「テンセグリティ構造」を見たことがあるだろうか?
テンセグリティ構造(Tensegrity)とは、Tension(張力)とIntegrity(統合)の言葉を合体させた造語です。
「圧縮力」と「張力」が釣り合うことで、全体の構造が安定するシステムのことです。
上記の構造以外にも、うまくバランスが整えば、こんな構造の物も試作できます。
構造を、よーく見れば、ここの紐が、重さを受け止め、この紐が、倒れるのを防いでいるんだな…と、分かってきますが、初見では、宙に浮いているように見えます。
全体が連動協働をして、バランスを取っている所が面白いです。
【人体の仕組みとテンセグリティ構造】
実は、人体も、骨格などの成り立ちに、テンセグリティ構造を採用しています。
上記のオブジェと同じように、骨と関節が「圧縮材」、筋、筋膜、腱、靭帯等の軟部組織が、「張力材」と解釈できます。
仮に、外傷や炎症により、この構造の1か所でも損傷を受け、可動範囲が変わってしまうと、動きの連動性・連続性は失われ、力の緩衝能力も激減し、全体のバランスに歪みが生じ、骨格を維持できなくなり、関節脱臼・疼痛・転倒・寝たきりになってしまう事も予想されます。
もし、反復性スポーツ障害により、靭帯の役目をするゴムが、1か所でも切れてしまうと、もはや関節の構造を維持できなり、最高のパフォーマンスはできなくなります。
メジャーリーグの大谷翔平選手も、靭帯損傷により、二度、手術を受けました。
拙書「スマホがあなたをブスにする」の中にも記述しましたが、ヒトの頭には顎関節があります。
顎関節は、人体の中でも特有な構造を持っています。
U字型をした馬蹄形の下顎骨の両サイドに関節の構造を有し、顎の開閉を制御しています。
人体には、265個の関節があります。関節の構造もさまざまです。
ここで重要な点は、
●咀嚼筋を鍛えれば、咬む力が強くなります
●筋膜・滑液を鍛えれば、可動域が増えます
●骨を鍛えれば、若々しい顔貌が保てます。
仮にスマホの長時間使用をすると、頭はうなずくように傾き、テンセグリティ構造は破綻し、顎の関節はバランスを保てなくなり、
「口ポカン顔貌」になってしまい、ブス化していきます。
この「張力」と「圧縮力」をバランスよく保つことが重要です。
【靭帯予防・再発防止におススメの漢方処方】
靭帯損傷には、大なり小なり、血行不良と関節の滑りの悪さが関係しています。
●ドロドロ血体質の「お血」と
●ネバネバ体質の「痰湿」を防げば、再発防止とリハビリの役に立ちます。
その為の推奨処方は、
●サラサラ血作用を期待して、駆お血剤の「治打撲一方」
●ツルツル関節を期待して、利水剤の「五苓散」を併用します。
その他に、痺証(ひしょう)も併発していれば、寒痺・熱痺・湿痺に対応した生薬を加味していきます。
顎関節症における歯科的な治療法は、咬み合わせを調整したり、関節の負担を軽くするために、マウスピースを作ったり、咀嚼筋の緊張緩和をするだけでした。
テンセグリティ構造を直接治療する訳ではなく、対症療法がメインでした。
そんな時に、上記の処方をした所、根本的な所から改善傾向を示し、顎関節症が和らぎました。
人体の構造は、本当に微妙なバランスの上に成り立っているのです。