舌と臓腑の相関について

 

コロナ肺炎の影響を受けて、「在宅型口臭対策プログラム」の通販商材を展開する様になりました。特に、遠方の方からの申し込みが多いので、医院で直接お目にかかって診察できない分、メールでのやり取りの比重が多くなっていきます。

 

その中で、成約にまで至った方にお願いしている事は、

「お顔全体は映り込まなくても良いので、アカンベーをした舌画像を写メしてほしい」

と言うお願いをしています。その一枚があるだけで、多くの情報を汲み取る事が出来るからです。

 

東洋医学を歯科領域に取り入れて30年、口臭専門になって14年、4000人の方の舌を拝見し、「舌診」を行ってきました。

 

今回は、患者さんから要望が多かった、患者さんの舌診をする時に、どの様な部分を見ているのか?舌診の少しディープな部分を解説してみましょう。

 

 

1.まず、実は舌の表面にはその場所によって、「臓腑の配当」が割り振られています。

 

例えば、普段から過緊張なストレスを感じている方は、「心」に相当する舌先だけが、ほんのり赤みを帯びています。

また、前日に暴飲暴食をして、胃腸に負担をかけた時は、「胃」に相当する舌の真ん中に、黄色い苔がベッタリ付いてきます。

舌の表面の位置情報は、臓腑の状態をよく表しています。

 

こうした、見る事で身体の状態を把握する視診を、東洋医学では「望」(ぼう)と言います。その他、

 

2.精神状態を表している

気血が充実していれば、「神気」が身体に宿り、元気な状態を保っています。舌の状態も、淡紅舌で薄白苔の様相を呈します。逆に、身体に何らか異常があると、気血も損耗しがちで、神気が無くなり、舌にも変化が出てきます。こうなると、漢方薬による体質改善も切れ味が悪くなり、予後も悪く、長患いになる事も多いです。

 

3.色を診る

臓腑の気血の盛衰は、真っ先に色の変化として現れてきます。舌の色と同時に、患者さんの顔、皮膚、爪、目などに、普段と違う色が出てきたら、その色をよく観察するようにします。例えば、光沢があり色つやが良ければ、健康状態は良好で予後も良い。逆に光沢がなくくすんだ色身だと、病状が進行し予後も不良なことが多い。

 

4.体格を診る

中国の東洋医学的見立てと、日本漢方では、少し解釈が異なりますが、身体が痩せているか太っているか…でも、体質を類推する事は出来ます。

●太っている人は、多血・少気で、気虚傾向に傾いていることが多く、臓腑の機能が低下する事から、湿や痰と言う病理産物が、身体の中に溜まりやすい傾向にあります。これに対し、

●痩せている人は、多気・少血であることが多く、常に枯渇する傾向にあり、貧血傾向や乾きの体質に傾きやすい傾向にあります。

 

5.舌色や形態を観察

以上の背景を受けて、舌診は舌の色、形状、苔、体液の変化を如実に表します。まず、舌は舌質と舌苔に分かれてきます。

舌質は、舌全体の色と形、舌苔は、舌の表面に付着する苔状の菌の集合体です。

舌は、病態の臓腑の位置、病位の深いか浅いか、病情の虚・実について把握できる一面があります。

 

●舌質

正常な時は、舌の色も淡紅色です。これが、白っぽい淡白色に移行すると、どこかの臓腑が機能低下になった虚証や、身体が冷えてしまう寒証に傾いていることが多いです。また、赤みが強ければ、舌の色も鮮紅色になり、心火上炎、肝胆火旺、陰虚陽亢の状態を呈し、さらに赤みが強くなり、深紅色になると、重症の熱証であることが多い。一方、紫色に傾くと、ドロドロ血のお血であることが多いです。また、やや青み強い時には、極めて寒がっている状態です。

●舌形

舌の形は、臓腑の精気を表します。一般的に、太目の舌は身体が寒がっている「陽虚」、細くて痩せた舌は、元気が無く貧血傾向の「気血両虚」、舌の表面に現れる裂紋は、身体が渇いた「陰虚」を疑います。その他、舌の横に出る歯の形のギザギザによる歯痕は「気虚」、舌の先端部の赤みは、身体がカッカッした「熱邪」、舌の裏に流れる下静脈がいきり立ったようにボコボコしていれば、ドロドロ血の「お血」を疑います。

●舌苔

舌苔は、無苔→薄苔→厚苔に移行していきます。特に、身体に溜まった、痰湿の盛衰を表し、ネバネバ体質に傾くほど、苔の量も増えていきます。加えて、痰湿が痰湿熱に移行すると、苔の色も、白→黄色→こげ茶色→黒色にまで変化していきます。

 

患者さんからは、舌の状態を映した「写メ」をしてもらうだけで、多くの情報を汲み取る事が出来て、漢方処方の一助となっています。