口臭治療の長期経過観察症例について

 

14年間で、4000人(2020年現在)の患者さんを拝見してきた中で、私が本当に有り難いなぁ…と思う点は、

「私は、患者さんに恵まれている」という事です。

 

大きなトラブルを抱えたり、訴訟沙汰になったりした事もなく、お悩みを抱える方に対し、一助となる活動ができています。

 

そして、35年間の臨床で解ってきたことは、

治療に必要な改善点や、より良い医療を提供するための情報は、

 

「全ては患者さんが、教えてくれている」

 

と言う点です。

患者さんから寄せられる、チョットした質問内容、治療を進めるにあたり、分かりにくかった疑問点などに、

「次の患者さんの役に立つような、重要な情報が隠れているのです」

 

ただ、こうした情報は、日常臨床の中で、サラッと流れていくので、慎重に「聞き耳」を立てないと、すぐに忘れてしまいます。

 

「これは絶対に、必要な教えと学びだ!」と思ったときは、

 

スマホの音声録音で、キーワードとなるワンワードだけでも記録に残しておくと、後で後悔しないで済みます。

 

そんな中で、最近患者さんから寄せられた問い合わせの中で、ピンときた内容は、

「長期にわたって、リバウンドしないのですか?」という指摘を受けました。

 

よく考えれば、自費診療で大きなコストをかけて頂くので、患者さんにとっては、最も知りたい所のはずです。けれども、このブログでは、あまりこの辺の所はまとめた事が無かったので、不安を解消アする為にも、今回、論じてみました。

(ここで紹介しているデータは、患者さんから開示する事の了解を得たものを載せています)

 

 

【症例1:ある時を境に、リバウンドが少なくなったケース】

58歳男性、測定回数は、91回を数えます。2010年からのお付き合いです。

この長期間にわたって追跡した症例ですが、興味深い点が2点あります。

この方は、1カ月に1回、殆ど欠かさず通院して頂いたので、全体の変化を汲み取りやすい症例です。左から順に、右に行くにしたがって、時間軸は経過していきます。全体を見渡してみると、大きく2つの傾向が見て取れます。その中で、まず、前半部を見てみて下さい。

 

前半部(↓部)では、単発でリバウンドが起きています。しかも、何となく等間隔でリバウンドが起きているようにも見えます。そして、ある時を境に、後半になるに従って、大きくリバウンドをする事が少なくなりました。

 

これは、長期症例でないと分からなかった知見です。状態の良い時とリバウンドが起きている事象に、何かの傾向の違いは無いのでしょうか?

問診から聞き出すと、リバウンドが起きている時は、必ず、その前に「お酒の付き合い」をしている事が分かりました。

 

東洋医学では、胃腸に負担をかけると、ネバネバした「痰湿」と言う病理産物を、身体の中に抱え込みます。

 

実は、その変調は、真っ先に舌の苔に現れてきます。舌苔からは、「硫化水素」の臭いが出てきやすいので、指で掻き取れる程の、「おから」の様な舌苔が付いている時は、リバウンド傾向が出やすいのです。

 

ところが、データの後半部を見てください。リバウンド傾向の上昇率が、明らかに少なくなりました。この境目の時期に、患者さんには、以下の対策を提案してみました。

 

「飲み会をした次の日の朝は、必ず舌磨きの回数を少し増やしてみましょう」

「可能な限り、お酒の量を減らすように心がけ、つまみは、軽めの物に切り替えましょう」

 

すると、飲み会の後でも、リバウンド傾向が少なくなったのです。口臭治療を行う先生の中には、舌磨きを推奨しない考え方も一部に存在しています。ただ、適切な手技と、舌にダメージを与えにくい道具を活用すれば、このデータのようにリバウンドを防ぐ事は出来るのです。

 

 

【症例2:単発で、リバウンドを繰り返すケース】

60歳女性、測定回数は、35回を数えます。2015年からのお付き合いです。

毎月通院して追跡することは難しかったですが、5年間で35回の履歴を追っていきましたら、ザックリと、年間、7回は経過観察している勘定です。

 

赤い↓部で、リバウンドをしています。この症例も、何となく等間隔で上昇傾向をしているので、生活習慣や季節変動など、何らかの因果関係が隠れていることが伺えます。

 

確かにリバウンドは起こりえます。

 

ただ、その「戻り幅」は、徐々に小さくなっていきます。これは、口腔内の菌バランスが整ってきたことを示しています。当院では、除菌療法に加え、善玉菌補充療法を取り入れる事で、悪玉菌を退治して、善玉菌を増やすようにしています。

 

こうする事で、リバウンドする時の重症度を少なくさせているのです。

 

 

【症例3:ゆるいリバウンドをするケース】

55歳女性、測定回数は、19回を数えます。2012年からのお付き合いです。

この方のリバウンドは、上昇傾向が少ないです。しかも、前2例と比較して、単発でスパッとリバウンドするのではなくて、緩いカーブを描きながら、薄くリバウンドしています。ただ、リバウンドはしているものの、ヒト嗅覚で解り始める認知閾値を超えるほどには症状していないので、臨床的には問題のないケースです。

 

これは、14年間で4000人の方を拝見してきた中で、感じる点ですが。単発で、ポンとリバウンドする方は、口内の悪玉菌の活動が活発化した時に発生し、この症例のように、緩く持続的にリバウンドするケースは、体質由来の場合が多い様です。この方には、改めて、別の新しい簡保薬を処方しなおしたところ、減少傾向に転じ、安定化に向かいました。

 

 

【症例4:バウンドをしないで安定化するケース】

54歳女性、測定回数は、49回を数えます。2018年からのお付き合いです。

もちろん、治療がうまく進み、全くリバウンドをしないケースもあります。

 

この症例は、初診の時は高値を示していましたが、治療が本当にうまく進んだので、その後は、全くリバウンドが起きていません。

 

この方は、粘膜由来の口臭でした。意外と思うかもしれませんが、実は、口臭は歯の周りだけではなく、頬粘膜、口外粘膜、歯肉粘膜、舌下部、口唇粘膜などからも発生しています。実は、粘膜磨きに特化した専用の洗浄クリームも開発されているので、普段の口腔ケアで、このクリームを使用することを指示しました。

この方は、一部義歯も使用していたので、義歯の洗浄も重要です。

 

一旦コツが解ってしまえば、高価な洗口剤を購入しなくても、自力で口臭はコントロールできる事が分かる症例です。

 

口臭のリバウンドの仕方には、さまざまなタイプが存在します。確かにリバウンドは起こりえるのですが、過去に患者さんから教えて頂いた経験で、必ず対処法は見つかるはずです。それが、何に由来しているのかを考え、局所的な原因なのか、体質由来なのか、一番良い方針を提案していきたいと考えています。