帯状疱疹と漢方薬

 

昭和の歌姫で、間違いなく一時代を作った「中森明菜」さんが、2022年の今年、復活を遂げるかもしれません。

 

 

活躍していた当時は、大ファンと言う程でも無かったのですが、表舞台から去った後、YouTubeなどで、その出自を見直すと、

さまざまなつらい経験をしてきた事が分かり、人間:中森明菜の虜になってしまいました。

 

その経緯は、ここでは触れませんが、「絶望」と言う程の過酷な経験をされ、どんなにお辛かったのか…と思うと、同情を禁じ得ません。

その事によって、気の流れが乱れ、それが免疫力に影響を与え、長期休養につながってしまいました。

 

【情志の失調】

あまりにもつらい体験をすると、東洋医学では、「情志の失調」を招きます。

ストレス・悲しみ・興奮・緊張などを抱えた時に、真っ先に影響を与える臓腑は、「肝」です。

 

肝の気は、スプレーの様に昇発する性質があり、条達を喜び、抑鬱を嫌う傾向にあります。

以前案内した、陰陽五行説で、肝は自然界では「木」に相当します。

 

木は、スムーズで伸びやかに、上へ上へと成長していく性質があり、逆に、その成長スピードを、上から押さえつけられてしまうと、

成長が阻害され、鬱屈して非常にストレスを感じてしまう…そういった臓腑です。

 

鍼灸の専門学校に通っていた時に、ヒトの経絡の巡行を学びます。全身には12経絡が行き渡っています。(奇経は省く)その中でも、

肝の経絡は、足の指の「大敦」から、胸の「期門」まで流れています。

 

「肝」の働きは広範囲で、特に疏泄を主ります。疏泄とは、高速道路を走る自動車を、渋滞することなく、円滑に交通させる、

統合指令監視所のような働きです。

 

特に、5つの疏泄を管理しています。

① 気の働きの調節

② 情志の調節

③ 胆汁の分泌の調節と消化活動を助ける

④ 血液の貯蔵と血量のバランス調整

⑤ 生殖に関する調節

 

を管理しています。この事から、肝の機能が失調すると、これらの働きが、一斉に不調をきたす事になります。

すなわち、気の働き、情志、消化、蔵血、生殖などに異常が発生してくるのです。

 

もし、情志の失調が起きてしまうと、生気が抜けたよう無気力になったかと思うと、一方で感情の起伏が激しくなります。また全身を滋養する栄養を生み出す事が出来なくなり、最終的に、血虚体質に傾く事で、女性の生理活動にも影響を与えるようになっていきます。

 

正に、絶不調だった頃の中森明菜さんにピッタリの健康状態です。

不定愁訴のオンパレードになり、受診した診療科によって、安定剤・胃薬・造血剤などの効能を持つ薬剤が処方されます。

 

ただ、一つの症状はよくなりますが、「根本体質」が改善した訳ではないので、症状が安定せず、何年も苦しむ事になります。

 

【情志の失調から起こる症状】

① 肝血虚証

肝の血液が不足し、そこから派生する組織・器官の機能が失養して出現する虚候です。

肝の気は、目に開竅するので、かすみ目や視力低下、夜盲症が起きてきます。その他、肝は筋肉を滋養するので、四肢が引きつり、しびれを感じ、手足の震えやけいれんの症状が出てきます。加えて、レバーに相当する肝臓は、血液貯蔵庫なので、貧血傾向、月経の量が減少、顔色は青白くなり、症状が重くなると、生理が無くなってしまう場合もあります。また、爪にも影響が及ぶので、爪が割れたり、反りが生じたり、伸びるスピードが鈍化します。

 

② 肝陰虚証

 

肝の陰液が不足すると、「肝陰虚」に傾きます。すると、今度は、「潤い」の部分に影響が及んできます。すなわち、眼の乾き、かすみ目、視力減退、手足のけいれんやしびれ、胸脇部の苦満などの症状が出ます。一見、肝血虚と症状が似ていますが、どこが違うのでしょうか?

 

肝陰虚になると、「渇き」の症状がより強く出るので、地球温暖化で干上がった湖や、全身の皮膚や筋肉が、「干しシイタケ」のように、ひび割れてきます。

 

すると灼熱感を伴い焼けるような「痛み」を伴うようになります。

特に、肋骨両脇に影響が及んだ時に、「胸脇苦満」と言う状態になります。鉄板のように硬くなり、少し押すだけで、「ウッ」と、痛みを覚えます。

 

③ 肝鬱気滞証

 

肝の疏泄作用が悪化して、以下の4つの症状が出現します。

●抑鬱、易怒、情緒不安定、ため息、無表情、気分の落ち込み。

●生理の不調、不順になり経血も減少します。

●生理前症候群、乳房の張り、痛みが出現します。

●痰が絡めば、喉の違和感の梅種気や、乳腺腫、甲状腺腫が出現。 

 

④ 肝火上炎証

 

あまり鬱屈した状態が続くと、熱を抱える事になります。便秘で便座に座り、ウーンと力んだ状態が長く続きと、顔面が紅潮してきます。あんなイメージです。

 

肝は目に開竅するので、目が充血し赤目になったり、目やにが増えたりします。

その他、感情の起伏が激しく、易怒で口が苦いと、訴える方もいます。

 

⑤ 肝陽上亢証

 

肝にも陽と陰が存在し、肝陽の方が上昇すると、以下のような症状が出てきます。

めまい、耳鳴、頭痛、易怒、不眠・多夢、赤ら顔、目の充血する、頭重感が出てきます。

 

 

⑥ 肝風内動証

 

現代風に解釈すれば、脳卒中(中風)をイメージすれば分かりやすいです。

頭が揺れたり、フラフラして歩行困難になり、四肢がしびれたりします。重症になると、突然、卒倒し昏睡に傾きます。半身不随、ろれつが回らないようになります。

 

【帯状疱疹と漢方】

帯状疱疹は、子供の時に「水ぼうそう」になった人は、誰でも発症する可能性があります。

帯状疱疹が起きる一番の原因は「免疫力」の低下です。

 

西洋医学では、病因をなくすために、ウイルスそのものを殺す薬を処方します。ただ、根本原因が、「免疫力の低下」でるならば、漢方処方による体質改善によって、身体に元気を与える取り組みも、同時に必要になります。

 

漢方処方では、主に、

●免疫力を高める

●ウイルスの排泄を促し、

●随伴症状の神経痛を和らげることを目標に処方します。

 

推奨方剤

① 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)

② 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅしょうきょうとう)

③ 五積散(ごしゃくさん)

④ 柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)

⑤ 黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)

⑥ 疎経活血湯(そけいかっけつとう)

⑦ 通導散(つうどうさん)

 

中森明菜さんは、今年個人事務所を開設しました。年末の、紅白歌合戦への出演も打診されているらしいです。是非、ファンの前に、元気なお姿を披露してもらいたいです。