かさぶたとかゆみ

 

還暦を過ぎると、足腰が弱くなります。つい先日も、アスファルトが、何故かヌルヌルした部分があり、足が滑って道端で大きく転んでしまいました。身体へのダメージは殆ど無かったのですが、膝を少々すりむいてしまいました。

 

 

家に帰って、消毒薬を吹き付け、患部をキレイにします。続いて、抗生物質の軟膏を付けて、ガーゼでカバーをして、傷が治るのを待ちます。

 

こうしたダメージを身体が受けると、治癒の過程で、「かさぶた」が出来てきます。

そして、剥がれる寸前で、「かゆみ」が増してきます。なぜ、かゆくなるんでしょうか?

 

かさぶたの中身は、赤血球や血小板、血液を凝固させるフィブリンというたんぱく質で構成されています。

最初にダメージを受けた傷口からは、出血が始まります。これは、早期に患部を洗い流す目的と、血の塊の「血餅」を作って、とりあえず、創面を保護する目的があります。やがて、その血液がさらに固まって、赤い血液色から、黒っぽい組織になっていきます。

 

やがて、その血液は固まり、ゴツゴツとした「かさぶた」が出来上がります。かさぶたが出来る事で、出血は止まり、外界の世界と、身体の中の世界は、完全に分断されて、2次感染を防ぐようになります。

 

この段階で、治癒を促進させるために、もっと重要な働きが、身体の中では始まっています。

 

実は、傷口は乾燥していると、皮膚の再生には、多くの時間が必要になります。その為に、かさぶたそのものは、乾燥していますが、かさぶたの中では、ゼリー状の物質を作り、湿潤した環境を作っています。

 

ゼリー状の物質には、ヒスタミンという物質が含まれています。このヒスタミンと、多くの細胞の受容体(レセプター)が結合する事によって、傷口は、ドンドン治癒していきます。

ヒスタミンは、アトピー性皮膚炎のアレルギー疾患でも分泌され、強い痒みを感じる物質です。私の傷口にできたヒスタミンも、周りの神経を刺激して、かゆみを生んでいたのでした。

このかゆみは、副次的なもので、本来は無くても全く問題はない身体の反応です。

 

では、「かゆい」という感覚は、何なのでしょう?

 

実は「かゆみ」は、「小さな痛み」なのです。痛みとかゆみは、殆ど同じ神経が関係しており、治癒の過程で、傷口周辺の弱い痛みが、結果的にかゆみを誘発しているのです。

かゆいので掻いてしまうと、さらにヒスタミンが集まってくるので、かゆいからと言って、掻き壊す程掻くのは禁物です。 

 

傷を負って、10日くらいで、ようやく治ってきました。

 

 

でも、年を取ると厄介なのは、この傷口が、シミになってアザとして残ってしまう点です。

これからは、転倒には充分気を付けて生活しよう…と、改めて感じました。