発酵・腐敗・熟成が、東洋医学とも深い関係

 

5月の17日に、音声SNSのclubhouseで、腸内発酵の事に関して、ゲストスピーカーに招かれ、腸内臭に関して、オモシロ真面目に解説する機会を頂戴しました。

https://ios.joinclubhouse.com/event/xoBlEJpV

 

 

腐敗と発酵は、本質的に何が違うのか?と言うと、どちらも、菌が関与して、代謝分解する所までは同じです。その過程で、さまざまな物質の代謝産物を生成します。

 

その物質が、人体にとって有用な場合は、「発酵」

害になる場合は、「腐敗」と解釈しているだけで、

菌の活動からすれば、大きな違いは無いのです。

 

ただ、腐敗も決して悪い訳ではなく、自然界において、動物の死骸が出た場合、腐敗によって分解されて、土にかえるように、生き物の循環システムとして非常に重要な部分を受け持っています。もし腐敗が無ければ、私達の身の回りは、死体だらけになってしまいます。

 

加えて、熟成になると、色々な解釈はありますが、今度は、菌が関与しないで、「化学反応」だけで、新しい成分が出来上がる過程を指すことが多いです。

 

ここで、一つクイズを出してみましょう。以下に上げる物の中で、「発酵」が深く関与しているものを考えてみて下さい。

① 藍染め

② 発泡スチロール

③ 漆塗り

 

正解:藍染めになります。 

 

 

【藍染めの発酵とは?】

2300年前、中国の古典の『荀子』が原典です。32篇の内、「勧学篇」に

「青は藍より出でて藍より青し」と言う記述が残っています。

この藍は、ジャパンブルーとして我が国に定着しました。

青い色素(インディゴ)の元となる成分は、以下の機序によって染色できるようになります。そこに、深く発酵の技術が生かされているのです。

実は、藍草の中に青色成分は無く、外気と太陽自然光(紫外線)などの光を触媒として、青くなる成分が、植物の中に含まれているだけなのです。

この成分を利用して、何とかして染色させたい訳ですが、インディゴは、他の植物染めの色素と異なり、不溶性で水に溶けないので、直接、生地に浸しても染料にはなりません。

けれども、インディゴは、発酵させると水溶性に変化します。藍の葉の中には、染料となるための有効な「藍還元菌」が寄生しています。この菌は、アルカリ性の環境を与えると活性化して酵素を生み出します。この酵素が、不溶性のインディゴを「水溶性」に変化させるので、生地に染色する事が可能になるのです。

 

【生薬としての藍】

藍は、薬草としても重用されています。その歴史は古く、918年頃の古典『本草和名』には、解熱鎮痛剤として、藍の実が引用されています。

 

 

「生藍の葉、乾燥葉、種子の生食または煎じ液は、消炎、解毒、止血、虫さされ、痔、扁桃腺炎、喉頭炎に効果がある」と記述されています。加えて、藍の実から抽出した染色液の「すくも」は、フグ毒にも効果があるといわれています。

また、中国古典医学では、風邪、細菌性下痢、急性胃腸炎に効果があるとされています。

そして、近年、タデ植物の研究が進み、万病の元とされる活性酸素を打ち消す、抗酸化作用がある事が確認され、ポリフェノール類を多く含むことが確認されました。特にポリフェノールの中でも、「ケルセチン」や「ケンペロール」を特に多く含みます。

これらの成分は、ホウレンソウなどに含まれますが、藍は、10倍以上含有しています。

 

人類は、腐敗から学んだ、発酵と言う技術で、食材を長期保存できるようにしたり、人体にとって有用な成分を多く含む食材に変化させたり、食をより美味しくする成分を生み出したりして、私たちの生活をより豊かに導いてくれています。