鬼滅の刃に見る、藤の花の生薬解説

 

「鬼滅の刃」と言う漫画が空前のブームになっています。

コミックから始まり、テレビアニメ化、劇場版、海外上映など、多くの反響を得ています。

 

その中で、鬼退治の修業をする若者たちが、一人前になるために、結界の中に送り込まれ、そこに住み着いている鬼を無事に退治できれば、晴れて一人前と言う、命がけの訓練をする場面があります。 

 

鬼滅の刃4話より引用

 

藤の花をフィールドに植え込んで、鬼を封じ込めます。

何故、鬼は、藤の花が苦手なのでしょうか?東洋医学的に、解釈してみましょう。

 

●藤の花は食用ですが…

 実は、藤の花は、天ぷらにして揚げてみたり、湯通しした後、ジャムに加工したりして、一部食用として用いられています。必要な事は、よく加熱する事です。ただ、含有成分のレクチンが、過剰摂取により、悪心・嘔吐・眩暈・胃もたれを引き起こすので、過剰摂取は禁物です。

 

 藤は、マメ科フジ属に分類される、つる性の落葉植物です。マメ科植物に含有するレクチンは、血液凝固作用があるので、充分必要があるのです。

 

●魔除けとしての藤の花

古来より、藤の花は、魔除けの作用があると言われてきました。特に藤の音が「フジ」→「不死」につながる事から、縁起物、観賞用として、重用されてきました。特に、鈴なりに咲く藤の花は、子宝の縁起物、子孫繁栄の証として用いられています。

 

●生薬にもなる

藤の枝に実る新芽を虫などが食べて、樹皮が傷つくと、藤の木は、その部分を修復します。人間でも、皮膚が傷つくと、かさぶたが出来ると同じように、その部分が異常増殖をして、「こぶ」を作ります。

 

これが、「藤木」「藤こぶ」です。

含有成分は、イソフラボノイド、多糖成分、ウェスチン、ウエスタリン、蛋白質などです。

主治する薬効は、便秘改善、胃痛除去などで、特に、藤こぶとひしの実、訶子、ヨクイニンの4種を混ぜて煎じると、それぞれの学術名の頭文字を拾って、「WTTC」と名付けて抗がん剤としても用いられます。

 

今から、50年前、国際的に著名な外科医、中山恒明先生が、この「WTTC」の煎じ漢方薬を患者に投与しました。中山先生は、山崎豊子原作の「白い巨塔」の財前五郎のモデルともなった先生です。

 

進行した食道がん、胃がんなどに応用した所、生活の質の改善、食欲増進、延命効果が認められ、何も摂取しない群と比べて、20~30%の有効率が確認されたそうです。

 

私が、将来がんになったら、絶対にこの処方は試してみたいと考えています。