タイ料理の中の生薬

 

3月某日、clubhouseの『good・スメル・らぼ』Vol.3が行われ、タイ在住35年の日本人女性で、ラジオのディスクジョッキーとしても活躍されている、岡範子さんをゲストにお招きして、タイと日本のニオイ事情に関して登壇してもらいました。

 

タイの食文化に関しても、話題が及んだので、タイ料理に使われている食材の中で、生薬になっているものを、予習のつもりで色々調べて見ました。

 

①パクチー:胡荽子(コズイシ)

タイと言えば、何と言っても、パクチーです。別名:コリアンダー、カメムシ草とも言われ、独特の風味があります。私は普通に食べる事が出来ますが、好き嫌いが分かれる食材です。

 

最近では、日本においても「パクチリアン」を自称する方が出てきて、都内ではパクチー専門店のレストランもあるそうです。ただ、岡さんにお伺いしたら、タイ人における、パクチー文化は、日本でイメージするものとは、扱いが少々異なる事が解ってきました。

 

一番分かり易かったのは、「日本食の…三つ葉をイメージしてみて下さい」と言うものでした。

タイにおける、パクチーの立ち位置は、日本人の三つ葉と同じ感覚らしいです。

 

「三つ葉も、茶わん蒸しやお雑煮に、チョット添えてあれば、バランスが良いですが、レタスみたいに、三つ葉だけをサラダにして、ムシャムシャ食べないでしょう」と、説明され、妙に納得しました。

 

確かに、日本でも「三つ葉サラダ」なるものは、世の中に存在しません。

タイ人も、パクチーだけをサラダ感覚で、レタスのように食べている訳ではないのです。

 

所で、このパクチー、生薬名では、胡荽子(コズイシ)といいます。

古典の記載によると「穀物を消化し、五臓を治し、気を補い、大小腸を健常に保ち、四肢の熱を抜き、頭痛を止め、発疹を主治する…と言われています。また、「皮膚病を散らす」とも記載されています。現代風に意訳すると、パクチーは健胃、発表薬として消化不良を改善し、元気を回復させる…と解釈できます。また、私の歯科領域にも関係してきますが、煎じてスープ状にした原液でうがいをすれば、歯痛や口内炎にも効能が見込めます。

 

一時のブームに乗って、食べすぎると体調を崩す時もあるので注意が必要です。

 

②レモングラス:香茅(コウボウ)

レモングラスと言えば、「トムヤムクン」です。こちらに関しても、タイでは、それ程メジャーな食材ではないそうです。タイの方々も、日常的に食べる事は少ないそうです。

 

外国の方がイメージする日本の食卓は、すき焼きとお寿司しか食べていないと考えられているのと同じように、どうやら、タイの方々も、本来の食習慣は、大きく異なっているようです。

 

レモングラスは、生薬名:香茅(コウボウ)です。

レモングラスは、独特の甘みがあり、これが薬効にも効いています。古典の記載によると、「五淋を下し、腸や胃にある熱を除き、渇きを止め、筋を堅くする」とあります。現代風に解釈すると、まず、身体の中の余分な水毒を追い出す、強力な利水剤です。そして、同時に腸胃の熱も取り去る所が大きな特徴です。

一般に胃腸の熱をさばくには、超有名な「黄連」や「大黄」のように、その味わいは、「苦・寒」なのです。その為に黄連解毒湯などは、物凄く苦いです。

これに対し、茅根の味わいは「甘・寒」な所が大きく異なる点です。甘いのに、熱をさばくのです。

総じて、小便を促し、ゲップ、もたれ感をやわらげ、渇きを取り去り、むくみを取り下げる効能が見込めます。また、香茅は血分にも作用し、鼻血や血尿などの出血性病変も主治します。

 

③ナンキョウ(バンウコン):南姜、生薬名を紅豆蒄(こうずく)といい、健胃剤

南姜(ナンキョウ)は、バンウコンとも言われ、生姜の仲間に分類されます。日本の生姜より、辛みが強いらしいです。生姜の薬効と同じで、胸やけや胃もたれ、消化不良など、主に胃の働きを健常に保つ効能があります。また、殺菌効果、駆虫効果がある所も同じです。同様に、冷え症の方にも、身体を温陽します。しかしバンウコンは、日本では医薬品として認可されていません。生薬名は「山奈」といいます。薬として用いるよりは、食養生の一環として、食卓で用いるのが自然です。 

 

お国が変われば、食習慣も異なります。

 

次回の「good・スメル・らぼ」は、さらなるスペシャルゲストを招いて、ヨーロッパの食文化について、ニオイの情報をお伺いしてみたいと企画中です。