懐かしい音楽と脳反応

 

まずは、この動画を視聴してほしい。

 

 

昭和のアイドル歌手、川島恵さんのデビュー曲「ミスター不思議」です。

久しぶりにyoutube動画で拝見し、この数日間、関連動画を何回も視聴しています。

なにせ、作詞:阿久悠さん、作曲:大野克夫さんなので、事務所の力の入れようが伺えます。どちらもヒットメーカーです。

 

川島さんは、NHKの「レッツゴーヤング」の中で新人歌手が集まった「サンデーズ」の一員で、番組のマスコット的な存在で、順々にデビューさせていく流れでした。

 

曲も良し、歌もうまい、容姿も可愛い

 

当時も凄く良いな…と思っていましたが、大きくブレイクする事は無く、数曲シングルを出して、自然消滅していきました。後年、演歌歌手になったらしいです。

 

改めて還暦オヤジになってみて、見直してみると、

●こんなに健康的に、はつらつと歌い上げて

●歌唱力抜群で、少しだけ芋っぽい(誉め言葉)所があり、

●性格も良さそうな女子で、

●現在の多人数の寄せ集めアイドルであれば、間違いなくセンターを張れる逸材でした。

 

年を取ると、懐かしい事に関して、振り返る事が多くなります。

せっかくの機会なので、音楽と脳反応の相関を、考察してみましょう。

 

【音楽が与える脳への影響】

音楽は、単に「音符」が作る単純な音源ではなく、また、小説の様な「言葉」でもありません。

 

実は「音楽」を認識する脳の仕組みは、まだ詳しく解明された訳ではありません。

加えて、ヒトが周囲に広がる多くの雑音の中から、どのようにして、声や音を拾い上げて、それを聞き分けているのか?に関しても、未解明な部分があります。

 

「聞き耳を立てる」と言う、聴覚認知に関しては、とても不思議な部分があります。聖徳太子の様に、何人もの会話の内容を、全て理解して拾い上げる必要はありませんが、脳のある領域を活発に活動させると、聖徳太子のようなことが出来るようになっていきます。

 

音楽と脳の関係は、脳の側頭葉が深く関係しています。そこを電気刺激すると、一次聴覚野を含む側頭葉が興奮し、音楽情報を受け入れやすくなります。

 

この事は、自分にとって心地よい音楽を聴くと、精神的に安定し、脳内では、快感伝達物質のドーパミンが大量に分泌されてきます。さらに言うと、この反応は、好きな音楽を聴く以前の、ただイメージしただけで分泌され、その音楽を早く効きたいと言う欲求が生まれていきます。まるで、薬物依存症のような状態になる訳です。

 

逆に、自分にとって嫌いな、あまり気分が盛り上がらない音楽を聴いた際には、ドーパミンの分泌は確認できません。

 

さらに、脳内のどの部分が受容しているか?と言うと、特に脳の「尾状核」の領域が活性化しているのです。ところが、面白い事に実際に心地よい音楽を聴いて、脳が興奮状態になると、今度は「側坐核」という部分が活性化しました。

 

【脳内物質が、なぜ音楽で活性化するのか?】

実は、ドーパミンは、音楽だけではなく、美味しい食事をしたり、性的興奮したりしても分泌される脳内物質です。向精神薬の薬物でも分泌され、パーキンソン病の原因にもなっています。

 

ヒト本来の「生存本能」とも、深い関係がある事が知られています。

 

音楽が世界中で愛され、ポップス・ロック、ミュージカルの舞台など、多くの人に受け入れられている事実は、この「快楽報酬」に起因しています。しかしながら、音楽は抽象的なもので、食欲や性欲の様に、ヒトの生存にどうしても必要不可欠なものではありません。

 

人の心に感銘を与え、万人に愛される大ヒットとなった音楽は、脳の興奮と共に、世代を超えて継続し、特に、過去に聞いた思い出深い「音楽の記憶」は、ヒトの趣味・嗜好により、多様性を与える事になります。

 

この音楽だけが持つ、「高揚感」「適度な緊張」「心地よい予感」「一瞬の驚き」「淡い期待」などの感情が、心を動かすのです。自分にとって心地よい音楽を聴いた時に、私たちの脳は、どのように処理しているのか?と言うと、実は特別な「中枢」は存在しません。

 

逆に言うと、音楽を聴くと、脳の多くの領域が、一斉に反応示す事が重要です。

 

川島恵さんが作る歌謡の、どこに、大ヒット曲につながる要素が無かったのか?私には想像もできません。恐らく、プロの作詞・作曲家の方も、色々売れる要素を練って、この子なら絶対にヒットな違いナシと、世に送り出しても、ヒットにはつながらず、たいして期待していなかった娘が、とんでもなく大ヒットする…なんて事も頻繁にあったのでしょう。

 

世相を読み、ヒットメーカーと呼ばれる、ほんの一握りの方だけが、その極意を知っていたのでしょう。ただ、それさえも、決して普遍的なものではなく、一世を風靡した歌手の方が、時代が変化すると共に、ヒット作を出せなくなると言う事が繰り返されています。

 

有名な所では、何作もミリオンセラーを出した小室哲哉さんが、宇多田ヒカルさんの曲と詩を聞いた時に、「アッ、時代は変わったな、俺には、あの曲を生み出すことが出来ない」と、白旗を上げた…と言う話は有名です。

 

【ヒトは、なぜ音楽で感動するのか?】

今までの人生を振り返れば、誰にでも、1局や2曲、心に残る思い出の音楽があります。ヒトが音楽によって深い感動を覚えるのは、各個人が受けた、多くの経験と知識、教養と記憶などが複雑に絡み合い、過去の自分にフラッシュバックをすることで、独特の感動を引き起こすからです。

 

この事から、年齢を重ね、多くの経験を重ねてきた高齢者の方が、感動する快楽報酬も多く受け取れることになります。

 

過ぎ去ってしまった過去を変える事は出来ません。

でも、その起きてしまった過去の解釈を変える事は出来ます。

 

自分がやらかした過去の解釈を変えることが出来れば、「今」この時から続くであろう「すぐそこの未来」をも変える事は可能になります。

 

一曲の音楽を通じて、私も、まだまだこれからだぞ…と、思うに至りました。

宿題にしていた多くの事を、今一度、奮い立たせて取り組んでいきます。