水銀と口臭の不思議な関係

 

私のFBのお友達の中で、インドの伝統医療であるアーユルヴェーダのマスターの方がいます。

漢方処方と鍼灸治療を専門とする私とは、色々な情報交換をする事で、お互い研鑽を積んでいます。

 

アーユルヴェーダと中医学の解釈、非常に近い部分があります。

 

先日、その方が、以下の書き込みをしました。一部を要約すると、

抜粋:アーユルヴェーダの薬物学には、鉱物(ミネラル)を使うRasashastraと呼ばれる科がある。この科は鉱物・金属を使うためハーブより調合が難しく、使いこなすのは熟練した経験と知識を要する。古典CarakaもSushrutaも多くを語っていない。大乗の論師・瑜伽論、大智度論の龍樹はRasashastraの達人と言われている。

 

鉱物には水銀(Prada)も含まれ、無毒化された水銀(有機水銀)が使われる。血液浄化剤にはハーブと硫黄(Shulvari)と水銀を使うけれど、硫黄温泉に入ると肌がツルッとするのは硫黄の剥離作用によるものだ。

 

この中で、水銀と硫黄を反応させる…という所に、ビビッと反応してしまいました。

 

【水銀の害】

環境中の水銀は、「金属水銀」「無機水銀化合物」「有機水銀化合物」(主にメチル水銀)の3つの化学形態に分類されます。身近な所では、体温計や照明の水銀灯などに応用されています。 

 

 

この事から水銀の毒性は、同じではありません。

主に2種類の機序によって、健康に影響を及ぼします。

 

① 「無機水銀化合物の腐食作用」

これは、無機水銀化合物の水銀イオンに由来し、生体内外に付着した場合、その細胞をただれさせる作用があります。もし、誤飲などによって大量に経口摂取した時には、主に消化管内や腎臓の粘膜を損傷し、機能不全を招きます。

 

② 「メチル水銀による曝露障害」です。

水俣病の公害が有名です。これはメチル水銀が生体内のアミノ酸の「システイン」と結合し、身体の随所に沈着します。無機水銀よりも毒性が強い傾向にあります。

 

さらにこの結合体は、必須アミノ酸である「メチオニン」と、非常に構造が似ているため、本来の生体が持つ「必要なアミノ酸を吸収して輸送するシステム」に乗って、蛋白質と結合して、人体のあらゆる部位に運ばれて、そこで合成される事で、生体機能を障害させます。

 

【水銀と口臭の意外な関係】

水銀が身体に及ぼす障害に関して、前述しましたが、実は、口臭とも密接に関係していきます。

 

実は、口腔内細菌は、食品中のアミノ酸成分が大好きです。

これを「脱アミノ反応」と言います。

 

●システインからは、硫化水素(温泉臭、硫黄臭)の口臭を作り

●メチオニンからは、メチルメルカプタン(魚の臓物臭、どぶ臭い)口臭を作ります。

 

実は、水銀の毒性を少なくさせる…唯一の方法は、「硫黄」と反応させることです。

 

例えば、生薬で言う所の「昇汞」(しょうこう:塩化第二水銀)は強い毒性を持っていますが、ここに、硫黄がくっ付くと、「硫化第二水銀」になり、これは水溶解度が非常に低く、水銀の最も安全で安定した化学形態になると言われています。

 

ここで、一つの仮説が成り立ちます。

 

もし、食品中に含有する微量な水銀が、口内で発生する「硫化水素」の硫黄成分と反応し、咀嚼によって化学反応が進む事によって、塩化第二水銀が、口内で硫化第二水銀に置換しているとしたら…菌が作る口臭は、水銀を無毒化してくれているのかもしれません。

 

私は口臭専門医として15年間、患者さんの悩みを治療してきましたが、もしかしたら、治療する必要のない、神様が与えてくれた、健康を維持する仕組みだったのかもしれないのです。