中城歯科の口臭治療について

 

最近、患者さんからの問い合わせで、ブログを見ても、中城歯科の口臭治療の概要がありませんね…と言う問い合わせを頂戴し、そう言えば、まとめていなかったなぁと言う事で、ザックリと紹介しておきたいと思います。

 

【口臭の発生源には、2系統ある】

口臭治療の難しい所は、発生源が2か所あると言う事に尽きると思っています。

その2つの系統とは…、局所における口内の菌と、体質全体からも口臭は発生してくるのです。

 

そして、そのバランス感覚が重要で、口内:9割、体質:1割の方もいれば、口内3割、体質7割の方もいます。

 

この患者さんごとの見定めが、超重要になってきます。

その方の原因によって、治療方針が全く変わってくる所が、口臭治療の、最も難しい所だと考えています。

 

殆ど、オーダーメイドで、治療方針のサジ加減が求められるのです。

 

口内が原因の場合は、歯科が得意です。

また、体質が原因の場合は、内科領域の方がマッチしているかもしれません。

 

この、「局所」と「全体」を、丸ごと包括して診て差し上げる事が重要なのです。

 

① 局所における口腔内が原因の治療方針

こちらは、主に歯科が担当する部分が多い領域です。

まず、含硫アミノ酸を含む食材が入って来た時に、口臭発生菌がエサとして食べる事で、歯周組織や舌上で増殖し、脱アミノ反応により代謝産物を形成します。

 

要は、残りカスを生み出しながら、口内で増えてニオイを発している訳です。

 

食品中のシステインからは、硫化水素が、

メチオニンからは、メチルメルカプタンの臭気が出てきます。

 

ただ、含硫アミノ酸は、多くの食材に含まれているので、そうした食品を食べない訳にはいかないので、局所口臭は、菌の方でコントロールするしか手立てがないのです。

 

口臭発生菌による口臭は、口内の機械的歯面清掃と除菌療法が必要になります。

一般的には、内服薬として抗生物質のジスロマックを使ったり、局所塗布として、ミノサイクリン塩酸塩軟膏を注入したりしていきます。

 

局所塗布の場合は、菌は自己防御膜として、バイオフィルムと言う膜を作るので、まず、膜をしっかりはぎ取って、その下に隠れている悪玉菌に薬剤を届かせる必要が生じてきます。

 

この「下地作り」を行う事が、死ぬほど重要です。

 

さらに、口臭発生菌が生み出す代謝産物の中には、「炎症誘発物質」も含まれます。やがて、歯肉に軽い炎症である「浮腫」が起きて、ドンドン歯肉の中に波及する事により、歯槽骨に炎症が波及し、骨を溶かし始めます。最終的に歯周病に罹患する事になります。

 

すると、炎症によるニオイとして、歯周病由来の臭気も出てくるようになります。

 

最終的に、口臭発生菌は、歯周ポケットから遊離し、舌の上に移行していきます。舌の上で舌苔を作る事となり、硫化水素やメチルメルカプタンの臭気を作り続ける事となります。

 

舌磨きをしても、歯の周りの除菌が完了していなければ、再び菌は乗り移ってきて、舌苔を作り、悪循環を繰り返します。

 

1回は、口内の口臭発生菌の悪玉菌を除菌して、リセットしなければ、局所における口臭は、なかなか改善してきません。

 

加えて、従来の口臭治療は、除菌をする所で終了していました。すると、一旦は、口臭は引き下がります。ただ、しばらくすると悪玉菌は、再び増殖し、リバウンドを繰り返す事になります。

 

一旦除菌が完了して、測定値も減少傾向を示したら、そこで、治療を終えることなく、「善玉菌補充療法」に切り替えると、体に優しい取り組みで、リバウンドしない最終形に導くことが出来るようになります。

 

これが、局所における口内由来の口臭の発生と、治療方針です。

 

一方、これとは全く別系統で、口臭が発生している所が、一筋縄でいかない部分です。

体質由来の口臭も考えなくてはなりません。

 

② 身体全体における体質が原因の治療方針

東洋医学は、持って生まれた先天的な体質と、その後に生活習慣などの不摂生で招いてしまった後天的な体質の両方を考えます。前者を「本」と捉え、後者を「標」と解釈します。

 

この二つの体質は共有しながら、一生の間で、その人の体質が決まっていきます。

 

東洋医学は、「陰陽五行説」をベースに考えます。

何回も取り上げた、「木」「火」「土」「金」「水」です。それぞれ臓腑が配当され、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」が割り振られます。

 

下図に示すように、五色・五味・五志などが割り振られています。

 

 

その中で、五香(ごか・ごこう)を見て下さい。

この臓腑に負担がかかると、こうした臭いが出てきますよ…と、先人は教えてくれています。

 

よく見ると、西洋医学と照らし合わせても、整合性が取れているニオイがあります。

 

例えば、

「肝」が、あぶらくさいは、脂肪肝により、血中に脂肪酸が溶け出したニオイを連想させます。

「心」が、こげくさいは、熱化により高血圧になり、血熱の体温上昇に由来しそうですし、

「脾」が、かんばしいは、暴飲暴食により糖尿病になり、アセトン臭に近い感じがします。

「肺」が、なまぐさいは、裏の大腸により、異常発酵による、生ごみ臭に近いニオイですし、

「腎」が、くされくさいは、アミン体が血中に溶け出した、魚臭症の事でしょう。

 

全てのニオイが、納得のいくニオイです。

 

こうした背景を受け、局所における口内臭と、全体の体質から由来する体質臭が複合的に合わさって、口臭が発生していると考えられます。

 

歯科治療によって、口内臭は完全に治っても、患者さんは、「いや、まだ治っていない」と訴える時は、殆どの場合、体質口臭の問題が解決していない事が多いです。

 

つまり、歯科的な口内の治療が出来て、体質の部分も総括的に診ることが出来る、臨床的スキルが求められるのです。

 

口臭治療を専門にして15年、私なりにたどり着いた結論です。