最新版:体質口臭を、今一度整理する

 

口臭治療が専門になって、15年、約5000人に方の治療をしてきました。その中で、口内口臭だけでは、治ったと実感できない方が多く出た事で、

「測定値上は、切れ味良く改善傾向を示すのに、どうして、治ったと思えないのだろう?」

と言う事で、15年前に、色々な可能性を模索しました。

 

それ以前から、私は東洋医学が専門で、30年以上、漢方処方もしてきましたし、好きが高じて、夜間専門学校に3年間通い、20年前に、国家資格として、「鍼灸師」の資格も取得しました。

 

東洋医学は、「気」の学問です。

 

陰陽五行説から始まる「弁証論治」により、患者さんの体質を見定めていきます。

陰陽五行説は、下図で示すように、自然界に広がる神羅万象を、5つのエレメントに分類する学問です。

 

 

木は火で燃えて、土となり、その土中には鉱脈が宿り、金を育みます。そして、その金は、河川などの水脈を通じ、砂金としてこの地に舞い戻り、金属は結露によって水分を吐き出し、その水が、再び木を育てます。

 

この永遠不滅の繰り返しにより、私たちの世界は構成されています。

 

その中で「五香」(ごか、ごこう)と言う属性があります。

ある種の臓腑に負担がかかると、こういうニオイが出てきますよ…と、先人は教えてくれています。

 

●肝…油クサい→西洋医学的には、脂肪肝を指します。

●心…焦げ臭い→赤ら顔、高血圧に相当

●脾胃…香ばしい→消化の過重負担による糖尿病性アセトン臭に相当

●肺…なまクサい→肺気腫による炎症性メチルメルカプタンのニオイ

●腎…腐れクサい→血流にアミン体が溶け出し、魚臭症になった臭い

 

 

こうした臭いが、「体質口臭」になります。

 

体質口臭は、定性化・数値化できないので、ヒト嗅覚による官能検査で、ニオイを言語化していく必要があります。付随して、脈診・舌診の情報も加えて、原因を絞り込んでいきます。

 

【気・血・水の増減もニオイに関係する】

もう一つの要素として、東洋医学では、「気血水」の増減によっても、ニオイは出てきます。

分かりやすい例として、

●ヒトの身体を…お風呂の湯舟

●ヒトの体液を…お風呂のお湯

●身体を温める役目を…お風呂のボイラー

と、仮定してみましょう。

 

●お風呂に穴が開いていないか、錆びていないか、ツマミは取れていないか?などを統合管理するのが、「気」の役目です。

●お風呂のお湯の量や水質管理をするのが、「水」の役目です。

●お風呂の中を、ほんわか適温に温めて維持するのが、「血」の役目です。

 

 

① 火力が強い場合

熱化タイプになり、キーワードは「赤」です。身体のそこら中に赤味が出てきます。赤ら顔、目の色も血走る、口渇、怒りっぽい、肛門周囲も熱を持つ、血圧上昇などの随伴症状が出てきて、「焦げた肉」のような口臭が出てきます。

 

② 火力が弱い場合

今度は、ヒエヒエタイプになり、キーワードは「白」です。熱量が足りないので、退行性変化が出てきます。顔色が蒼白、元気がない、めまい、内向的、低血圧、冷え性などの随伴症状が出てきまて、「血生臭い」のような口臭が出てきます。

 

③ 水が多い場合

こちらは、ジャブジャブタイプになり、キーワードは「黄色」です。余分な水分を抱えるので、湯の中が濁ってきて、湯垢が溜まる事となり、身体の中が、ヌルヌル・ネバネバした病理産物が溜まってきます。この湯垢を、漢方では「痰飲」「痰湿」と解釈します。本来ツルツル・スベスベした所に、粘着きが出てきますので、顔色黄色、目ヤニ、女性の場合は帯下が増える、水様便、下痢、関節が重だるい、内耳に沈着すると回転性のめまい、尿も黄色い、性格は粘着質になり、決断力が鈍るようになり、「洗濯物の生乾き臭」に様な口臭が出てきます。

 

④ 水が少ない場合

カラカラ乾燥タイプです。お風呂の水が少なり、下からボイラーの熱量が加わると、湯が煮詰まって濃縮してきます。すると、お湯全体に黒っぽい焦げ付きが出てきます。キーワードは「黒」です。火力が強くなくても、お風呂の中が「空焚き状態」になる事で、やはり、熱を持つようになります。これを「虚熱」と考えます。この熱量は、夕方に行くほど、強く現れ、口渇、不眠、寝汗、コロコロ便、のぼせ、膝腰痛などが随伴し、「渇いた雑巾臭」が出てきます。

 

⑤ 気が満ちている場合

こちらに関しては、気実と解釈し、漢方では、「気滞」に相当します。気分がウツウツしたタイプです。気分がすぐれない、悶々として、胸が張った感じがする(悶脹)脇腹の肋骨周囲が張る、遊走性の痛み、イライラして怒りっぽい、マイナス思考、口が苦い、ため息をよくつく、ゲップが出やすい、のどに異物を感じ引っ掛かった感じがする(梅核気)、女性の場合は、生理前症候群が出るなどです。「魚の臓物臭」のような口臭が出てきます。

 

⑥ 気が足りない場合

気が損耗した、気虚です。全てがどよーんとしたタイプです。気が張っている部分が、全て伸びてきますので、胃下垂、脱腸、子宮脱、慢性疲労、健忘、食欲不振、無関心、声に力が無い、髪の毛がパサつく、目に覇気がないなどが随伴します。口内環境も悪化するので、硫化水素性のニオイが出てきます。

 

体質由来の口臭は、歯を磨くだけでは、なかなか改善しません。食養生も含めて、生活習慣の見直しと、漢方処方が必要になります。

 

こうした要因が、複雑に絡み合って、実際の口臭が発生しています。