「カオスの縁」と東洋医学

 

人の脳の働きと、コンピューターの思考には、決定的に異なる所があります。

それは、秩序と混沌、線形と非線形で答えを導く点です。

そして、その境界には、「カオスの縁」が存在します。

 

 

コンピューターは、線形の思考回路で答えを出します。

1+1は、必ず「2」で回答が導き出されます。一方通行の紐付けです。この暗黙の了解と信頼性があるので、私達は、パソコンを全面的に信頼し、間違いなくメールを送る事も出来ますし、グラフィックを描いてみたり、動画を閲覧できたりもします。

 

ところが、ヒトの脳は、非線形で考える時があります。発想の飛躍です。カオスを抱えた無秩序でバラバラな事象の中から、最適解を導き出します。これは、誰でもピカンとアイデアがひらめく、あの瞬間です。しかも、その導き出される結論は、個人差があり、多種多様です。漫画のシーンで、頭に電球が光り輝く時と考えれば分かりやすいでしょう。

 

このアイデアがひらめいた時が、秩序と混沌の境目であり、ヒトとコンピューターの、明確な違いであり、コンピューターが超えられない限界でした。

 

この境界の事を、「カオスの縁」と言います。

 

ニュートン力学のように、線形理論で成り立つ世界は、

結果が原因に比例する事から、

何かの取り組み・努力に対して、必ず想定通りの結果が出てきます。

しかしながら、私たちが生きる社会は、複雑系のカオス理論に支配されているので、思うような結果が出ない非線形な世界である事が多いのです。

 

受験勉強で思うような結果が出ないのも、初恋の相手の恋愛が成就しないのも、カオスの非線形だからです。

 

ところが、近年、この「カオスの縁」を備えたコンピューターが出来上がったらしいのです。

東京理科大学の研究で、ダイヤモンド上にリチウムイオンを配列させ、ヒトの脳と同じように、混沌配列で思考する素子を作ってしまったのです。

https://www.tus.ac.jp/today/archive/20221222_4836.html

 

これは、よく考えると…トンデモナイ事です。

 

今までコンピューターは、膨大な数の情報をディープラーニングする事で、その中から、ある一つの結果を導き出してきました。そこには、線形の信頼関係が存在します。

ところが、この「カオスの縁理論」を用いたコンピューターが出来上がってしまうと、与えた情報を超える、突拍子もない結論を導き出すコンピューターが登場するかもしれないのです。

 

まさに、映画「ターミネーター」に登場する、「スカイネット」の様相です。

 

この理論をドンドン進めていけば、本当の意味で、

「自我・自意識」を持つAIが、出来上がってしまうかもしれません。

 

もしかしたら、同じコストで売っている20万円のパソコンでも、バカなものと、お利口のマシンが出る事だって考えられるのです。能力の差が生じる可能性がある訳です。

 

何もかもが、思い通りにいかないパソコン…見てみたい気もしますが、末恐ろしいです。

 

例えば、ペットのワンちゃんに「お手」を教えて、非線形の思考回路で、愛犬が違う挙動を示したらどうでしょうか?もしかしたら、犬は、ペットにならずに拒絶され、人類は、犬を根絶やしにしたかもしれません。

 

さらに推し進めると、単純から複雑が生まれる事象を複雑系科学では、「創発」が起きる事も考えられます。例えば、人類史上、新しい生命の誕生、脳の飛躍的な進歩、新しい発想と創造などは、全て「創発現象」が関係してきました。ヒトが動物から進化してたどり着いた、好奇心、探求心など、ヒトが、人間らしくなる為に、必要不可欠な性質です。

 

例えば、なに不自由なく、長期間安定していた生物種が、突然変異して全く新しい種を生み出されたり、人類が突然、道具を発明したり、言語を獲得したりしたことも創発です。もっと言えば、バブルによる株や土地の暴落や、スマホの登場によるIT革命も、「創発」現象です。

 

その典型が、東日本大震災直後の避難所で自然発生した「コミュニティのユートピア」が、創発によって起きたと言われています。その他サッカーワールドカップで、日本の観客が、スタジアムのゴミ拾いをしだしたのも、ある意味、創発を考えてよいでしょう。しかも、他国の観客にも、その行いが伝染しました。頭の上で起きた、「電球ピカリ」は、伝搬するのです。

 

今まで、東洋医学は、混沌の中で進歩してきました。

「私だけが出来る名人芸」の世界です。

 

例えば、鍼灸治療で、同じツボ、同じ施術で行った場合、線形で考えれば、カリスマ鍼灸師と、学生さんでは、全く同じ治療効果が出てこなければなりません。ところが、結果は非線形になり、何故か治療効果が異なるのです。

 

なぜそうなるのか?「カオスの縁」を備えたパソコンに、是非、答えを導き出してもらいたいですね。