口内で起きている、口臭につながる化学反応

 

口内で発生する口臭は、色々な化学反応で発生してきます。食品中には、色々な栄養が含まれており、代謝の段階で、色々な物質へ変化していきます。時に、その生成物が特有な臭いを伴うようになり、口臭として自覚されるようになります。

 

【発生機序】

① 食品中のタンパク質は、カルボン酸とアミンから形成されています。まず、脱炭酸反応による「脱カルボキシ反応」によって腐敗アミンが生じる。このアミンは、魚臭の様な臭気を放ちます。

 

② さらに腐敗アミンは、「脱アミノ反応」によって、低級脂肪酸・アンモニアが生成され、し尿の様な臭気が出てきます。

 

③ 加えて、硫黄原子を含む、含硫アミノ酸も脱アミノ反応によって、含硫化合物が生じ、

 

●必須アミノ酸である「メチオニン」から、臭気物質の「メチルメルカプタン」

●準必須アミノ酸として「システイン」から、臭気物質の「硫化水素」が発生してきます。

 

④ その他、脂肪も不完全分解によって低級脂肪酸を生ず、汗臭いニオイ、ワキガのようなニオイになります。

 

⑤ 糖分が口内に残留し、就寝中で時間が経過すると発酵して、エタノールやブタノールなどのアルコール類に変化します。目に染みるような刺激臭・発酵臭がします。

 

⑥ 同様に、酢酸、酪酸、プロピオン酸からも低級脂肪酸が生成され、アセトインやジアセチルなどの低分子ケトン類が生み出されます。これは、熟れた果実臭、甘酸っぱいニオイを生じます。

 

⑦ これらの過程では二酸化炭素、水素、メタンなどのガスも発生する。有機物の嫌気的分解によって生じるこれらの物質の多くは悪臭を発するが、これが口内で起きる口臭です。

 

こうした化学変化から発生する口臭を、物質レベルで掘り下げると

 

●カダベリン

これは、「死体」を意味する、cadaverousに由来します。動物の腐敗臭を伴い、前述したアミン体の一種です。

 

●アセトン

これは、バナナ臭のような甘酸っぱい臭気です。一般的に、糖尿病になると糖分が代謝されず、利用されず、アセトンやヒドロキシ酪酸といったケトン体が、血流に多く出てきます。糖尿病が進行すると、こうした物質が、体臭や口臭に出てきます。

 

●プロピオン酸

食品中のお味噌やチーズなどの発酵性食品の成分が、口臭発生菌による代謝産物で発生していきます。酸っぱい感じで、鼻につく不快なにおいです。

 

●フェノール

食品中の糖分がアルコール発酵すると発生してきます。消毒薬の様な揮発性の高い臭気です。

 

●イソ吉草酸

口腔内の嫌気性菌が産生する低級脂肪酸の一種です。体臭にも含まれる、人体にとっては厄介な臭いです。身体では、足のにおい、靴の中のニオイ、蒸れた靴下のニオイです。

 

【対策】

食品中には色々な栄養素が含まれ、代謝される事で、違う物質へと変化していきます。口臭の予防と言う視点で考えると、こうした食品を食べない訳にはいかないので、菌の方でコントロールするしか手立てがないのです。

 

菌を減らすには、「機械的歯面清掃」が、第一選択になります。

 

ただ、歯列不正・歯周ポケットの特性・口内乾燥などにより、どうしても菌が優位になりやすい口内環境の方がいます。そんな時は、「除菌療法」をする事で、菌バランスを整えていかないと、口臭を予防する事は出来ません。