バナナの熟成とエチレンガスと滅菌処理について

 

コストコによく買い物に行く我が家は、一度に多くの食材を買って帰ります。コストコに食材には、「外しが無い」と、固く信じている私たち家族は、オーガニックバナナもよく買って帰ります。

 

一般的なスーパーで売っているバナナより、本数も多く、大きさも巨大です。

 

ただ、食べ頃で買って帰ると、最後のバナナを食べる頃には、熟成が進み過ぎて、黄色いバナナが、シミだらけの黒いバナナに変色してしまいます。でも、食べないのはもったいないので、柔らかくなったバナナは、ジューサーにかけて頂くようにしています。

 

そんな訳で、買って帰るバナナは、「やや緑色が強い」物を買って帰り、出来るだけ長持ちさせる工夫をしています。ただ、今回買ったバナナは、あまりにも緑色が強い物を買ってしまったので、いつまでたっても黄色くなってきません。

 

 

なかなか黄色くならないので、試しにミドリバナナを食べてみたのですが、触感も異様に硬く、味も苦みが強く、

食べられたものではありません。

 

そんな訳で、ネットの情報を頼りに、バナナの熟成にチャレンジしてみました。

やはり、リンゴが出す「エチレンガス」が効果的…と言う事で、バナナとリンゴの共同生活が始まりました。

 

【エチレンガスとは】

エチレンガスは、野菜や果物など作り出す、「植物ホルモン」で、自らの成長を早め、熟成を促進する働きがあります。

リンゴが赤くなったり、バナナが食べ頃になったり、桃が柔らかく甘味が増したりするのも、エチレンガスが関係しています。

 

果物が後出したエチレンガスの成分は、その他の野菜や果物の熟成も早めてくれます。

 

ただ、よく考えると、熟成を促すと言う事は、限度を超えると、劣化・老化も早まる…と言う事に他なりません。

完熟後もエチレンガスにさらされていると、腐敗の原因にもなるので、注意が必要です。

 

●エチレンガスを多く放出する果物は、リンゴ、桃、マスクメロン、西洋梨などです。何となく、手に取って香りのする果物は、

エチレンガスも出している訳です。しばらくリンゴと暮らしたバナナは、だいぶ黄色くなりました。

 

 

食べてみたところ、固さも甘みもバッチリで、いつものバナナになっていました。リンゴ君有難う。

 

【医療の役にも立っているエチレンガス】

 

実は、このエチレンガスは、「オキサイドエチレンガス」(酸化エチレンガス)として、医療の分野でも用いられています。

これは、酸化エチレンガスを用いて、微生物の病原性を殺滅(さつめつ)する手法です。

一般的には、エチレンオキシドガス滅菌、EOG滅菌などと呼ばれています。

湿潤している機器類や、ガスが浸透しにくい構造のものには不向きですが、逆に、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)のように、

高熱に耐えられないものに用いる滅菌法の一つです。

 

私の専門分野では、口臭測定をする際に、患者さんの口腔内からガスを採取する時に使うシリンジや、鍼灸治療で用いる、

使い捨てのステンレス針などは、EOG滅菌処理されることが多いです。

 

殺滅作用の原理は、微生物を構成するタンパク質、遺伝子情報を持つ核酸が、酸化エチレンガスが強く反応し、

アルキル化することによって、細胞の代謝や増殖を阻害し、微生物の活動を死滅させます。

 

ただエチレンガスは、非常に高い誘爆性、引火性があるので、高圧蒸気滅菌器のように、各医院に設置するという使い方には不向きで、工場出荷の際に処理して流通する…という使い方がもっぱらです。

加えて、酸化エチレンガスそのものと、二次生成物として出てくるエチレンクロルヒドリン等の毒性です。

この毒性が製品に残留ガスとして付着していると、人体に有害な作用を及ぼす可能性があります。

このため、残留ガス量の許容値が定められており、ガス抜きを正しくしてから、出荷する事が強く求められる所が難点です。

 

エチレンガスは、果物の成熟にも貢献していると同時に、細菌の繁殖も抑える性質がある所が面白い部分ですね。