バナナは、なぜ曲がっている?太陽の運行と東洋医学について

 

わが家は、バナナを好んで食べます。特に、仕事が終わってから、閉店間際のスーパーに出向くと、半額セールをやっているので、迷うことなくゲットです。

 

所で、バナナは、「なぜ反りが入っているのでしょう?」

 

実は、ココにも東洋医学が関わっているのです。

 

バナナは、まず、偽茎(中心の丈夫な幹)と言う部分から、「下向きに」つぼみが出てきて、図のように、始めに小さな花を結びます。この頃から、それぞれの花びらの下に、黄色くて小さいバナナの実が姿を見せてきます。

 

花弁の下に現れた小さいバナナの実が分かると思います。 

 

 

そして、徐々にバナナの実が大きくなると、

 

「負の屈地性」という段階に入ります。

 

実は、バナナは、陽の光を多く浴びるために、地面の方向に成長をするのではなく、グイっと空の方に成長の方向を変えて、太陽に向かって伸び始めるのです。

 

バナナは熱帯雨林の植物です。葉の大きな植物が、うっそうと茂る地方では、地面の方に下向きに成長するようでは、太陽の光が少ない環境で育ってしまうため、上方に成長の方向を変えるのです。それでは、横の方にまっすぐ伸びれば良いのではないか?とも思いますが、こうなると、比重が分散されて、気のバランスが崩れて、木そのものが倒れてしまいます。

 

合目的に、多くの実を宿すには、反りのカーブが入ってでも、「上方向に」伸びるしか、生存を維持する手段が無いのです。

 

 

実は、この太陽から受ける恩恵は、私達の健康にも深く関与しています。

 

 

【健康と太陽の運行】

太陽の運行には、大きく分けて、「病期」による分類(六経分類)を伺い事ができます。

 

東洋医学では、病気が始まって、病邪が身体の中に浸透し、臓器の機能障害を受けて、やがて治癒していく過程を、「病期」と定義しています。

 

病期は「陽」から「陰」の症状へ進み、快方に向か分ければ悪化し、やがて、死に至るとされています。

 

陽の症状と陰の症状は、更に細かく分類され、3つの陽期と3つの陰期に分けられ、2つを合わせて、6つの段階に分類されて行きます。

これを六経分類といいます。

 

私達東洋医学を標榜する治療家が、専門学校で、教科書の一番初めに習う、超重要な概念です。

 

簡単に考えると、病気と言うものは、

●陽証から陰証へ、

●表証から裏証へ、

●熱証から寒証へ、

●実証から虚証へ、進行していくと解釈されます。

 

太陽や月の運行全く同じように、ヒトの健康も「満ち欠け」があるのです。

 

東洋医学では、病期の変遷により体質(証)の変更が起こったと解釈し、処方される方剤も、微妙に変化をしていきます。

 

 

【病期による分類】(六経分類)

 

[1]太陽部位と太陽病

太陽部位とは、人体の身体で「上」と「表」に相当します。これは、陽の光が良く当たる部位と考えれば分かりやすいです。特に、ネコや犬の様な四足動物をイメージすると、太陽の光を多く浴びる部位は…、

 

頭頂より背中、脊柱、腰、踵に至るまでが該当します。つまり、

 

●病邪が、身体の表在組織、身体上部に停滞するものを指します。

●病状は、浮脈、頭痛、悪寒、微熱、項背部痛などがみられます。

 

難しく考えずに、「アレ?風邪ひいたかな?」と言う時に感じる、関節の節々の違和感、微熱感、毛穴がゾワゾワした感じをイメージします。まだ、病邪の影響が、身体の中に入っていない状態です。

 

[2]少陽部位と少陽病

少陽部位とは、「半表半裏」に相当します。身体が寝返りを打った時の部位です。ゴロ寝した時の身体の側面は、両耳の前後より、脇の下、肋骨、脇腹を経て、足部に至る所を指します。

 

日が昇り、身体の側面を良く照らす感じです。

 

●病邪が太陽の表面を過ぎて、徐々に身体の内方に侵入した状態ではあるものの、未だに深部の裏位にまでは達していない時期です。

●病状は、往来寒熱、胸脇苦満(肋骨弓下の張った痛み)、口苦、口乾、はき気、食欲不振などがあらわれます。

 

風邪の症状で考えると、ゾクゾクする時期を過ぎて、徐々に熱が出始め、下痢をしたり、倦怠感が出たり、やる気が欠如し、すぐに横になりたい時期です。

 

[3]陽明部位と陽明病

陽明部位とは、四足動物で陽の光が当たらない部位です。主に「下」と「裏」に相当します。身体においては、眼から下唇、心、胸、腹、股、膝、脛、跗、指頭に至るまでを指します。

 

●病邪が身体の中に浸透して、身熱が裏位と下部(特に陽明部位)に至った状態で、

●病状は、さらに深部に移り、裏の臓器として胃、腸に波及して、腹満、便秘、深部の熱感などがみられます。

 

[4]太陰部位と太陰病

上記の太陽病期、少陽病期、陽明病期を経ても、なお治癒に至らず、身体が疲れ切った状態で、太陰病期へ移行すると考えます。

 

●病邪がさらに進行し、もはや、太陽の光が届かない、身体の深部の消化管に病邪が移行します。

●病状は高熱が身体深部です。裏に影響を及ぼす病態は、一見、陽明病をイメージしますが、それも、いつまでも続く訳ではありません。病気が長患いになると、陽性熱性から転じて、徐々に病態も冷えが始まります。症状は腹痛、ガスがたまる、下痢、便秘を繰り返す等、へその周りを触ると、冷えを感じる時もあります。

 

これは、例えば、打撲のケガをした時に、最初は真っ赤に腫れ上がってズキズキしている部位も、時間の経過とともに、徐々に腫れや熱感は少なくなり、シクシク痛むように変化していきます。この時期が「陰病」(いんびょう)に移行した、初期の症状で、特に、「太陰病」(たいいんびょう)と解釈します。

 

[5]少陰部位と少陰病

少陰病は、身体の生命素が不足して、気虚、血虚の状態がさらに悪化した状態です。

 

●少陰病は、臓腑機能がさらに疲弊して衰え、症状が重篤になった状態で、フラフラになって意識レベルの消失や、低体温障害などが現れます。

●病状は、身体にさらにダメージを受け続け、免疫力・抵抗力が無くなると、代謝が低下して身体はドンドン冷えていきます。冷えは新陳代謝の低下をきたし、腹部を中心とした諸症状を招きます。そして、その冷えが全身に波及すると、倦怠感、全身冷えとなって現れた状態が、「少陰病」(しょういんびょう)です。

太陰病と比較して、さらに元気が無くなっていくので、身体は疲弊しているのですが、気力も低下しているので、一見、重症に見えない時があります。これを、東洋医学では、

 

「困するといえど窮することなし」と考えています。

 

[6]厥陰部位と厥陰病(けついんびょう)

●厥陰病は、打撲をした時の急性期は赤く腫れても、慢性期には冷えを抱え、徐々に痛みが強くなっていきます。これは、病気の初期段階は、温熱産生が旺盛ですが、病態が長引くと冷えに傾きます。この冷えの極致を「厥陰病」(けっちんびょう)と言います。

●病状は、内臓全体が冷え切ってしまい、時として熱症状も出ることから、「陰陽錯雑」となっていきます。これは、燃え尽きて消え去る寸前のロウソクの炎が、最後の一瞬、強く燃え上がるように、臨床的には、かなり危険な状態です。

太陽の運行は、バナナの生育と共に、私達の健康の変化にも影響を与えているのです。

特に、身体が冷えを感じている時は、病勢が、身体の中に影響を与えている時期などで、とても注が必要な状態です。日頃から、自分の体温の変化をチェックしておくことが肝要です。