腸閉塞と漢方

 

2022年10月に燃える闘魂「アントニオ猪木」さんが、鬼籍に入りました。晩年、最後の戦う相手は病でした。その様子をYouTubeで、隠すことなく情報発信され、男の生きざまを示しました。

 

心アミロイド症を長く患っていましたが、急激に衰えたきっかけは、「腸閉塞」で入退院した頃からでした。腸閉塞と東洋医学について考察してみましょう。

 

【腸閉塞とは】

腸閉塞は、イレウスとも呼ばれています。色々な閉塞のタイプが存在します。

 

 

咀嚼によって摂取された飲食物は、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸を通過します。それぞれの場所で、消化液や消化酵素と合わさって、代謝分解され吸収されていきます。

その残りカスが「大便」となって、肛門より排泄されます。この飲食物と消化液の疎通が、小腸から大腸にかけて障害された時に腸閉塞(イレウス)が発症してきます。

 

【腸閉塞の症状】

嘔気、嘔吐、食欲不振、腹満感、腹痛、便秘、ガスが溜まって不快、おならが出ないなどの症状を伴います。

 

【腸閉塞と漢方】

腸閉塞は、腸管壁のヌメリと、腸管の蠕動運動が衰えた時に発症してきます。漢方による治法は、気を高め、腸管の潤いを確保して、お腹の冷えを取り、消化活動を健常に戻し、腸管を通りやすくする必要があります。

 

腸閉塞と言う概念は、東洋医学には存在しません。この事から、似たような症状を探し出し、体質である「証」から、目的の漢方薬にたどり着く必要があります。

 

その中で、「大建中湯」は、冷えからくる腹痛・腹満に対して処方されてきた漢方薬です。

 

多くの研究機関で、試験的な処方がなされ、手術後の腸閉塞に、大建中湯には効果がある事が解明されてきました。

 

研究報告では、解剖によって取り出したウサギの小腸に大建中湯を滴下した所、腸管の蠕動運動が活発になった事が報告されました。

 

蠕動運動とは、ミミズのように腸管が自然にクネクネして、便を肛門へと送り出す動きです。

 

その処方構成は、とてもシンプルです。

●山椒(サンショウ)

文字通り、ウナギのかば焼きに振りかける山椒です。口内に含むと、口腔粘膜がピリピリ刺激を受けます。

●人参(ニンジン)

こちらも文字通りニンジンです。身体に元気を与えます。

●乾姜(カンキョウ)

乾燥させた生姜です。お寿司と一緒に、ガリの生姜を食べる事は、消化を助ける意味もあるからです。

●膠飴(コウイ)

水飴の事です。古来の人は、あまり甘みを上手く抽出する事が出来ない事から、とても貴重な味覚として尊重してきました。甘みは、腸管の通りを良くします。

 

加えて大建中湯は、免疫系細胞にも何らかの影響を与えている事が指摘されていますが、まだ詳しい事は解明されていません。

 

最後まで、燃える闘魂の人生でした。故人の冥福を祈りたいと思います。