舌苔由来の口臭と口蓋皺壁について

 

口臭治療を専門にしていて、舌苔由来の口臭を相談してくる方がいます。

実は、口内の構造で、舌苔を付きにくくする働きがあり、舌苔口臭を抱えている方は、この部分がうまく機能していないケースがあるので、今回は、口蓋皺壁(こうがいすうへき)の事について触れておきましょう。

 

【口蓋皺壁とは】

これは、まず舌先を上顎に接触させてみて下さい。そのまま滑らせながら前歯の裏側の方へ舌先をずらして行きます。すると、なんだかザラザラした凸凹が、上顎の粘膜に触れると思います。

 

これが、口蓋皺壁です。

 

犬などの動物は、この部分がさらに発達しており、喉の奥の方まで凸凹しています。犬が大きなあくびをした時に、何となくチラッと見えた事があるのではないでしょうか?

 

人間は、上顎の奥の方に広い空洞が出来てしまった影響で、退化してしまい、前の方に残っているだけです。

 

実は、この口蓋皺壁には、ヒトが咀嚼を通じた運動の中で、重要な働きが3つほどあります。

 

 

1.しゃもじ効果(エンボス作用)

新しい炊飯ジャーを購入すると、白い樹脂製のイボイボの突起が付いた、おしゃもじが付属されています。昔の木製のものに比べると、表面にご飯粒が付きにくくなっています。

 

これは、エンボス加工と言って、接触面積を少なくする事で、剥がれやすくする働きです。

 

ちょうど、朝露に濡れた葉っぱの表にも、水の玉がコロコロ動いて、葉っぱ全体が濡れていない事にも似ています。実は、口蓋皺壁もこの役目を担っており、上顎の凸凹のお陰で、食塊を付きにくくしているのです。そういえば、食事中に海苔などが、上顎にペタッと付いてしまう事がありますが、殆どの場合が、エンボス加工が存在しない上顎の奥の方だけです。

 

2.お母さんの手の平効果(ルーロー作用)

エンボス作用に引き続き、今度は、お母さんの手の平で、オニギリを作っている時をイメージしてみて下さい。リズムよく手を上下させるだけで、みるみる、三角形の形になっていきます。これは、ルーロー作用と言って、繭型の空間を物体が回転しながら運動を繰り返すと、自然に三角形の形に整形されていく働きです。

 

おにぎりは、実は握っているのではなくて、回転させながら転がしているのです。もしかしたら、正式名称は、おにぎりではなくて、「おころがし」の方が適切かもしれませんね。

 

特に、指の凸凹が作用すると、より整形しやすくなっていきます。これは、自動車のロータリーエンジンにも同じことが言えて、おにぎり型のローターは、繭型のハウジングの中を淀みなく回転する事によって、コロイダル曲線を描いて成形されて行くことに似ています。

 

実は、口腔内でも同じことが起きていて、口蓋皺壁の凸凹と、咀嚼運動の開閉により、食べた食材が、どんどん一塊の状態に整形され、これに続く嚥下による飲み込み動作を、よりスムーズに促すために、成形運動をしているのです。

 

3.洗濯板効果

咀嚼や発語の度に、舌は上顎に接触しています。前述したルーロー効果の動きの中で、実は、舌の表面は、洗濯板に擦られるように、ゴシゴシ擦られています。

 

この時に、舌苔は口蓋皺壁によって、舌の表面から剥がれ落ち、きれいにお掃除されている訳です。

 

剥がれ落ちた菌類は、食塊と一緒になって胃に到達し、胃酸によって殺菌されてしまいます。ここで重要なのは、スマホの連続使用で、誰とも喋らなくなったり、柔らかい食材ばかりを食べたりしていると、舌の動きが少なくなり、洗濯板効果が働かなくなり、ドンドン、舌苔の付着が助長していきます。

 

●舌苔口臭の発現

デスクワークが中心で、頭が下に垂れて、ストレートネックになると、唾液の分泌が減少します。加えて、誰とも喋らずにいると、舌もジッとしたままです。家に帰っても、ジャンクフードを食べて、5分で食事が終了です。就寝前は、スマホを30分以上いじって、ベッドにつきます。

 

こうした生活習慣を続けていると、本当に舌は殆ど動かなくなり、口内環境を悪化させます。

 

もし、どうしても改善できないようであれば、せめて、1日1回、数分間で良いので、舌を上顎にくっ付けて、前後にゴシゴシする運動をしてみて下さい。唾液の分泌も促され、舌苔の付着も少なくなります。