス成分が含まれています。その中で、いわゆる口臭と言われるものは、硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドガスに集約されてきます。これは、日本口臭学会の治療ガイドラインにも記載されているので、現在の所、間違いない評価だと思います。
今回は、このガスクロについて掘り下げておきましょう。
ガスクロは、液体や気体の成分分析に用いられています。
下図に示すような方法で、成分を小分けして定量化していきます。
https://www.an.shimadzu.co.jp/gc/support/faq/fundamentals/gas_chromatography.htmより引用
色々な成分が混ざり合った試料をガスクロの中に注入すると、その化合物は、まず、試料気化室内で加熱されます。すると、ガス成分は徐々に温められ気化が始まります。
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次に「カラム」と言うセンサーに運ばれます。ガス成分は、カラムの中を進みますが、
その進む速度は化合物によって異なります。
この為に、ひとつひとつのガス成分は、カラムの中を進むにつれて選別されて行く事になります。カラムの出口に到達する頃には、それぞれの成分には時間差が生じ、化合物の分離が可能になります。つまり、一定の時間軸の中で、特定のニオイには、特定の場所が割り振られていている訳です。
最終的に、「検出器」がこの信号をキャッチし、下図に示すように、当医院のガスクロマトグラフィー法で測定すると、生波形が色々な場所に出てきます。横軸は成分が検出器に反応した到達時間、縦軸は信号強度(mV)を表します。
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何もガスの成分が検出されない部分は、基線(ベースライン)になります。それぞれのガス成分の変化は、信号強度のピークとして現れます。成分が検出された部分をピークといいます。
試料を装置にかけて、全てのピークが現れるまでの時間を、保持時間(リテンションタイム)といいます。当院のガスクロ測定器の場合は、4分間かかります。
この測定器の良い所は、ガスの成分を選別していくので、呼気中に「ニンニクやコーヒーのニオイが含まれていても」、それは、別のニオイとして振り分けていく事にあります。
当院の口臭測定の場合は、前日に焼き肉を食べて来院しても大丈夫です。一般的に食材の臭気は、生波形の後半部に、別のピークとして出てくるので、本来の口臭測定には影響を与えないのです。
最終的に測定結果は、下図に示すように、各成分量を電気信号に変換して、データ処理して数値化します。
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この測定結果では、
硫化水素「1367ppb」・メチルメルカプタン「1722ppb」ジメチルサルファイド「91ppb」でした。
口臭のレベルとしては、重症の部類に入ります。喫茶店で、テーブルをはさんだ対面の会話でも臭いが届くレベルです。
この検出された臭気物質によって、オーダーメイドで治療方針を考えて行きます。
この方の場合は、全ての臭気物質が検出されているので、除菌療法、体質改善向けの漢方薬処方、食生活・生活習慣の見直しなど、全てにおいて対応が必要でした。
現時点で、歯科領域における口臭測定は、このガスクロマトグラフィー法で測定する手法が、ベストだと考えています。