マスク生活がひと段落し、皆さん、自分の口臭が気になるようになってきました。この2年間、鼻先で臭いを嗅ぐという行為は、コロナ感染をイメージさせるので、口臭関連の番組は、全く作られなくなりました。
過去の番組出演で、付き合いのあるディレクターさんに、
「口臭の番組、もう作らないの?」と、問い合わせても、
「先生、今は無理ですよぉ…」と言う回答が返ってきたので、しばらくは出演できないな…と思っていました。
そんな折、久しぶりに、NHKの情報番組:『あさイチ』から、出演オファーが舞い込みました。過去に、BS-NHKで、『華大の知りたいサタデー』の生放送に出演した事はあるのですが、地上波のNHKは、初めてです。
番組のテーマは、「ニンニクの活用術」でした。
今年の最初に、大阪読売テレビの草なぎさんの番組で、ニンニク臭には、「直後臭」と「翌日臭」がある事を紹介しました。その番組を見た上で、NHKからのオファーでした。
NHKの社屋に出向き、12時間拘束で、収録が進みました。
食材臭は、口臭測定器のガスクロマトグラフィー法を採用した機器では、上手く行かない事が分かっていたので、カルモア社のPOLFAと言う「臭気計」を使いました。
ニオイの成分は特定できませんが、微弱なニオイでもセンサーは感知し、数値に反映されます。例えば、柔軟剤の香りが染み込んだ衣服の方が、目の前を通り過ぎただけでも、センサーは、敏感に反応します。ただ、その捕らえたニオイが、不快なニオイなのか?心地よいニオイなのか?を判定する機能は、臭気計にはありません。ニンニクの臭いも、歯磨きした後の臭いも、全て臭いとしてカウントします。
ただ、ニンニクを食べた直後に、測定値が上昇すれば、それは、ほぼ間違いなく、ニンニクの臭いを捉えたものとして、評価できるのです。
ニンニク臭は、ニンニクの中に含まれる「アイリン」と言う成分が、調理加熱や酵素の力を借りて、「アホエン」に変化します。この段階までは、ヒトにとっては、食欲をそそるニオイです。
ところが、これが、口の中に入り、口臭発生菌が脱アミノ反応をする事で、「アリシン」と言う成分に変化し、揮発性硫黄化ガス(VSC)になると、鼻に付く、不快なニオイに変化してしまうのです。これが、「直後臭」につながります。
ただ、このニンニク由来の直後臭は、「あっ、餃子食べたでしょ!」と、ニオイを言語化できるので、まだまだ良性の部類になります。
本当に問題なのは、言語化しにくい、いやなニオイに変化してしまう「翌日臭」の方です。
身体の中に取り込まれたニンニクの成分は、腸内で「アリチアミン」と言う成分に変化します。アリチアミンは、元気の成分である「ビタミンB1」と良く結合し、ビタミンB1の吸収効率を高めてくれます。この事から、ニンニクを摂取する事は、健康維持のために、決して悪い事ではありません。ただ臭いと言う観点で考えると、血中に長く残留してしまい、翌朝に「翌日臭」につながってしまうので、要注意なのです。
こうした臭いは、「スルフィド系」のニオイなので、魚の臓物臭の様なニオイです。
さらに厄介なのは、汗や体臭からも、ニオイが出てしまうので、日常生活に影響を与えかねません。もし、こうしたニオイを解決してくれる食材があれば、食生活の中に、上手く取り入れていきたい所です。
既に、放送後なので、種明かししても問題ないと思います。
実験では、直後臭は「りんご」、翌日臭は「牛乳」が効果的でした。
その他の実験食材「コーヒー」は、ニンニクの臭いに、コーヒーの臭いが加算され、逆に、臭気計の値が上昇したものもありました。
番組では紹介されませんでしたが、口内の常在菌の中で、臭気を作る悪玉菌と、臭気を作りにくい善玉菌がいます。悪玉菌が多い程、直後臭はキツくなります。普段から、口内の衛生状態を保ち、賢くニンニクを摂取したいですね。