患者さんから指摘されて、はじめて気づいた…私のクセ

 

在宅型の口臭対策プログラムの商材を通信販売で展開して3か月、患者さんから、思いもよらない指摘を受けました。

まずは、動画配信中からキャプチャした、以下の画像を見て下さい。患者さんから届いた臭気袋の封筒を、ハサミを持って開封しているシーンです。

 

お分りでしょうか?

患者さんからのメール文の指摘には、以下のような文言がありました。

「先生、ハサミを持っている時、舌が出ていて、図工の時間の子供のようで、何か可愛いですね」と、指摘を受けました。

 

これは、自分では全く意識していなかったので、「ホンマかいな?」と思って、改めて動画を見直すと、成程、8割位の確率で、私はペロッと本当に「舌を出していました」

しかも、ハサミを持って、封筒を切っている時に限って、この行為をしているのです。

 

実は、この行為には、深い意味がありそうなので、考察してみましょう。

 

この動作は、言語と運動スキルによって形成された反射に由来する動作のようです。

主に、5~9歳児の子供に見受けられることが多く、図工の時間で何かの工作をしている時などに、無意識に舌が出ていることが多いです。手を動かして顔の表情を変えてジェスチャーを交えながら話すのと似たような仕組みです。子供は手や顔のジェスチャーの代わりに舌を出すのです。

 

これと同じ事が、大人でも出てしまう時があります。例えば、何かのプレゼンテーションで登壇し、緊張感を持ちながら、人前でしゃべる時があるでしょう。この時も、私たち大人は、少し大袈裟に手でアクションをしたり、豊かな表情を作ったりして、何とか自分の主張を伝えようとします。

 

先日の大統領選を見ても、手をオーバーに使ってジェスチャーした候補と、落ち着いてゆっくり喋っていた候補がいました。オーバーアクションは、緊張感を隠すための代償動作なのですね。

 

その後の研究で、子供に単純な動作の軽作業をさせたグループと、複雑な難しい作業をさせたグループで、子供が行う動作の観察をして比較してみた所、なんと、軽作業のグループの方に、舌出し動作が多く観察されたそうです。紙とハサミを持っているので、手を使った身振りをする事が出来ない状況です。その為に、舌を出すことで脳内の興奮を制御しているのです。

 

これは、以前ご紹介した「ホムンクルス人形」でも説明が付きそうです。

 

この人形の意味する所は、人の脳は、感覚的な知覚と、筋肉を細かく動かす運動に関して、その領域の重要度を、大きさに書き換えて表したものです。

ご覧のように、手・指と、口腔・舌の部分が大きく表現されています。

つまり、「指を細かく動かそう!」と、脳が命令を出した時に、その興奮が高まってくると、舌も、その刺激に引きつられて、動き始めてしまっているのです。

 

ただ、より複雑な運動になると、指と舌の制御は切り離され、それぞれ、独立した運動に切り替わっていきます。そう言えば、私も患者さんの歯冠修復をして、歯を削っている時などの複雑な作業の時は、舌を出して施術をしていません。ハサミで紙を切るなどの単純作業の時に舌を出しているようです。(オマエの思考回路は、子供と同じかよ…という声が聞こえてきそうですが、自分でも無意識の行為なので、どうしようもないです)

 

そして、もっと深堀りすれば、この舌を出す行為は、舌先が、右側に傾いて出ることが多いです。これは、左脳が優位に働いた時に出る動作であることを意味しています。左脳半球には、言語の理解や表現力、コミュニケーションを受け持つ「言語野」(言語中枢)が存在するからです。この事から、指先を単純に動かし、楽しく会話をしながら、他人とも交流を図っている…まさに、図工の時間は、ピッタリのシチュエーションなのです。

 

そう言えば、不二家のペコちゃんも、ペロッと、右側に舌を出していますね。

 

臨床を始めて30年以上、まだまだ、自分でも気付いていない「私」が存在しているようです。