生薬の持つ副作用について

 

歯科領域に漢方薬の処方を取り入れて30年、多くの患者さんに処方してきました。一番働いたときは、薬の卸をしている漢方のプロパー(販売員)の方から聞いた情報では、

「この鶴見エリアで、当社から一番多くの漢方の仕入れをしているのは、先生です」

と、教えてくれました。ホントに狭いエリアなので、この事は何の自慢にもならないですが、内科領域なども含めて、開業医レベルで考えた時に、歯科医師である私が一番多く処方をしていると評価してくれたときは、正直少し嬉しかったです。

 

そんな漢方薬ですが、私が経験し中で、大きな副作用が起きたことはないのですが、

「のぼせが続く」

「軽いめまいがする」

「倦怠感が残る」

などの、副反応らしき情報が寄せられたことはあります。

 

今回は、自戒の念も込めて、生薬の持つ副作用に関して、今一度再確認しておきましょう。

 

西洋医学の薬の場合は、成分がはっきりしているので、副作用が起きた時に、割かし犯人を同定する事が容易です。しかしながら、漢方薬の場合は、数種類から、多いときは20種類位の生薬が調合されているので、どの生薬が、身体にとって過敏に作用したのか?見つけ出すことが難しいのです。

 

その中でも、今まで分かっている中で、全身との因果関係が、ほぼ解明されている生薬について、列記しておきましょう。

 

 

●甘草(カンゾウ):もっとも一般的で、最も注意しなければいけない生薬の筆頭

症状:偽アルドステロン症

成分:グルチルリチン酸

甘草は、リコリスの根の事で、読んで字のごとく、甘い味がします。効能は、抗炎症作用・鎮痛作用・解毒作用があり、漢方薬のうち、全処方の8割程度に用いられています。しかし、大量に長期間服用を続けると、「偽アルドステロン症」という症状が出る時があります。

 

副腎から分泌される「アルドステロン」は、体内に溜まったカリウムを身体の外に追い出す作用があります。この事から、塩分濃度とも密接に関係し、血圧を上昇させるホルモンなのです。甘草を摂取すると、オルドステロン症と似たような症状が起きてしまい、高血圧、浮腫み、低カリウム症状を一時的に誘発します。本物の「アルドステロン症」と似たような症状を呈するので、「偽アルデステロン症」と表現するようになりました。

 

甘草には、グリチルリチンが含まれており、どうやらこの成分が、引き起こしているらしいのです。ただ、いきなり高血圧になる訳ではなく、必ず予兆があります。この段階を汲み取ることが、死ぬほど重要です。例えば初期症状として、手足のしびれ感、こわばり感・無力感、倦怠感、口の渇き、食欲不振などが出てきます。

 

 

●麻黄(マオウ):覚せい剤の原料にもなる、心臓バクバク生薬

症状:心臓の加亢進、興奮作用

凶器:エフェドリン

以前、アメリカの男性が、ダイエット目的のサプリメントを摂取した後に、ジョギングを始めてしまい、不幸にして心臓発作によって死亡してしまう事故が起きています。このアプリの中には、エフェドリンが含有されていました。麻黄の西洋学名は、エフェドラです。中枢神経や自律神経(交感神経)系を興奮させます。さらに、生成をして高純度にすると、覚せい剤にもなるので注意が必要な成分です。

 

麻黄湯、麻杏甘石湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯などに配合されています。

 

聞いた話では、覚せい剤を使用すると、汗をかき、瞳孔は開き、心臓はバクバクします。

高速道路を200キロで走るくらい、イケイケ状態になります。

 

つまり、人体にとっては、新陳代謝を活発にして、脂肪燃焼効果を高め、身体の中を温める作用が出てくるのです。そして、気管支を拡張させて鎮咳したり、意識を高めて覚醒させて集中力を高めたりすることから、睡眠をしなくても平気になります。覚せい剤で逮捕された方を見ると、頬はゲッソリこけて、やせ細っている方がいますが、そうした方ほど、連用者という事になります。また、去年逮捕された女優さんは、そんなにやつれた感じはなかったので、重傷者(連用者)ではなかったのかもしれません。

 

ここで注意しなければならないのが、一般的な風邪薬などにも麻黄は配合されています。スポーツ選手が、知らないうち気軽に飲んでしまって、後で、ドーピングを指摘されてしまうケースも出てしまうので、注意が必要です。

 

 

●大黄(ダイオウ):便秘薬として気軽に連用

症状:薬物耐性と大腸メラノーシス

成分:センノシド

今月のブログでも紹介したように、便秘傾向の方に、長期間飲むことはお勧めしない生薬です

 

 

●山梔子(サンシシ):腸を硬くしてしまう生薬

症状:腸間膜静脈硬化症

成分:ゲニポシド

山梔子は、クチナシの果実を乾燥させたものです。抗炎症作用、精神鎮静作用が見込めます。

茵蔯蒿湯,温清飲,黄連解毒湯,加味逍遙散,荊芥連翹湯,柴胡清肝湯,清上防風湯,清肺湯,防風通聖散,竜胆瀉肝湯など、結構メジャー系の漢方薬に配合されています。

 

この「腸間膜静脈硬化症」という副作用は、大腸の腸管壁から腸間膜にかけて広がる静脈に、広い範囲でカルシウムが沈着してしまい、その事により血管に石灰化という病変が起きてしまい、硬化させてしまいます。すると、血管の疎通が阻害され、腸に血液が流れなくなってしまいます。特に、山梔子に含有する「ゲニポシド」が、関係していると解釈されています。

 

山梔子を飲み続けると、腹痛・下痢の症状を繰り返します。常にお腹が張った感じを伴うので、注意が必要です。健康診断の、便潜血の検査で、初めて症状が解る方もいます。

 

以上が、生薬が持つ副作用に関してですが、もう一つ、「柴胡」という、横綱級の副作用報告があるのですが、文章量が多くなってしまうので、別の機会に委ねたいと考えています。