古武術「影武流」を東洋医学的に考える

 

まずは、この動画を見てみよう、

 

 

古武術「影武流」(けいぶりゅう)の流儀を、プロレスラーの方が受けると言う番組企画です。

影武流合気体術は、武田信玄に裏で仕えていた7家の内のひとつで、雨宮家に500年に渡って伝わる一子相伝の隠密術の事です。その本質は、護身術が基本となり、いかに倒されずに生き延びるか…に主眼が置かれています。

 

動画の中で、「波紋」「打震」「鞭打」「穿打」と言う打撃法を披露しています。

 

プロレスラーは、受け身が基本です。対戦相手がかける大技を、出来るだけダメージ無く受け流す事で、試合のボルテージは上がって行きます。

そこには、八百長とかシナリオ有りとかを超えた、総合芸術としての凄みがあります。

 

プロレスラーの拳王さんも、全ての打撃を受けてみて、身体に伝わるダメージの違いを肌で感じているようです。

 

そして、動画の最後の方で、人体の急所についても触れています。

モザイクがかかって分かりにくいですが、胸の正中を指さしているので、恐らく「壇中」(たんちゅう)の事だと推察しました。

 

実は、人体には「急所」と言われる打撃ポイントが80か所もあります。

その中でも、特に鍼灸のツボにも応用されている部位は、ざっと上げて、以下のものがあります。

頭部から順に、印堂、人中、頬車、檀中、明星(開元)、金的(釣鐘)、内尺沢(左右二箇所)、外尺沢(左右二箇所)、曲地(左右二箇所)、合谷(左右二箇所)、内関(左右二箇所)、外関(左右二箇所)、承山(左右二箇所)などです。

 

これらの部位は、鍼灸治療で実際にハリを刺すツボですが、いずれも効果の大きいツボです。それが打撃になった時は、より大きなダメージにつながるのです。

 

つまり、「急所」は「救所」でもあるのです。

 

もし、格闘技の中で、例えば、ボクシングの選手が、影武流の打撃法を学び、急所を狙って打ち込んだとしたら、相手の選手は、より大きなダメージ受けるのではないでしょうか?

 

また、人体の構造上、テニスのサーブの時や、投球フォームの時や、パンチを繰り出す時は、腕はわずかに内側にひねりながら、「内旋」の動きをします。握りこぶしの親指側が、下に向くようにコブシが回転するのです。

 

ボクシング漫画の「はじめの一歩」では、この捻りを加えたパンチを、「コークスクリューブロー」と言う名前を付けて、必殺技として、劇中に登場します。

 

木ネジも、時計回りは、板にねじ込む方向に働き、反時計回りは、ネジを外す方向に働きます。人体の構造で考えた場合、内旋する方が、力が入るのです。

 

ここで重要な点は、下図で示すように、鍼灸領域では、上半身にハリを刺入した後、時計回り

にハリを回転させた場合は、下に降ろす「瀉法」の効果があり、逆に反時計回りの場合は、盛り上げる「補法」の効果が見込めます。

 

 

もし、左手でパンチを当てる際、対戦相手の右半身にコークスクリューブローが当たった場合、瀉法(相手をダウンさせる)の効果で、ダメージが加わるのです。

 

コークスクリューブローは、同じパンチの打撃でも、より大きなダメージを与える必殺技として取り上げられるのは、こうした理由があるのです。

 

今回の古武術の奥義は、東洋医学の観点見た場合でも、納得できる点が多々あり、もう少し掘り下げて学ぶと、より大きな気づきの心が芽生えるのではないか?と、睨んでいます。