涙を…東洋医学で解釈する

 

2021年4月12日、ゴルフの4大メジャーの中でも、取り分け重みがある、マスターズトーナメントに、日本人選手として松山英樹選手が、初めて優勝する事が出来ました。

 

日本人選手が、このトーナメントに挑戦し始めて、実に、85年を経ての栄冠です。

ジャンボ尾崎、青木功、中嶋常幸選手など、多くの日本人選手が、跳ね返され続けたトーナメントに、ついに、日本人選手が栄冠を得たのです。

 

奇しくも、4月12日は、私の父親の、生前の誕生日です。ゴルフを愛し、生涯現役を貫き、亡くなる直前までコースに立ち続けた、オヤジの誕生日だった日に、チャンピョンが誕生したのです。

 

その日は、早速仏壇に線香を上げて、オヤジに報告しました。

 

私も、朝の五時から、ハラハラしながら応援をして、優勝パットが決まった時は、ポロポロと涙も出ていました。

 

 

所で、この「泣く」と言う行為は、東洋医学では、どのように解釈するのでしょう?

今一度、考察しておきましょう。

 

何故、ヒトは感極まると泣いてしまうのでしょう? 

 

いつも引用する、陰陽五行説の中には、「五液(ごえき)」という考え方があります。身体から出てくる水分には、5種類、存在します

1.涙(るい)…なみだ

2.汗(かん)…あせ

3.涎(えん)…よだれ

4.涕(てい)…はなみず

5.唾(だ)…つば

です。

そして、この5種類の分泌物が、「どういう状態の時に出るか?」が、重要になってきます。いつものパターンなので、既にお気づきの事かもしれませんが、この5種類には、それぞれ臓腑の配当が隠れています。

1.涙(るい)…なみだ→肝

2.汗(かん)…あせ→心

3.涎(えん)…よだれ→脾

4.涕(てい)…はなみず→肺

5.唾(だ)…つば→腎

です。

 

「感極まる」「感情が高ぶる」という事と、「肝」という臓に関係してきます。さらに、陰陽五行説には、「五志」があります。色体表を見てみましょう。

 

 

ここにきて、涙→肝→怒と言う相関が分かってきました。

 

ただ今回の私の涙は、怒りが頂点に達したから泣けた訳ではありません。

怒って泣く、悔しくて泣く、思い悩んで泣く、嬉しくて泣くなど、ヒトの感情は様々です。

 

これらに共通する事は、「気の流れ」が一時的に阻害され、滞りが生じている事に起因します。

いずれの場合も、怒れば気は上気し、思い悩めば気は結びつき、嬉しければ気は緩み、悲しくて気は消え去り、恐れの感情は気を下げる訳です。

 

こうした、感情・情動の過不足から起こる突然として湧き起こった「気の乱れ」を、正常な状態に戻してくれる臓腑が、「肝」の働きなのです。

ただ、情志の起伏が激しいほど、「肝」の働きは負担をかけます。

この事から、東洋医学では、「肝」は「将軍の官」(しょうぐんのかん)と言われています。鍼灸の専門学校に入って、真っ先に習う所で、国家試験の設問にも必ず出てくる重要項目です。

 

肝の働きは、精神的・肉体的な両方の外的な刺激に対して、気の流れを疎通して、元の状態に戻してくれる役目を担当してくれています。

 

仮に、身体への負担が軽く、情動の変化も少なければ、「泣く」と言う行為にまで至る事はありません。ただ、肝の働きが、受け止めきらない位、大きな感情の変動が起きると、肝の気が滞る事になります。

 

これを、東洋医学では、「肝欝気滞」(かんうつきたい)と表現しています。

 

そして、この状態が、ずっと継続したり、瞬間的に上昇したりすると、肝気は着火して、燃え盛る事になります。顔を真っ赤にして、瞬間湯沸し器のように、怒りまくった状態をイメージすると解りやすいです。

 

この状態を、「肝鬱化火」(かんうつかか)と言います。

こうなると、ろうそくの炎や、かき混ぜ棒で混ぜないお風呂の温度分布のように、この炎の熱量は、上へ上へと、一気に上がってきます。上半身に熱化した状態が停滞してきます。

 

肝の気は、「目に開竅」します。

 

肝の気の熱量が、目に集まると目は充血し血走った状態で、赤目になります。

 

そして、ストレスを抱えると、眉間にシワがとり、目の開きは狭まります。すると、益々、肝の気は目から出る事が難しくなるので、鬱熱をため込むことになります。

 

この目が真っ赤になり、熱を抱えた状態は、何とかクールダウンさせなければなりません。そうでなければ、目はカラカラに乾燥して、ドライアイになってしまいます。

 

その熱化した目を冷やす作用が「涙」なのです。 

超絶、凄いシステムだと思います。

ちなみに、目で起こらない場合でも、この病理(気鬱化火)の場合は、頭痛であったり、肩こりであったり、必ず「上」で症状が起こってきます。涙以外にも、上半身が汗ばんだり、脂性の様な分泌物が増えたりした時は、同じような症状に傾いているので、注意が必要でしょう。