スラム街のギャング…憎しみ・恨み・怒りの感情

 

10月某日、深夜にNHKを何気なく見ていたら、ある番組が放送されており、さぁ、コレから就寝しようと思っていた矢先、番組を見入ってしまい、いっぺんに眠気がすっ飛んでしまいました。

 

 

アパルトヘイトの人種差別が色濃く残る、南アフリカ・ケープタウンのスラム街で起きている、黒人同士のギャングの抗争を、一人の白人の牧師が仲裁に入り、再生を目指す番組構成です。

 

主人公の牧師さんは、若い時は、イケイケの証券マンで、企業買収や投資によって、巨万の富を築き、何不自由ない地位を得た方です。

 

 

それが、ある時、南アフリカに旅行した時に、スラム街の実情を知り、私財を投げ打って、社会起業家に転身し、牧師さんの修業も積みました。最終的には、家族を説得して、一家でスラム街近郊に居を構えることになります。

 

黒人街に、白人が単身乗り込んでいけば、すぐに略奪と暴力を受けそうですが、そこは「牧師さん」という肩書が免罪符となり、ギャングであっても、おいそれと、この白人の牧師さんを、ピストルで撃ち殺す事は出来ません。人としての信仰心を完全に捨ててはいないのです。

 

来る日も来る日も、いがみ合いの抗争を繰り返す日々が続きます。双方のギャング団に出向き、幹部を説得して、和解の道を探します。ところが、この取材中にも、その幹部が殺されてしまい、憎しみ・怒りの連鎖が、毎日のように繰り返されます。

 

牧師さんも、あらゆる教えを諭して説得しますが、血で血を洗う抗争は、耐える事がありません。

 

平和ボケした、私たち日本人では、想像もつかない日常が存在しています。

 

【憎しみ・怒りとは】

憎しみや恨みや怒りは、人類にとって非常に厄介な感情です。これらは、ヒトの健康を害する猛毒で、どんな漢方も効きません。食養生も、健康的な運動も、全く効果がありません。

こうした感情は、自分の脳に大きなダメージを刻み込みます。特に、大脳辺縁系に影響を与え、理性の判断を狂わせ、善悪の区別が判断できなくなっていきます。相手にぶつける誹謗中傷とハラスメントは、最終的には自己の脳を破壊している事につながります。

 

この「憎しみ・怒り」の感情が、いかに愚かな事であるのか?を、多くの先人が、金言・名言として残しています。

 

【憎しみ・怒りの名言】

● 人を恨む行為は、限られた人生をつまらなくする。 河野義行(松本サリン事件被害者)

● 子供は感情でしか大人を支配できない。大人になってからも感情を使って人を動かそうとするのは幼稚である。 アルフレッド・アドラー

● 人のことを憎み始めたらヒマな証拠 西原理恵子(漫画家、コラムニスト)

● 恨みなど抱くな! 君が恨みを抱いている間、彼らは人生を楽しんでいる! バディ・ハケット

● 30過ぎても親を許せない奴はバカ  ビートたけし

 

番組後半で、主人公の牧師さんは、スラム街から離れた所に、広大な牧草地帯を、私費を投じて、一山買い取ります。そこに、ギャングを連れていき、農園をやってみないか?と、諭します。

 

ギャングの幹部は、俺達でも、こんな光のある場所に行って、仕事をしても良いのか?と、困惑した表情を示します。

 

その中で、とても印象に残る挙動をギャングがしました。

 

農園に行く道中、自動車の走行音以外、静寂の時が流れます。すると、ギャングのボスは、カバンから、おもむろに拳銃を取り出して身構えます。

 

牧師さんが、「どうしたんだ?」と問いかけると、

「静寂が怖いんだ、静かな夜は、必ず死神がやってくる」と受け答えます。

 

太陽がさんさんと降り注ぐ、のどかな風景が広がる田園においても、なお、死の恐怖に怯えているのです。

 

【怒りの感情を鎮める漢方薬】

ヒトの健康を害す猛毒の感情ですが、漢方処方の中には、怒りを抑えるものもいくつか存在しています。

 

① 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)) 

身体が虚弱で、神経過敏なタイプに適した漢方薬です。特に、カーッとなって、頭に血が上った状態に処方します。この状態を、漢方では、「気逆」と解釈しています。生薬構成を見ると、「竜骨」に鎮静作用、「桂皮」は、のぼせを鎮静する作用が、「大棗」は精神を安定させる作用があります。

 

② 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれとう) 

上記の同様の処方ですが、「柴胡」により、パワーアップをしている分、間質性肺炎の副作用にも注意が必要です。半表半裏で、体力がある人に処方します。特に、些細な事で、クヨクヨ、イライラ、ため息をついてしまう方に合っています。

 

③ 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

「肝」の気の高ぶりを抑え、陳皮と半夏を加える事で、堅くなった気持ちを解きほぐす作用があります。どちらかと言うと、比較的体力がない虚弱体質に向いています。特に、まぶたや顔面が、ピクピク痙攣したり、手足が震えたりする症状に奏功します。

 

④ 加味逍遙散(かみしょうようさん)

更年期障害で起こるイライラに処方される漢方薬です。「産婦人科の三大漢方薬」とも呼ばれ、婦人薬の代表格です。生理前症候群にも用いられ、のぼせ。火照りがあり、精神不安を抱えている方に奏功します。

 

⑤ 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

体力旺盛で、赤ら顔で、のぼせ気味の人に用いる漢方薬です。赤い…がキーワードなので、目赤・皮膚の湿疹による赤味、赤ら顔などを目標に処方します。

 

普段、全く接する事のないスラム街のギャングの生活を垣間見る事が出来、この牧師さんの社会活動が成就する事を願うとともに、自分は何もできない、もどかしさも感じました。