若年者に発生する腸内臭由来の口臭と「海玉膏」(かいぎょくこう)について

 

口臭の発生は、局所的な原因の口内環境だけではなく、全身的な体質に由来する、「腸内臭」も関係してきます。

 

腸内フローラのバランスが悪く、インドールやスカトールなどの腐敗臭が発生すると、その臭気物質が腸管壁を透過し、門脈を通じて血流にのって、肺でガス交換をされて、再び呼気中に臭いとして戻ってくるのです。この場合の口臭は便臭、野菜の生ごみ臭、発酵臭などを伴います。

 

要するに、オナラの回数が多くて、便臭が強い方は、口臭も出ているのです。

 

こうした原因から発生する口臭は、お口の中を良く磨くだけでは、なかなか改善が見込めません。そして、実は、腸内臭由来の口臭は…、

 

「若年者に発生しやすい」

 

傾向にあります。15年間で4500人の方を拝見してきた経験からいうと、成人する前に親が子供の口臭に気づいて、相談に来るケースの殆どが、この腸内臭由来の口臭であることが多いです。

 

実際に測定器にかけると、口臭発生菌に由来する「硫化水素」や、炎症に由来する「メチルメルカプタン」の値は、ヒト嗅覚で解り始める認知閾値以下に収まっていますが、腸内臭由来の「ジメチルサルファイド」だけが、突出して多い傾向にあります。認知閾値が「8ppb」ですから、実に15倍出ている訳です。これは、ナイショ話するくらいの距離感で会話をした時に、臭いとして届くレベルです。

 

口臭発生菌に由来する「硫化水素」は、「26ppb」

体質由来の「メチルメルカプタン」は、「1ppb」

腸内臭由来の「ジメチルサルファイド」は、「130ppb」

 

お口の中を拝見しても、清掃は良くできていますし、歯周病の兆候も全く見受けられません。

「普段から歯磨きは、上手く出来ているのです」

 

こうした場合、まず患者さんにお願いする対策として、

●腹に重い食材(ピザ、唐揚げ、フライドポテト)などは、少し控える

●発酵性食品(チーズ、ヨーグルト、納豆)などを出来るだけ摂取する

●食物繊維を多く含む食材も取り入れる

などの生活指導をします。並行して、口臭の改善を目的として、腸内環境を整える漢方薬の処方も考えていきます。

ただ、若年者の場合、漢方薬といえども、慎重に投与した方が良い場合には、当院では、ウチダ和漢薬の「海玉膏」(かいぎょくこう)を処方することが多いです。

 

本剤は、その成分表を見れば、生薬も沢山配合されていますが、区分で見ると、漢方薬ではなくて、「発酵性食品」扱いですが、殆ど、漢方薬といっても差し支えないと思います。

(恐らく、申請の面倒くささと、許認可迄のスピード感を重視したのかもしれません)

 

●黄 精(オウセイ) ナルコユリの根茎

●枸杞子(クコシ) クコの実

●肉蓯蓉(ニクジュヨウ) ニクジュヨウの肉質茎

●人参(ニンジン) オタネニンジンの根

●女貞子(ジョテイシ) トウネズミモチの果実

●陳皮(チンピ) ミカンの皮

●桂皮(ケイヒ) シナニッケイの樹皮

●海馬(カイバ) タツノオトシゴ

 

処方構成を見ると、成長発育・老化と関係する「腎」を補い、身体に溜まったネバネバとした「邪」を排出し、胃腸の働きを整え元気を与え、ゆっくり体を温める目的で配合されています。

 

本剤は、摂取してみると分かりますが、甘味と苦みを伴った発酵した味わいです。実際に渡しが摂取してみた所、数日間で、明らかに便臭やオナラ臭が軽くなります。

 

実は、海玉膏の以前には、パナックス「瓊玉膏」(けいぎょくこう)と言う商品が、別会社から販売されていました。ただ、あまりにも本物志向で製造工程に取り組んだおかげで、会社自体が解散してしまい、現在は、市場から無くなってしまいました。

その作り方は、まず、各生薬を微粉末化し、これにジオウ搾汁とハチミツを混和し、数日間、焦げないようにゆっくり熱を加えると、黒い練り状のペースト状に仕上がります。

 

実は、私達夫婦に授かった、長女と長男は、幼稚園の頃は、すぐに風邪を引き、喘息になる一歩手前の虚弱な子供でした。親の責任として、この「瓊玉膏」を1年以上与えた所、クラスで一番、風邪を引かない子供に変化したので、その効能には信頼を寄せていました。

 

市場から無くなって数年以上たった頃に、ウチダ和漢から、少しだけ処方構成は異なりますが、同様の商品が出てきたので、今回、臨床に導入してみた訳です。

腸内臭由来のジメチルサルファイドが発生している方に、海玉膏を1日1包摂取してもらい、半年後に測定した結果が、以下の結果になります。

 

この方は、口臭発生菌に由来する硫化水素や、体質由来のメチルメルカプタンは、殆ど検出せず、ヒト嗅覚で解り始める認知閾値以下に収まっているので、除菌療法は必要のない症例です。

ただ、腸内臭由来のジメチルサルファイドだけが、認知閾値を大きく超えていました。

初回時に、130ppb(認知閾値の16倍)検出していましたが、

半年後には、0ppbまで減少傾向を示していました。

 

本人に体調を伺った所、排便がスムーズになり、便臭も少なくなった…との所見を得ました。私が実際に自分の身体で試しに飲んだ時と同じ結果が出た訳です。

 

実は、腸内環境を良くすると、腸管免疫が獲得されて、感染症にも罹りにくくなることが指摘されています。

https://karadacheck.com/column/1choukatsu200626/

 

そればかりか、アレルギー疾患、コロナ肺炎などにも効果が期待できるので、発酵性食品と口臭との相関は、これから、もっと掘り下げていこうと思っています。