最近、患者さんから
「漢方薬を服用する時は、どのようにしたら良いの?」と言う問い合わせを頂戴しました。
基本的には、多めの水か白湯で、食前に服用するのがベストなのですが、それ以外の服用法で、注意しなければならない物もあります。今回は、『薬の服用法』について、考察を加えておきましょう。
漢方薬は、独特の味があるので、飲みにくい時などは、ジュースと一緒にグイっと飲んでしまう方がいます。実は、薬剤は服用する飲料によって、薬効に変化を与えたり、時として重篤な副反応が出たりする事があります。漢方だけではなく一般薬も含めて、注意すべき点をまとめてみました。
【漢方薬の特殊な服用法…酒服】
20ml程度の少量の酒と一緒に服用した方が良い…と、される漢方薬もあります。
これを、「酒服」(しゅふく)と言います。
お酒に特別のアレルギー症状を持っていない方の場合、
八味地黄丸、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散などが該当します。
煎じ抽出した漢方薬の中には、生薬をそのまま砕いた粉末状の物も配合されているものがあります。こうした場合、アルコール成分で、精油脂成分を溶かして馴染ませることで、初めて吸収効率が上がる作用を生み出すことが指摘されています。加えて、お酒には、胃腸の働きを鼓舞したり、血行を良くしたり、胃もたれ寒を少なくしたりする作用も期待できるので、脾虚・血虚・陽虚・寒証・痺証などの体質とのマッチングが良いのです。
液体の煎じ薬は、直接、お酒と混ぜて服用し、エキス顆粒や錠剤は、お酒に溶かして服用します。
ただ、私のような、全くお酒がダメなゴケには無理な服用法です。
漢方の薬効ではなくて、お酒のアルコールで、ひっくり返ってグーグー寝てしまいます。
●薬の飲み方による効果の違い一覧
① 飲み物なし
錠剤やカプセルは小さいので、飲み込みやすいので、「水無し」で、服用してしまう方がいます。特に、糖衣錠などは、その甘みを暫く放置すると、口内に唾液が出てくるので、ゴックンしやすくなます。
ただ、この服用法は、あまりお勧めできません。
それは、食道、喉など、途中で引っ掛かってしまうと、そこの粘膜に炎症が起きたり、充分な薬効が得られなかったりする場合が出てきます。
② お茶
基本的に、多くの薬剤は、お茶と一緒に服用しても特に問題ありません。ただ、鉄剤など一部の薬剤は、お茶の中の「タンニン」と言う成分によって、吸収効率が低下する可能性が出てきます。担当医に確認を取る必要があります。
③ 炭酸飲料
炭酸飲料は、胃の中の酸性度を上げます。飲食の際に一緒に摂取すると、消化を助ける働きもあります、ただ、胃の中のphが変化し、やはり吸収効率を減弱させたり、逆に、強くなってしまったりする事もあります。炭酸飲料で、服用する行為も控えた方が無難です。薬の吸収を弱めたり、又、強めたりする可能性があり、お薬の期待する効果が得られない可能性があります。そのため、お薬を炭酸飲料で飲まないようにしましょう。
④ コーヒー、紅茶
処方箋が無くても、普通に薬局さんで手に入る、風邪薬や鎮咳薬には、カフェインが含有されているものがあります。もし、コーヒーなどと一緒に服用してしまうと、成分が重複して、カフェインの過剰摂取になる事も考えられます。すると、頭痛、不眠、頻尿、過緊張などの副反応が、強めに出る可能性もあります。多少の注意が必要です。
加えて、もっと積極的に禁忌としている薬剤も存在しています。例えば、キサンチン系の喘息薬や、ベンゾジアゼピン系の精神薬、シメチジン系の胃薬などです。これらは、積極的に注意が必要です。
⑤ 牛乳による服用
一部の抗生剤では、牛乳に含まれているカルシウム成分と、胃で結合する事で、吸収効率が低下したり、充分な薬効が出なかったりする事が指摘されています。
また、逆に、水虫を治療する抗真菌薬や精神神経薬では、薬の吸収効率が促進し、薬効が強く出てしまうものも存在しています。担当医、薬剤師に確認を取る必要があります。
⑥ グレープフルーツジュースによる服用
最近は、テレビの健康番組による情報提供で、グループフルーツジュースの成分が、体内の代謝酵素の働きを阻害すると、薬効に影響がある…と言う情報が、だいぶ世に広まりました。
特に、高血圧で用いるカルシウム拮抗薬、不眠症治療薬、免疫抑制剤、抗血小板薬や高脂血症治療薬などを服用する時は、特に注意が必要です。
⑦ 栄養ドリンク
前述した通り、栄養ドリンクにも、カフェイン、アルコール、生薬などと、拮抗作用・相互作用をおこす可能性があるので、控えた方が良いです。
⑧ 青汁
青汁や健康飲料に含まれる「ビタミンK」は、特に、血液をサラサラにする、ワーファリンとの飲み合わせが悪いので、特に注意が必要です。
薬剤の服用は、担当医の指示を良く聞いて、水か白湯で服用する事を心がける事が重要でしょう。